恋する三姉妹
真白と大学に行ってから1ヶ月半が経って今はもう6月の半ばだ。
ちなみに真白が医学部を目指していることを知っているのは私と真白の両親だけでゆずちゃんにも紫輝にも皆にも合格するまでは伝えないそうだ。
「あ~疲れた~」
「そうだね。でも千花は今日は休みだけどだいたい部活あるんだよね。」
「うん。でも部活は好きだけどね。それに、亮太と一緒にいられるのもあと少しだから」
「そっか。五十嵐、来年からアメリカだもんね」
そう。実は千花の彼氏、五十嵐亮太は高校卒業後、アメリカの大学に留学することにしたそうだ。なんでも千花のお父さんの知り合いが向こうのコーチをしているそうだ。
「うん。だから今のうちにたくさん思い出作るの。部活もその一つ」
「そうだね」
「じゃあまた明日!」
「うん」
私は手を振って鞄を持った。すると私の友達がすごい勢いで教室に入ってきた。
「咲久ちゃん!」
「え、なになに、怖い」
「咲久ちゃんの妹ちゃん、西条くんと付き合ってるでしょ」
「いやいやいや!ないないない!絶対にあり得ない!」
「でも2人で仲良さそうに手を振ってたよ。あの話し掛けてもクールな西条くんが笑ってたんだよ」
「え!ホント!?」
もしかして、ホントに……いやいや。ないね。あの莉久が湊以外を好きになるなんてあり得ない。でも人見知りなのによく話し掛けたな。しかも西条くんに。
家に帰ってきてしばらくすると莉久も帰ってきた。噂はすぐに流れていたらしく蒼空はそれを聞いて大慌てだ。でも、莉久が少し変だったからか蒼空は自室に戻っていた。
莉久がお風呂に入ったタイミングで蒼空がリビングに降りてきた。
「なあ、姉貴。莉久の噂聞いたか?」
「聞いたけど。絶対にあり得ないよ」
「でも、俺の友達バスケ部なんだけど西条って女子と全く喋らないらしい。マネージャーですら必要最低限の会話しかしてないって。」
「本人に確かめればいいんでしょ」
ちょうどリビングのドアが開いて莉久が入ってきた。蒼空は莉久に訊こうとしていたけどパニックになってちゃんと言えてなくて莉久にヘルプを求められた。
私が説明すると莉久はすかさず否定した。
『そうだよね。そうだろうと思ったよ』
「あのさ、咲久姉。相談があるんだけどいいかな……?」
さっき、湊に聞いたの?って言ってたしそれに絡んでるんだろうな。まさか、恋愛相談!?
「莉久っ!(やっとこの日が来た!)いいに決まってるよ!私の部屋行っといて!マシュマロココア持っていくから」
「う、うんわかった」
莉久は私の勢いに驚きながら2階にあがった。
私もマシュマロココアを準備して部屋に行くと窓越しに葵と莉久が喋っていた。
「あら、葵じゃん。部活は?」
「咲久姉!数週間ぶり!部活は今日と明日はないんだ」
「そっか。莉久、葵にも聞いてもらったら?」
「うん、そうする。葵、今日うちに泊まらない?幸い明日は土曜日だし」
「うん!久しぶりに泊まりたい!」
私はお母さんに葵が泊まってもいいか聞きに行くとオッケーをもらった。
それから葵がうちに来て私の部屋にあがってきた。
恋バナを始めた。
「私、湊のこと好きになっちゃったんだ」
「知ってたよ」
「うんうん。莉久姉分かりやすすぎ」
葵が私の意見に賛同して言った。
「告白して早く付き合いなよ。」
「無理だよ。振られたら気まずいじゃん」
「莉久姉がフラれるわけないのに」
葵がココアをフーフーと冷ましながら言った。
「そういう葵も蒼空に告白しないの?」
「え!葵、蒼空兄のこと好きなの!?」
「そうだよ。だから声のトーン押さえて」
「あ、ごめん。でも、全然気付かなかった」
「莉久姉鈍感だもん」
葵は少しため息をついた。
「葵も莉久も恋する乙女だね」
私がポッキーを食べながら言うと2人は顔を見合わせて同時に「「それは咲久姉もでしょ!」」と言った。
「そうだった。」
「でもいいよね、咲久姉は彼氏がいて」
「葵も莉久も告白すればいいじゃん。私は高1のときに告白したよ」
「私は4歳差だし、蒼空くん、私よりも大人っぽくて美人な女の子とも知り合いだろうし」
「葵ってモテるのに蒼空のこととなると自分に自信ないよね?」
「だって同世代でモテたって蒼空くんにとってはしょせん人気のある子供にしか感じれないだろうし。」
「そうかな?私的には湊も蒼空も脈アリだと思うけどな」
私がそう言うと2人はこれでもかってほど否定した。
「じゃあ取りあえず告白のことは保留にして好きな人の好きなところ言っていこ」
「いいよ。そのかわり咲久姉からね」
「真白の好きなところはーー」
それから、それぞれ好きなところを教え合った。
それからおすすめの恋愛ドラマを一緒に見た。
「私も蒼空くんとこんな恋人になりたいな」
「葵ならなれるよ」
「そうだよ」
「咲久姉、莉久姉、ありがとう」
「そろそろいい時間だし寝ようか」
翌日、朝目を覚ますと莉久と葵は私よりも先に起きていた。
「おはよう、咲久姉」
「おはよう。リビングに降りようか」
私達がリビングに降りると甘い香りがしてきた。
蒼空が朝食にパンケーキを焼いてくれていた。皆でそのパンケーキを美味しく食べているとさっき外に行ったお母さんが帰ってきた。
「特大発表!今日、たまたま皆の予定がOFFだったので、遊園地に行きます!」
ということで私達は遊園地に行くことになった。
私達の提案でペアルックで行くことになった。
オーバーオールの色が違ったので中に着るTシャツは高校生組は白のTシャツを着て、中学生組は黒のTシャツを着た。
オーバーオールの色はそれぞれ私が薄紫、莉久が水色、蒼空が紺色のデニム、葵がクリーム色、翔が赤、颯が深緑、そして湊が黒のデニムだ。
ヘアアレンジを終えて葵と莉久と喋っているとお母さんが手招きした。
「なに?」
「まーくんも今日は休み?」
「そう言ってたけど」
「じゃあ誘ってみて」
「いいの?」
「もちろん。まーくんも幼馴染みなんだから」
お母さんはそう言って微笑んだ。
私がメッセージを送るとすぐに返信が帰ってきて真白も一緒に行くことになった。
真白が家に来ると久しぶりに会えたせいか皆が大喜びだ。
そのあと、車のくじをして、私、真白、湊、颯が渉くんの車。葵、翔、蒼空、莉久がお父さんの車に乗ることになった。
遊園地に着いて、パスを買ってすぐにそれぞれカチューシャを買った。私と真白はウサギのキャロットちゃんのカチューシャだ。
皆、買い終わったら絶叫系を乗りまくるチームとまんべんなく乗りたいチームに分かれた。
ちなみに、私、真白、蒼空、湊は同じまんべんなく乗りたいチームで莉久と三つ子は絶叫系乗りまくりチームだ。
それぞれ渉くんと七菜波ちゃん、お父さんとお母さんが引率をしてくれることになった。
私達は最初に脱出ゲームをした。私と真白、湊と蒼空、渉くんと七菜波ちゃんのペアで小さい個室に入っていった。
最初のお題は鍵を探して開けなさいだった。
「脱出ゲームって謎解きかと思った」
「そうだね。でも頭は使うっぽいね」
そう言って真白は辺りを見回した。
「ねえ、真白。これ、気付いてるよね」
私は鍵を取りながら言った。
「バレてたか。いや、せっかくの2人きりだし時間内に咲久をドキドキさせちゃおうかなって思って」
「そういうのを口に出されるだけでこっちは照れるんだけど」
私は鍵を開けながら言った。
「そっか。嬉しい」
こんな調子でどんどん進んで行ってラストステージに来た。
最後のお題は机のパズルを組み立てて鍵を作りなさいだった。
真白と私は鍵を組み立てていったけど1ピース足りなかった。
「ここにあった」
私はしゃがもうとしたけどスカートを踏んで後ろ向きに倒れそうになった。
「咲久!」
頭に強い衝撃がくると思ったけど全く痛みがなかった。
目を開けると真白が頭を打たないように体を支えてくれていた。
「大丈夫?怪我してない?」
「うん。真白、ありがとう」
「どういたしまして」
「あ、そうだ。残りの1ピースあったよ」
私はパズルを見せて言うと真白は最後の1ピースをはめて鍵を開けた。
外に出るとスタッフさんが拍手で迎えてくれた。
「おめでとうございます!本日1番の脱出者です!」
「だって」
「意外とこのアトラクションに来る人少ないのかな?」
「そうかも。楽しかったね」
「そうだね」
しばらくすると蒼空と湊も出てきた。
「おめでとうございます!本日2組目の脱出者です!」
直後に渉くんと七菜波ちゃんがリタイアのドアから出てきた。
「咲久ちゃん真白くんペアと蒼空と湊ペアはすごいな。」
「俺はほとんど蒼空に手伝ってもらっただけ」
「だろうな。」
「私はなんとなく分かったけど真白1人だったらもっと早かったと思う。真白、分かってるのに私が分かるまで待ってくれてたし」
「それは1番最初のところのこと?」
「違うよ。全部。ステージが進む度に部屋全体を見渡してヒントの場所に視線送ってたでしょ」
「バレてた?」
「途中からね」
「恥ずかしいな」
真白が頬を人差し指でかきながら言った。
「次はなにに乗る?」
「俺、あれ乗りたい!」
湊が指を指したのは高く昇ったり降りたりするアトラクションだった。
「えっと、あれ?」
七菜波ちゃんがもう一度訊くと湊は大きく頷いた。
「私はパス。下で見てるよ」
「俺も」
ということで七菜波ちゃんと渉くんは下で待つことになった。
アトラクションに乗り込んでアナウンスが入ると上に昇っていった。
思ってたよりも怖いかも。結構高いしここから落ちるのはちょっと怖いかも。
そう思っていると真白が片手を私の手に重ねた。と同時に急降下した。私はレバーをギュウッと握った。
アトラクションを降りても真白は手を握ったままだ。
「真白、もう大丈夫だよ」
「咲久、怖かったの?」
「え、いや、まあ」
「へえ~、そうなんだ。気付かなかったな~」
真白はニヤニヤと笑いながら言った。
『絶対気付いてたじゃん、』
次はシューティングゲームをして降りた。
「腹減った!そろそろ昼飯行かね」
湊がそう言うと渉くんがメッセージを送った。
「レストランで集合だとよ」
ランチはレストランでバイキングだった。そのあとはお父さんお母さん達はそれぞれまわりたいところに行った。莉久達は皆で固まってまわるらしいので私と真白も2人でまわることにした。
「咲久、ショーをやってるみたいだけど観に行かない?」
「行く!」
私達は急いでステージに向かった。
キャラクターとキャストさんのダンスと歌が終わると一緒に撮影するチャンスが訪れる。それはじゃんけん大会だ。
そこで、なんと私が勝ち進んで撮影チャンスをゲットした。するとキャストさんに呼ばれて私はステージにあがった。
「お名前を教えてください」
「えっと、小鳥遊咲久です。」
「小鳥遊さん、今日は誰と来られていますか?」
「家族と幼馴染みと彼氏の皆で。」
「ここにいますか?」
「この会場に来てるのは彼氏だけです」
「小鳥遊さんの彼氏さん!ステージまで来てください!」
そう言われると真白はステージまで歩いてきた。
「お名前を教えてください」
「仁科真白です。」
「小鳥遊さん、仁科さん、お二人は好きなキャラと写真を撮ることができます。誰にしますか?」
「キャロットちゃんがいいです」
私がそう言うとキャロットちゃんは歩いてきた。
「可愛いすぎる!真白、キャロットちゃんがこんなに近くにいるんだけど!夢みたい!」
「お写真お撮りしますよ」
キャストさんが笑って言った。ありがとうございますと言ってスマホでカメラアプリを開いて渡して真白の腕を引いてキャロットちゃんに抱きついてピースをした。
「いきますよ~。はい、チーズ」
スマホを受け取って私達はステージを後にした。
「キャロットちゃん可愛かったね」
「あ~、うん、そうだね」
「どうしたの?暑くてしんどくなったの!?」
「いや、そうじゃないんだけど。咲久、腕に抱きつくのはいいんだけどあんまり強く抱きつかないでほしい」
真白は目を逸らして言った。真白の腕に強く抱きついていたから胸が当たっていた。
「あ、ごめん。気付かなかった。嫌だった?」
「嫌だったわけじゃなくて俺が耐えられなくなるから」
「?なんのこと?」
「なんでもない。次はどこ行く?」
「えっと、」
それから3時半まで遊んでお土産屋さんに向かった。
「皆のお土産、お菓子にしようかな。真白は花村さんになに買うの?」
「考えてなかった。俺も同じお菓子にしようかな」
「いいと思うよ」
それから皆、お土産を買い終えて家に帰った。