表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/49

ホワイトクリスマス


 真白(ましろ)と付き合って約2ヶ月経った。そして今日、12月20日は私の誕生日だ。


 私達の学校はテスト返却が終わってすぐに冬休みに入る。今年は12月19日からだった。でも今日は今年最後の生徒会の仕事があったので学校に行っていた。


 そして、4日後はクリスマスイブだ。


 正直、初めて彼氏と過ごすクリスマスなので少し…いやとても浮かれてしまう。


 うちの家族は毎年イブはそれぞれで過ごしてクリスマス当日は幼馴染みの長谷川(はせがわ)家とクリスマスパーティーを行っている。


 真白(ましろ)は毎年家族で過ごしているそうだけど今年は弟である紫輝(しき)が年末ギリギリにしか飛行機のチケットが取れなかったらしく家族皆では過ごせないそう。それに真白(ましろ)のお姉さんであるゆずちゃんもバイトで帰って来れないのでおじさんとおばさんは仕事だそう。


 家に帰りながら私は幼馴染みと兄妹から頼まれたことを伝えた。


真白(ましろ)、クリスマスさ……」


と言うと真白(ましろ)


「24日に遊園地だよね。公園に9:30集合で合ってる?」


と言って笑った。


「あ、うん。ってそうじゃなくてクリスマス当日の話」


「当日?」


「そう。真白(ましろ)、家に1人なんだよね?」


「そうだけど。もしかして気にしてる?さすがにこの歳で寂しいなんて思わないよ。慣れてるし」


と言うと真白(ましろ)は苦笑した。


真白(ましろ)じゃなくて私が寂しいの。だからうちのクリスマスパーティー来ない?」


咲久(さく)が良くても皆は何て言うか分からないし……」


「もう事情は説明してあるの。そしたら皆なにがなんでも連れてきてって言ってたよ」


「そっか。じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」


と言って笑った。


 公園の近くに行くと真白(ましろ)が立ち止まった。


咲久(さく)、誕生日おめでとう」


と言って真白(ましろ)は細長い箱を渡した。


「ありがとう。」


「開けてみて」


真白(ましろ)に言われ開けてみると私の好きな薄紫の革ベルトの腕時計が入っていた。


「可愛い!真白(ましろ)、ありがとう!」


「どういたしまして。咲久(さく)が誕生日遊園地がいいって言ってたけど形に残るものをプレゼントしたくて。たまたま咲久(さく)が好きそうなカラーとデザインだったから一昨日買っちゃったんだ」


と言って真白(ましろ)が少し恥ずかしそうに微笑んだ。


「私は真白(ましろ)に誕プレあげれなかったのに私ばっかりなんか申し訳ないな」


「そう思うなら遊園地でお揃いのカチューシャ買ってよ。」


「うん!」



 それから4日後。クリスマスイブ。


 遊園地に行くということもあり今日はスカートをやめてスキニーデニムにグリーンのストライプのブラウスに黒のダウンを合わせてお気に入りのスニーカーを履いてスポーティーな感じにした。もちろん一昨日もらった腕時計も着けた。


 少し早めに公園に行くとすでに真白(ましろ)が来ていた。


「おはよう、咲久(さく)。」


「おはよう」


「服似合ってるね。可愛い」


「あ、ありがとう。真白(ましろ)も似合ってる。」


 真白(ましろ)は白のニットのクールネックセーターに黒のパンツでネイビーのチェスターコートを羽織っていていつもよりも大人っぽい。


「ありがとう」


と言って微笑んだ。


「じゃあそろそろ行こうか」


と言って真白(ましろ)は手を繋いだ。


「うん」



 遊園地までは電車で向かった。


「やっぱり多いね」


「まあ、クリスマスだから」


 フリーパスを買って入ってすぐのお店でネコのマカロンちゃんのカチューシャを買ってお揃いで着けた。


真白(ましろ)がカチューシャ着けてるのなんかちょっと……」


「そんなに変?」


「ううん。なんか可愛いなって」


「それは俺の台詞だよ」


と言って優しく微笑んだ。真白(ましろ)は高身長で大人っぽいけど雰囲気が柔らかいから以外とカチューシャが似合ってる。


「どこから乗る?」


真白(ましろ)が訊いた。


「もちろんジェットコースターから」


と言って私は県内最恐と言われているジェットコースターを指して言った。


「そうだね。」


 ジェットコースターはすでに30分待ちだった。


 列に並ぶと前に並んでいる人達に見覚えがあった。


伊織(いおり)?」


と一応訊いてみた。するとその子は振り返って「え!」と叫んですぐさま口を押さえた。


真白(ましろ)小鳥遊(たかなし)も来ていたのか」


と副会長が言った。するとさらに前に並んでいた侑李(ゆうり)


「え!咲久(さく)じゃん!」


と言うと侑李(ゆうり)の隣で喋っていた(しゅん)


「マジで!?」


と言って副会長の後ろから顔を出した。


「勢揃いだね」


と言うと真白(ましろ)がそうだねと言って笑った。


「それにしても、副会長が遊園地ってなんか意外ですね」


と言うと侑李(ゆうり)


「だよね~。全然似合わない」


と言って笑った。すると、副会長は


「連れてきたのは侑李(ゆうり)だろ」


と言った。


「まあね~。まあそれはおいといて、会長と咲久(さく)はデート?」


「そうだよ。」


と言うと(しゅん)


「お揃いのカチューシャいいな~」


と言って伊織(いおり)に視線を送ると伊織(いおり)は顔を背けた。


「なんか最近、積極的になったよね」


と言うと(しゅん)


「まあな。告白してフラれたけど誰かさんが素直にならないから好きになってもらえるように頑張るんだ」


と言ってガッツポーズをした。


「宣言するのはいいと思うんだけど、本人の前で言うのは伊織(いおり)が反応に困っちゃうと思うよ」


と言って伊織(いおり)に視線を移すと案の定、伊織(いおり)は顔を真っ赤にしていた。


「あ、もうそろそろだね」


とわざとらしく明るく言うと侑李(ゆうり)


「ホントだ。次ぐらいだね」


と言って笑った。


 ジェットコースターに乗って降りると侑李(ゆうり)達とは別れた。


(しゅん)の言ってた誰かって副会長のことだよね」


「だろうね。」


と苦笑した。


「それにしても、(しゅん)が意外と積極的で驚いたな~」


と言うと真白(ましろ)


「確かに驚いたけどせっかくのデートなんだからもっと俺のこと意識してほしいな~」


と言って繋いだ手に少し力を込めた。


「え」


と言葉に詰まっていると真白(ましろ)


「なんちゃって」


といたずらに笑った。


「…意識、してるよ。文化祭以外で付き合って初めてのデートだから緊張してて何話したらいいか分からなくて伊織(いおり)達の話をして気を紛らわしてただけだよ」


「そうだったんだ。じゃあ次はどこ行く?」


「えっと─」


それからたくさんのアトラクションに乗った。




「もうすぐで帰らないとだね」


と言うと真白(ましろ)


「最後に行きたいところあるんだけどいい?」


と訊いた。


「うん」


と言うと真白(ましろ)は観覧車の列に並んだ。


 順番になり観覧車のゴンドラに乗り込んだ。


「やっぱりゴンドラの中はちょっと寒いね」


と言うと真白(ましろ)がリュックから紙袋を取り出してその中に入っていた真っ白なマフラーを私の首に巻いた。


「メリークリスマス、咲久(さく)


「ありがとう。えっと似合う?」


と訊くと真白(ましろ)


「すごく」


と言って微笑んだ。


「ありがとう。私もプレゼントあるの」


と言って箱を渡した。


「開けてもいい?」


「うん」


と言うと真白(ましろ)は大事そうにリボンをとって箱を開けた。


「アロマライトと栞にしてみたんだけど……」


「栞ってもしかして」


「えっと、私の手作りなんだけど」


栞は革の生地にステッチを入れて真白(ましろ)のイニシャルを縫った。すると


「ありがとう」


と言って真白(ましろ)が私を抱きしめた。


「どういたしまして」


と言って私も抱き返した。


 観覧車を降りてお土産を買って駅に向かった。


「やっぱりクリスマスだからカップル多いね」


と言うと


「俺達もその中の1組なんだけどね」


と言って微笑んだ。


 家に帰るとお土産を心待にしていた莉久(りく)が玄関で待ち伏せていた。


「お土産何~?」


「クッキーとチョコにしたよ。明日のクリスマスパーティーで食べる用に少し残しててね」


「分かってる!」


と言って紙袋を受け取るとリビングに走っていった。莉久(りく)はお菓子を沢山食べるのにずっと体型を維持している。部活がバスケ部っていうのもあるのかな?



 翌日は朝から大忙しだった。(あおい)(みなと)莉久(りく)(はやて)の4人は輪飾りを作って(かける)蒼空(そら)が他の飾り付けをしていた。(蒼空(そら)は一番身長が高いから飾り付けをしているけど(かける)は自分では気付いていないけど少し不器用なので皆で輪飾り班から外した)


 一度、(かける)の作った輪飾りののりが取れてそのまま蒼空(そら)の頭に落ちてきたこともあったっけ。


 私は基本的には料理の手伝いをして一段落すると真白(ましろ)を呼びに行った。


「お邪魔します」


と言って真白(ましろ)がリビングに入ると皆(蒼空(そら)以外)、作業をしていた手を止めて寄ってきた。


真白兄(ましろにい)!待ってたぜ!」

真白兄(ましろにい)!後でトランプしよ!」

真白兄(ましろにい)も手伝って~」

「準備終わったらゲームしようぜ!ゲーム!」

「え~映画観ようよ!」


と口々に言った。


「5人とも、真白(ましろ)は1人しかいないんだから順番に言わないと聞き取れないよ」


と言うと


「あはは。なんか人気者になったみたいで嬉しいな」


真白(ましろ)が言った。


「……学校でも人気者じゃん。モテてるし……」


と言うと真白(ましろ)


咲久(さく)だけだよ」


と言って微笑んだ。すると周りが


「何が咲久姉(さくねえ)だけなの?」


と訊いてきた。


「好きになるのは咲久(さく)だけだよって意味……って咲久(さく)、どこ行くの?」


「ちょっと外の風に当たってくる。ついでに紙コップとか紙皿とか買ってくる」


と言って私はリビングを出た。


 私は走って近くのスーパーに向かった。皆の前で嫉妬したり好きとか言われたり恥ずかしすぎる。


 * * *


咲久姉(さくねえ)、顔真っ赤だった」


莉久(りく)ちゃんが言うと


「可愛かったね」


(あおい)ちゃんが言った。


「そうだね。じゃなくて財布とか何も持っていってないみたいだし追いかけてくるね」


と言って俺は小鳥遊(たかなし)家の玄関を出た。


 咲久(さく)、速いから追い付けるかな。


 近所のスーパーに入ると見覚えのある後ろ姿を見つけた。


 息を整えながら腕を掴んだ。


「うわ!ってなんだ。真白(ましろ)か……」


 * * *


「驚かせてごめん。財布持っていってなかったから持ってきたんだけど」


そういうと真白(ましろ)は腕を離した。


「……スマホ持ってきたから電子マネーで払えるし大丈夫だけど……」


と言うと沈黙がおとずれた。


 沈黙の中、紙コップと紙皿を買って家に向かった。


 私達は帰る途中にあった自動販売機で飲み物を買って隣のベンチに座った。


「……その、真白(ましろ)が学校で人気っていうかモテてるのを思い出して嫉妬しちゃって嫌みっぽいなこと言っちゃってごめん」


「いいよ」


「それと、恥ずかしくて家飛び出ちゃってごめんね。驚いたよね」


「驚いたけど恥ずかしいって思うってことは俺の気持ちはちゃんと伝わったってことでいいんだよね?」


真白(ましろ)が首をかしげた。


「うん」


「良かった」


「うっとうしいって思わないの?ヤキモチ妬いたり突然家飛び出したり」


「思わないよ。咲久(さく)がヤキモチ妬いてくれるのは嬉しいし、照れた顔も恥ずかしくて家を飛び出すのも可愛いって思うから」


と言うと真白(ましろ)は大きな手を私の頬に当てて


「冷たい。上着着ないで出ていったから寒いでしょ?俺のコート着なよ」


と言ってコートを脱いで私の肩に掛けた。


「私が着たら真白(ましろ)が寒くなるじゃん。」


「俺は暑がりだから大丈夫だよ。咲久(さく)は寒いの苦手でしょ?」


「うん。ありがとう」


そう言ってコートの袖に腕を通した。


「なんか、コートが大きすぎて子供になったみたい」


と言うと真白(ましろ)が笑って


「確かに」


と言った。


「寒いし早く帰ろう」


と言って真白(ましろ)の手を握ると真白(ましろ)も優しく握り返した。


 家に着くと準備はほとんど終わっていて紙皿と紙コップを渡すと皆ジュースや料理を取った。


「皆コップは持った?」


とお父さんが言うと皆頷いた。


「乾杯!」


「「乾杯!」」


と言ってコップを高く上げた。


 料理を食べ終えてケーキを切り分けて食べ終わると料理の片付けをした。


 片付けも終えると(かける)蒼空(そら)(みなと)(あおい)は一緒にバトルゲームをしていた。((はやて)真白(ましろ)は別のゲームをしていた)


「結構大規模なイルミネーションあるんだって!行きたい!」


莉久(りく)がスマホの画面をお父さんに見せて言うと


「え!往復3時間半もかかんの!?」


とお父さんが言った。


「お父さん、お願い」


莉久(りく)が言った。私も


「お願い」


と言うとお母さんも


海斗(かいと)くん、お願い」


と言った。


「うっ、まあそこまで言うなら……。でも、さすがにうちの車に全員は乗れないから(わたる)もいいよな?」


「いいけど。というか海斗(かいと)、娘と嫁に弱いよな」


(わたる)くんが笑って言った。


「仕方ないだろ。こんなに可愛いんだから」


とお父さんが言うと蒼空(そら)がゲームをしながら小さく頷いた。


「うふふ。ありがとう。夜ご飯は屋台が出てるみたいだしそっちで済ます?」


とお母さんが訊いた。


「そうだな。じゃあ17時に出るからそれまでに準備は終わらせとけよ。特にそこの4人」


とお父さんが言った。すると(かける)蒼空(そら)(みなと)(あおい)


「「は~い」」


とゲームをしながら言った。



 17時前、皆イルミネーションに行く準備を終えてまたうちに集まった。私達子供組はくじをひいてお父さんと(わたる)くんの車のどちらに乗るかを決めた。


 くじの結果、私、(あおい)(はやて)(みなと)(わたる)くんの車に、(かける)蒼空(そら)真白(ましろ)莉久(りく)がお父さんの車に乗ることになった。


 それぞれ暖かい格好をして車に乗り込んだ。


「イルミネーション楽しみだね~」


(あおい)が言った。


「そうだね。莉久(りく)に感謝だね」


「うん!」


(あおい)がニカッと笑って言った。


「ところでさっきから気になってたんだけどそのマフラーって真白兄(ましろにい)からのプレゼント?」


(あおい)がニヤニヤと笑いながら訊いた。


「そうだけど。あれ、私、(あおい)に言ったっけ?」


「ううん。すごく大事そうに持ってたからそうなのかな~って思っただけだよ」


「そんなに顔に出てた!?」


「うん!もしかしてだけどその腕時計もプレゼント?」


「実はそうなんだよね。誕生日は遊園地のチケットもらったんだけど形に残るものもって言ってくれたんだ。」


咲久姉(さくねえ)愛されてるね」


「えへへ」


「ねえ、咲久姉(さくねえ)真白兄(ましろにい)ってどっちから告白したの?」


「一応ちゃんと告白として受け取れるのは私から」


と言うと(あおい)だけじゃなく(みなと)(はやて)も首をかしげた。


「えっとね。真白(ましろ)に何回も告白してた子がいたんだけどその子に諦めてもらうために付き合ってるフリをしてたの。でも、フリをする必要がなくなったからこのままだったらまた幼馴染みに戻っちゃうって思って告白したの」


「そっか~。いいな。私も彼氏欲しいな」


(あおい)が言った。


(あおい)は告白しないの?」


「今はまだ無理かな」


(あおい)が言うと


(あおい)、好きなやついたのか!?誰だ!?」


(みなと)が訊いた。


「鈍感お兄ちゃんには内緒。てか、お兄ちゃんも告白すればいいのに。好きな子、いるでしょ?」


(あおい)が言うと(はやて)


「兄貴の好きな子ってり……」


と言い掛けていたところに(みなと)が被せて


「ばっ!俺は別に莉久(りく)のこと好きじゃねえし!」


と言った。すると(はやて)は笑って


「誰も莉久姉(りくねえ)のことだなんて言ってねえけど。俺は兄貴の好きな子は『理想高そう』って言おうとしただけだし」


と言った。


「そこで莉久姉(りくねえ)の名前出すなんて認めたも同然じゃない?まあ、仕方ないよね~。莉久姉(りくねえ)、可愛いし。」


(あおい)がニヤニヤと笑いながら言った。


「まあ?可愛いか可愛くないかで言ったら可愛い方だとは思うけど」


(みなと)が言うと(はやて)


「でも、あれだけ美形で優しいと年上の大人っぽい男からもモテるんだろうな」


と言った。すると(みなと)は盛大にため息をついて


「だよな。」


とポツリと呟いた。


「あれ?莉久姉(りくねえ)が好きって認めた。」


(あおい)が少し驚いたように言った。すると


「はいはいそーですよ。莉久(りく)が好きですけどなにか?」


と開き直ったように言った。


「急に素直になったね。」


と言うと(みなと)


「仕方ねえじゃん。あんだけ可愛くて優しい奴とずっと一緒にいて好きになるなって方がおかしいだろ!?」


と言った。


「てかさっきの反応的に莉久姉(りくねえ)、年上の男子からもモテてるの?」


(あおい)が訊いた。


「モテてるっていうか一昨日、委員会の先輩から告られてるところみたんだよ。その先輩、結構人気だし誰にでも優しいし大人っぽいから多分OKしたんじゃねえ?」


(みなと)がため息混じりに言った。


「多分?返事は聞いてないの?」


と訊くと


「告られてるところ見てすぐに下駄箱に向かったから」


と言った。


莉久(りく)はOKしてないと思うよ。だって、あんなに顔に出やすいんだから彼氏出来たら1週間ぐらいは変なはずなのにいつも通りだもん」


と言うと(あおい)(はやて)も頷いた。


「後で訊いてみようよ」


(あおい)が言うと頷いた。


 それから、1時間ちょっとでイルミネーションを行っているパークに着いた。


 車を降りてお父さん達と合流した。


「せっかくだしお父さんとお母さんは2人で行動してきなよ。」


と言うと(あおい)


「お母さん達もデートしてきていいよ。あ、でも屋台でご飯食べるからお金はちょーだい」


と言って手を差し出していた。


「そうだな。じゃあ1人1500円ずつでいいよな」


と言って(わたる)くんは1人ずつお小遣いを渡していた。私達もお小遣いをもらってそれぞれ自由行動をするはずだった。


「やべ!キッズ携帯持ってくんの忘れた!」


(かける)が言い出すまでは。


「じゃあ(かける)は絶対に1人行動したらダメだよ。今日は人が多いから迷子になったら大変だからね」


「分かった」


と言って(かける)が頷いた。


「そうだ!莉久姉(りくねえ)、お兄ちゃんが訊きたいことがあるんだって」


(あおい)が言うと「訊きたいことって?」と言って莉久(りく)が首をかしげた。


「一昨日、綾瀬(あやせ)先輩に告白されてるところをたまたま聞いちゃったんだけど……」


(みなと)が言うと莉久(りく)は慌てて


「え!……全部、聞いたの?」


と言った。


「いや、告白されてるのを聞いてすぐに帰ったけど……」


「良かった~。で、訊きたいことって?」


「付き合ったのか?」


「付き合ってないよ!」


「マジで!?綾瀬(あやせ)先輩かっけえし優しいし大人っぽいからOKしたのかと思った」


「確かに先輩はカッコいいし優しいし大人っぽいけど断ったよ」


「え、なんで?」


「なんでって(みなと)が訊いてきたんでしょ」


「いや、そうなんだけどさそんなに先輩のこと褒めてんのに断ったって言ったから」


「……好きな人がいるから」


と言って莉久(りく)は顔を背けてスマホを操作した。


 (みなと)はというとなんともいえない顔をしていた。私はポンッと(みなと)の肩に手を置いた。まあ、莉久(りく)の好きな人って(みなと)のことだから落ち込む必要はないんだけど。と思いながら私は


「最初はどこからまわる?」


と訊くと蒼空(そら)


「5人のことは俺がみているから姉貴と真白(ましろ)は2人でまわってこいよ」


と言った。


「でも、5人も大丈夫?」


と訊くと(はやて)


「俺も着いてるから心配しなくていいよ」


と言った。


「そうだね。蒼空(そら)(はやて)がいたら安心だね。」


と言うと真白(ましろ)


蒼空(そら)(はやて)くん、ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうね」


と言って微笑むと私の手を握った。


 このパークは公園と遊園地を兼ね備えているらしくメリーゴーラウンドや観覧車、コーヒーカップといった遊園地らしいアトラクションがいくつかある。そしてそのアトラクション全てライトアップされている。


「昨日も遊園地行ったけどやっぱりそれぞれ雰囲気が違っていいね」


真白(ましろ)が笑って言った。


「うん。」


咲久(さく)、あそこで写真撮らない?」


と言って真白(ましろ)が指した先にはイルミネーションで飾られたハートのオブジェがあった。


「うん、いいよ」


 近くにいたスタッフの人が写真を撮ってくれた……んだけど


「ラブラブですね」


スタッフさんは真白(ましろ)にスマホを返しながら言った。


 真白(ましろ)のスマホの画面には真白(ましろ)が私の頬にキスをしているところが写っていた。


「ほっぺにキスするなら先に言ってよ!心臓に悪いよ」


と言うと真白(ましろ)は両手で顔を覆った。「どうしたの?」と訊くと真白(ましろ)


「俺の彼女が可愛いすぎて……」


と言った。


「しゃ、写真も撮ったしイルミネーション見に行こ」


と言ってイルミネーションのアーチに向かった。


 アーチは赤、黄色、緑、青、紫の順に光っていてとてもきれい。しばらく、アーチの下をくぐってパークの真ん中の広場に行ってクリスマスツリーの写真を撮ったりとイルミネーションを堪能(たんのう)した。


咲久(さく)、メリーゴーラウンド乗ってみない?」


真白(ましろ)が訊いた。


「うん」


 メリーゴーラウンドの前に行くと誰も並んでいなかったのですぐに乗ることが出来た。


「メリーゴーラウンドとか何年ぶりだろ。」


「俺は小学生以来だな。どうする?馬に乗る?」


「う~ん。寒いし馬車でもいい?」


「いいよ」


真白(ましろ)は頷いてお姫様抱っこをして


「馬車までお運びしますよ、お姫様。」


と言って馬車まで運んでくれた。


「なんか、本当の王子様みたい」


と言うと真白(ましろ)は「光栄です」と言って額にキスをした。少ししてメリーゴーラウンドが動き出した。


「すごい。きれいだね」


「そうだね。」


真白(ましろ)が微笑んだ。


「それにしても、今日は寒いね」


「そう?俺のコート羽織る?」


「大丈夫!でも、もうちょっと寄ってもいいかな?」


と訊くと真白(ましろ)はおいでと言って腕を広げた。


 私は真白(ましろ)を抱きしめると抱き返してくれた。少しして顔をあげるとイルミネーションの光に照らされた真白(ましろ)の顔は少し赤くなっていた。


咲久(さく)、大好きだよ」


と言って真白(ましろ)はそっと唇にキスをした。


 メリーゴーラウンドが止まって降りて少し歩いているとチラチラと雪が降ってきた。


「雪だ。どうりで寒いと思った」


「じゃあ最初にいた場所に戻ってなにか暖かいもの食べようか」


と言って真白(ましろ)は私の手を引いた。


「クリスマスにこうやって真白(ましろ)と手を繋いでるなんて去年は思いもしなかったよ」


「俺も。こうして咲久(さく)と付き合えるなんて思いもよらなかった。咲久(さく)、好きになってくれてありがとう」


「どういたしまして。それと、こちらこそ好きになってくれてありがとう」


「どういたしまして。」


と言って私と真白(ましろ)は笑い合った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ