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大晦日とお正月


 クリスマスから6日が経った。今日は大晦日だ。


 年越しは年によって幼馴染み皆で過ごしたりそれぞれ家族で過ごしたりバラバラだけど今年は皆で年越し初詣に行くことになった。


 蒼空(そら)が今年受験生なので少し遠くの大きい寺院に行くことになった。


 真白(ましろ)紫輝(しき)とうちの家族と長谷川(はせがわ)家で行くことになった。


(ちなみに真白(ましろ)のご両親は今日の夕方まで仕事なので来れないそうだ。姉の柚希(ゆずき)ちゃんも久しぶりに地元の友達に会ってその人達と年越しをするそうだ)


 今はまだお昼なので家に集まっている。早めに皆で仮眠をとってから行く予定だけどまだ時間は早いので5時ぐらいまでは遊ぶつもりだろう。


 トランプ、ゲーム、将棋、リバースにチェス。皆で紙飛行機を作って公園で飛ばしたり、桜川公園までマラソンをしたりそこでバドミントンをしたりストリートバスケをしたりしているとあっという間に5時になった。


 (あおい)達は仮眠をとるために一度家に帰った。


 真白(ましろ)紫輝(しき)は家が少し遠いのでうちの客間で仮眠をとることになった。紫輝(しき)はすでにソファでぐっすり眠っていたので真白(ましろ)が客間まで運んでくれた。


 私も自室に戻ってベッドに入ったけどあまり寝付けなかったので白湯を飲みにリビングに降りた。


 水を飲んでコップを洗っていると真白(ましろ)も起きてきた。客間は1階にあるからもしかしたら物音で起こしてしまったのかもしれない。


「ごめん、うるさかった?」


と訊くと真白(ましろ)は首を振った。


「人の家って寝つけなくて。あんまり泊まりとかしたことないし」


「私もなんかあんまり寝付けなかったから白湯を飲みにきたところ。真白(ましろ)も飲む?」


「じゃあ、いただこうかな」


「はい」


と言って私は白湯をいれてコップを渡した。


 そのコップも洗い終えてとりあえずソファに座った。


「疲れて眠いのに全然寝付けない」


「じゃあ、咲久(さく)が寝たら部屋まで運ぼうか?」


「重いしいいよ。」


「じゃあ、寝れそうになるまでここで一緒に時間潰そっか」


真白(ましろ)が言った。


 その後は、ちょっとした思い出話をしていつの間にか2人ともソファで眠ってしまっていた。


 起きたときに毛布が掛けてあった。リビングには誰もいなかったけどきっと誰かが降りてきたときに掛けてくれたのかな?なんて思いながらもう一度目を閉じた。


 次に起きたのは真白(ましろ)の声が聞こえた時だった。私は真白(ましろ)に抱きついて寝ていた。


咲久(さく)、起きて。そろそろ出発するから準備しないと。」


「うん」


「おはよう、咲久(さく)


真白(ましろ)が微笑んだ。すると隣から


「もうおはようって時間じゃないよ」


紫輝(しき)がツッコんだ。


「確かに。てか、真白(ましろ)、ごめんね。私が抱きついてたから動けなくて準備出来なかったよね」


「いいよ。準備って言っても俺はコート羽織ってマフラー巻くだけだし」


「そっか。私はちょっと寝癖ついちゃったし直してくる」


と言って急いで洗面所に向かった。洗面所には莉久(りく)がいて


「あ、咲久姉(さくねえ)起きてる!おはよ、ってそんな時間じゃないか」


と言った。


紫輝(しき)も同じこと言ってた」


と言って私は笑ってしまった。


咲久姉(さくねえ)、なんか顔赤いよ?風邪ひいた?」


「ううん。リビング暖かかったし、毛布もあったから大丈夫だよ」


「そっか~、じゃあ私先に戻るね~」


と言って莉久(りく)は洗面所を出ていった。


 はぁ~、ビックリした~。起きたら真白(ましろ)に抱きついてたし、顔近すぎるし。あ~、ホントにドキドキした。


 私は顔を洗って髪を整えて深呼吸をしてリビングに戻った。


咲久(さく)海斗(かいと)さんが先に車暖めてるって」


紫輝(しき)が言った。


「そうなんだ。(あおい)達もそろそろ準備終わってるかな?」


「終わってるっぽいよ。さっき(あおい)からメッセージ届いたし」


莉久(りく)が教えてくれた。


「ところで真白(ましろ)蒼空(そら)は?」


真白兄(ましろにい)は風に当たってくるとか言って庭にいて蒼空兄(そらにい)は部屋に手袋取りに行ったよ」


「そうなんだ。教えてくれてありがとう」


と言って私は玄関からまわって庭に出た。


「う~、やっぱ寒いね」


咲久(さく)。あ、俺カイロ持ってきたけどいる?」


「うん。」


私が頷くと真白(ましろ)は私の手のうえにカイロを置いた。


「あったか~。ありがと、真白(ましろ)


「どういたしまして」


真白(ましろ)が微笑んで言った。それから沈黙が落ちた。何か言わなきゃと思いながら少し、真白(ましろ)の顔を見るのが照れくさくて話せなかった。


 数分後、莉久(りく)から『そろそろ出掛けるって』と連絡がきた。


「そろそろ出掛けるって」


「そっか。」


と言って私と真白(ましろ)は車に向かった。


「後ろが3人で前が2人ね」


とお母さんが言った。


「私、後ろ」


「僕も」


「んじゃ、俺も」


と言って莉久(りく)紫輝(しき)蒼空(そら)が後ろに乗った。私と真白(ましろ)は前に乗ることになった。


 車に乗って動き出した。スーパーでおにぎりを買って車の中で食べることになった。


 おにぎりを買って車に戻ってまた車が動き出した。スーパーの近くの国道で(あおい)達と並んだ。窓越しに(あおい)(かける)が大きく手を振っていた。


 後ろで莉久(りく)も手を振り返していた。


蒼空(そら)、後ろ向いてなにやってるの?」


紫輝(しき)が訊いた。


「星、きれいだから撮ってた」


蒼空(そら)が答えると真白(ましろ)紫輝(しき)(りく)も私も窓から夜空を見上げた。


「ホントだ。きれい。ずっと窓の外見てたのに気付かなかった。」


と私が言うと真白(ましろ)莉久(りく)紫輝(しき)が頷いた。


(みなと)にも教えてあげよ」


と言って莉久(りく)は星を撮ってスマホを操作した。きっと(みなと)に写真を送っているはず。


「あ!」


と私が言うと真白(ましろ)が「どうしたの?」と優しく訊いた。


「今、流れ星流れてた」


「ホント!?僕も見つけたい」


紫輝(しき)が熱心に探していた。


「流れ星ってそんなにたくさん流れないと思うけ」


どと言おうとしたときに紫輝(しき)が振り向いて


「流れた!」 


と叫んだ。


「え!」


と言うと蒼空(そら)莉久(りく)も「また流れた」と言った。すると、真白(ましろ)


「もしかしたら流星群かもね。この時期だとしぶんぎ座流星群かな」


と言った。


「でも、今年のピークは1月3日じゃなかった?」


と訊くと


「きっと運が良かったんだよ。この辺りは少し田舎で今日は月も出てなくて明かりも少ないから良く見えたんじゃない?」


と言った。


「そっか。うん。そうかも」


「ラッキーだね」


莉久(りく)が笑って言った。すると、(あおい)から着信があった。


(あおい)、どうしたの?」


『今、流れ星流れたよ。見てた?』


「うん。見てたよ。真白(ましろ)が言うにはしぶんぎ座流星群かもしれないって」


『なにそれ。でも流星群だから流れ星がいくつか流れてたんだね』


「うん。」


『じゃあまた後でね』


と言って通話が切れた。


 それから約30分程で寺院に到着して車から降りた。


咲久姉(さくねえ)!さっきぶり」


(あおい)が大きく手を振って走ってきた。


「砂利だからあんまり走ると危ないよ」


七菜波(ななは)ちゃんが言うと(あおい)は「大丈夫~」と言ってそのまま走ってきた。でも、途中で車から降りてきた人をよけてつまずいた。


 すると、さっきまで隣で心配そうに見ていた蒼空(そら)が走って、今にも転びそうな(あおい)を抱きとめた。私達もすぐに駆け寄った。


「大丈夫か?」


蒼空(そら)(あおい)を見下ろして訊いた。


「うん。蒼空兄(そらにい)ありがとう!」


(あおい)は笑顔で言った。


「これからは人が多いところでは出来るだけ走るなよ」


「はあい」


と少ししょんぼりと(あおい)が返事をすると蒼空(そら)(あおい)の頭を撫でた。


(あおい)に怪我がなくて良かった」


蒼空兄(そらにい)大好き!」


と言って(あおい)が抱きついた。


「ありがとう」


と言って蒼空(そら)(あおい)を抱き上げた。


「わぁ~!高~い!」


(あおい)は嬉しそうに言った。数分後、蒼空(そら)(あおい)を降ろすと手を差し出して


「はぐれないようにな」


と言うと(あおい)蒼空(そら)の手を握った。


「私も(あおい)みたいに可愛く甘えられたらな」


莉久(りく)が言った。


莉久(りく)は好きな人に素直になれないの?」


「うん」


「そっか。私もあんまり素直じゃなかったから良く分かるな。私、応援してるからね」


「ありがとう」


莉久(りく)はニコッと微笑んだ。今の顔を(みなと)に見せてあげたいな。


咲久(さく)!兄ちゃん!お汁粉あるよ!食べよ!」


と言って紫輝(しき)が私と真白(ましろ)の手をひいて歩いた。


「寒かったし丁度いいね。紫輝(しき)、クリスマスはもう終わっちゃったけど代わりに奢ろうか?」


と訊くと大きく頷いた。


「お汁粉二つください」


と言うとお店のおばさんが


「べっぴんさんやね。ちょっと多くよそっとくわ」


と言ってお汁粉をよそってくれた。隣では「俺もお汁粉一つください」と言って真白(ましろ)も頼んでいた。


「ありがとうございます。はい、紫輝(しき)


「ありがとう!咲久(さく)!」


と言って紫輝(しき)が抱きついた。


「うわぁ!ビックリした」


「こら、紫輝(しき)。お汁粉まだ熱いんだし危ないだろ」


「あ、ごめんね咲久(さく)。大丈夫?」


「うん。大丈夫だよ」


「良かった~」


と言って紫輝(しき)はギュウッと抱きついた。


「ちょっ、痛いよ。紫輝(しき)、自分が思ってるよりも力があるって自覚してよ」


「ごめん。でも、咲久(さく)暖かい」


と言うと真白(ましろ)が眉をピクピクさせながら笑顔で紫輝(しき)を引き剥がした。


「いつまで抱きついてるつもり?さすがの紫輝(しき)でも許さないよ」


「ごめんごめん。兄ちゃんが咲久(さく)と付き合ってたの忘れてた。これからは気を付ける。」


「よし。じゃあ、あのベンチに座って食べようか。」


真白(ましろ)が言った。


「てか、こんなにバラバラで動いていいのかな?」


とお汁粉を食べながら訊いた。


「食べ終わったら皆のところ戻ったら大丈夫だよ」


紫輝(しき)が笑って答えた。


 お汁粉を食べ終えてお箸とカップを捨ててお母さんに連絡した。どこにいるのか訊いてみたらお母さんと七菜波(ななは)ちゃん、お父さんと(わたる)くんのグループに分かれて行動しているらしく11時45分に本殿の前に集合すればいいらしい。


 少し時間があったので3人で絵馬を書きに行くことにした。


 巫女さんから絵馬とペンを受け取って台に絵馬を置いた。


「なんて書く?」


と訊くと紫輝(しき)は「これ!」と言って絵馬を見せてくれた。


『漢字と熟語をもっと覚えれますように』


と書いてあった。


「今度おすすめの小説貸してあげるね。そっちの方が楽しく覚えられるでしょ?」


「うん!ありがとう!」


「私はなんて書こうかな。真白(ましろ)は書けた?」


「うん。」


「見せて」


「ちょっと恥ずかしいんだけど……」


と言って真白(ましろ)は絵馬を見せてくれた。そこには


『好きな子にずっと好きでいてもらえますように』


と書いてあった。


『そんなのお願いしなくても……』


「そんなにじっと見ないでよ。恥ずかしいんだけど」


真白(ましろ)が言った。


「あ、うん。じゃあ私は~」


『大切な人達が幸せになれますように』


咲久(さく)がそう思ってくれてるだけで幸せ」


紫輝(しき)が言うと


紫輝(しき)、俺の台詞取らないでよ」


真白(ましろ)が苦笑した。


「3人とも書いたしそろそろ掛けに行こう」


「うん。そうだね」


絵馬を掛けて本殿の前まで行った。


咲久姉(さくねえ)真白兄(ましろにい)紫輝兄(しきにい)!こっち~!」


(かける)が手を振って大声で言った。


「めちゃくちゃ目立ってる」


 (かける)達の元に駆け寄った。


「あれ?莉久(りく)(みなと)(はやて)は?」


「父さんと海斗(かいと)くんと一緒にいる。今、美久(みく)さんが連絡してる」


と言ってお母さんに目線を移した。


「うん。うん。じゃあ50分ぐらいまでここで待ってればいいの?わかった。でも、年越しは遅れないでね。2人とも身長は高いから見つけやすいけど人が多いから手を振ってね。じゃあ後で」


と言ってお母さんは電話を切った。


「なんて?」


「なんかね、5人ともお腹が空いて近くの蕎麦屋さんで年越し蕎麦食べてて時間になってるのに気付かなかったんだって」


とため息交じりに言った。


「お腹空いたって言ってもお父さんと莉久(りく)はおにぎり食べてたよね?」


「そうだけどお昼食べた後にたくさん動いたから足りなかったんだと思うよ。」


「私達もコンビニで中華まん買って食べたんだけど足りなかったかな」


七菜波(ななは)ちゃんが言った。


「まあ、2人を除けば育ち盛りだし。海斗(かいと)くんも(わたる)は昔から結構食べるからね」


とお母さんが言うと「そうだね」と七菜波(ななは)ちゃんは苦笑した。


 5分程経ってお父さんと(わたる)くんが手を振っているのが見えた。さっきと同じように(かける)が大声で呼ぶと5人とも気付いて走ってきた。


「悪い!飯食ってたら遅れた」


(わたる)くんが言った。


莉久(りく)もお蕎麦食べてたの?」


「うん。私は小サイズのにして天ぷら食べたんだ。美味しかったよ」


「そうなんだ。それにしても(はやて)もいて時間に遅れるなんて珍しいよね」


「あ~、(はやて)の頼んだ鴨南蛮が出来るのに少し時間掛かっちゃって食べてたから携帯で時間を確認する暇がなかったの。だから、お父さんがお代わりを頼んでその食べてる途中に(はやて)が時間ヤバいって教えてくれたんだよね」


「なるほど。」


 私と莉久(りく)が喋っているとお父さんと(わたる)くんがお詫びに暖かい飲み物を買ってくれると言った。


「私ココア」


と言うと


「私はミルクティー」


(あおい)


「はちみつレモン」


(かける)


「コーヒー。ブラック」


蒼空(そら)


「甘酒」


とお母さん


「私も」


七菜波(ななは)ちゃんが言った。


紫輝(しき)くんと真白(ましろ)くんは?」


とお父さんが訊くと


「申し訳ないので」


真白(ましろ)が断ろうとすると


「俺達も待たせて申し訳ないって思ってるから払わせてほしい」


(わたる)くんが言うと紫輝(しき)


「僕はほうじ茶で」


と言うと真白(ましろ)


「じゃあブラックでもいいですか?」


と言った。


「オッケー!多分、全部自販機に売ってたから年越す前には戻る」


と言って(わたる)くんとお父さんが走って行った。


「年越しまであと6分しかないのに間に合うのかな?」


莉久(りく)が言った。


 数分後、息を切らして帰ってきた2人はお母さんと七菜波(ななは)ちゃんに甘酒を渡した。


「じゃあココアの人」


「はい」


と言ってココアを受け取った。


「ミルクティーは?」「私」


(あおい)が受け取った。


 それから全員受け取って年越しのカウントダウンを始めた。


「「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1!」」


「「明けましておめでとう!」」


とその場にいた人達みんなが言った。すると、スマホにたくさん通知がきた。


 生徒会のグループにもみんなからメッセージがきていた。


『あけおめ!ことよろ!』


(しゅん)、明けましておめでとうございますと鏡餅と今年の干支の卯のスタンプが伊織(いおり)


『明けましておめでとう。今年もよろしく』


と副会長からメッセージがきていた。


 私も明けましておめでとうございますと書かれたスタンプを送ると真白(ましろ)は今年もよろしくと書かれたスタンプを送った。すると


咲久(さく)、写真撮らない?年越し初詣に来てるって自慢しちゃおうよ」


真白(ましろ)が言った。


「いいよ」


「じゃあもうちょっと寄って。ハイチーズ」


と言って真白(ましろ)が写真を撮った。


 真白(ましろ)は撮った写真を生徒会のグループと別荘に行ったときのグループ

に送って『新年初、彼女自慢』とメッセージを送った。すると


『惚気ですか?』


(しゅん)からすぐに返信が来た。


『そうだよ』


真白(ましろ)が送り返すと“リア充爆発”と書かれたスタンプが返ってきた。


 他にも千花(ちか)侑李(ゆうり)瑠衣(るい)さんと(かおる)先輩とトモと五十嵐(いがらし)瀬川(せがわ)くんと山崎(やまざき)さんとクラスの友達からもメッセージが届いた。メッセージを全員に返してスマホを閉じた。


咲久(さく)ちゃん、真白(まー)くん。そろそろお参り行くよ」


七菜波(ななは)ちゃんが言った。


 参拝するために列に並んだ。私と真白(ましろ)は人が多かったので皆より1列後ろに並んだ。すると、気のせいかもしれないけど隣に並んでいた若い男の人が少し距離を詰めてきた。


 私は真白(ましろ)の方に寄るとさらに詰めてきて腕を伸ばした。


 その瞬間、真白(ましろ)がその人の腕を掴んで


「どうしたんですか?人が多いので無意味に腕を伸ばすと人に当たりますよ。それに隣が女性なら痴漢と間違えられますよ」


と言った。真白(ましろ)は話ながら腕を強く掴んでいた。


「す、すみません」


と言ってその男の人は走り去った。


咲久(さく)、すぐに助けられなくてごめんね。」


と言って真白(ましろ)が頭を撫でた。


「いいよ。最初は勘違いかもしれなかったし。真白(ましろ)が私と場所を変わってたらあの人、反省しないで被害出てたかもしれないし」


「そうだけど、怖い思いしなかった?」


「うん。もし、何かあったら真白(ましろ)が助けてくれるって分かってたから」


「そっか。でも、本当に怖いときは言ってね」


とと言って握った右手にキスをした。


「うん。ありがとう」


 話しているうちに私達の順番がきた。莉久(りく)やお母さん達はもう参拝を終えているので少し離れたところで待っている。


『神様、いつも見守っていただきありがとうございます。蒼空(そら)が受験でちゃんと実力を発揮出来ますように』


 お参りが終わって皆でおみくじを引いた。


「あ!蒼空兄(そらにい)、大吉じゃん!」


(かける)が言った。


(かける)はなんだったんだよ」


「俺は末吉」


と言う(かける)の隣では


「あ~、私大凶だ」


(あおい)がため息をついていた。すると


「マジじゃん。俺、大凶って初めて見た」


(かける)が言った。


「まあ、珍しいから逆に運が良いっ言うよね。それに大凶だったらもう下がないから上にしか上がってかないし」


と言うと(あおい)


「そうだね。ありがと、咲久姉(さくねえ)


と言って笑った。


「あ、俺は吉だ。咲久(さく)はどうだった?」


「私はね~……なんだろう?(へい)?」


(たいら)じゃないかな?運が良いわけでもなく悪いわけでもなく平穏な感じだと思うよ」


「そっか、じゃあいる意味一番いいかも。」


「そうだね。じゃあ結びに行こうか」


「うん」


 おみくじを結んで私達はお守りを買った。


 全員お守りを買って車に戻った。


 家に帰って真白(ましろ)紫輝(しき)も帰って私はすぐに寝た。


 ずっとこの平穏で暖かい日常が続いたらいいな。


 翌日、皆でおせちを食べて今度は長谷川(はせがわ)家に集まってすごろくをした。真白(ましろ)紫輝(しき)は久々に家族全員が集まったので家に帰った。


 その後はお年玉をもらってから凧揚げ、こままわし、福笑い、書き初めなど正月っぽいことは大体した。


 1日中遊んだからか夜、少し筋肉痛になった。

 疲れでベットに入ってすぐに眠った。



 * * * 咲久(さく)の初夢


 朝、ドタドタと階段を駆け上がる足音が聞こえた。


 足音が止まるとガチャリと音を立ててドアが開いた。

 中学生ぐらいの女の子が入ってきて


『ママ起きて~!今日はパパも休みだから皆で日帰り旅行で温泉行くんだよ』


と言った。


『ママって誰?』

と訊くと


『もう!寝ぼけてるの?ママはママのことに決まってるでしょ!ほら!早く朝ごはん食べて出掛けよ!』


と言ってその子は私の手を引いて階段を降りてリビングらしい部屋に入った。リビングには小学校高学年ぐらいの男の子と高校生ぐらいの男の子が座っていた。

 すると、キッチンから聞き覚えのある低くて優しい声が聞こえてきた。


咲久(さく)、おはよう』


真白(ましろ)?どうしているの?』


『どうしてって俺達の家だからに決まってるでしょ。もしかしてまだ寝ぼけてる?ご飯の前に先に顔を洗ってきなよ』


『あ、うん』


 私は見覚えのない廊下を歩いて洗面所を探した。それにしても、この家広すぎない!?掃除が大変そうだし。


 やっと洗面所を見つけて顔を洗った。


 リビングに戻るとテーブルにトーストとサラダとオムレツが並んでいた。


『ママ、目は覚めた?ご飯そろそろ食べよ』


と女の子に訊かれて目を擦った。


 再び目を開けるといつもの自分の部屋だった。


「夢か。びっくりした。」


 この夢は真白(ましろ)と結婚してたのかな?もしそうだったらあの子達は私の子供?


「まあ、夢は夢だよね」

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