ホワイトクリスマス
真白と付き合って約2ヶ月経った。そして今日、12月20日は私の誕生日だ。
私達の学校はテスト返却が終わってすぐに冬休みに入る。今年は12月19日からだった。でも今日は今年最後の生徒会の仕事があったので学校に行っていた。
そして、4日後はクリスマスイブだ。
正直、初めて彼氏と過ごすクリスマスなので少し…いやとても浮かれてしまう。
うちの家族は毎年イブはそれぞれで過ごしてクリスマス当日は幼馴染みの長谷川家とクリスマスパーティーを行っている。
真白は毎年家族で過ごしているそうだけど今年は弟である紫輝が年末ギリギリにしか飛行機のチケットが取れなかったらしく家族皆では過ごせないそう。それに真白のお姉さんであるゆずちゃんもバイトで帰って来れないのでおじさんとおばさんは仕事だそう。
家に帰りながら私は幼馴染みと兄妹から頼まれたことを伝えた。
「真白、クリスマスさ……」
と言うと真白は
「24日に遊園地だよね。公園に9:30集合で合ってる?」
と言って笑った。
「あ、うん。ってそうじゃなくてクリスマス当日の話」
「当日?」
「そう。真白、家に1人なんだよね?」
「そうだけど。もしかして気にしてる?さすがにこの歳で寂しいなんて思わないよ。慣れてるし」
と言うと真白は苦笑した。
「真白じゃなくて私が寂しいの。だからうちのクリスマスパーティー来ない?」
「咲久が良くても皆は何て言うか分からないし……」
「もう事情は説明してあるの。そしたら皆なにがなんでも連れてきてって言ってたよ」
「そっか。じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」
と言って笑った。
公園の近くに行くと真白が立ち止まった。
「咲久、誕生日おめでとう」
と言って真白は細長い箱を渡した。
「ありがとう。」
「開けてみて」
と真白に言われ開けてみると私の好きな薄紫の革ベルトの腕時計が入っていた。
「可愛い!真白、ありがとう!」
「どういたしまして。咲久が誕生日遊園地がいいって言ってたけど形に残るものをプレゼントしたくて。たまたま咲久が好きそうなカラーとデザインだったから一昨日買っちゃったんだ」
と言って真白が少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「私は真白に誕プレあげれなかったのに私ばっかりなんか申し訳ないな」
「そう思うなら遊園地でお揃いのカチューシャ買ってよ。」
「うん!」
それから4日後。クリスマスイブ。
遊園地に行くということもあり今日はスカートをやめてスキニーデニムにグリーンのストライプのブラウスに黒のダウンを合わせてお気に入りのスニーカーを履いてスポーティーな感じにした。もちろん一昨日もらった腕時計も着けた。
少し早めに公園に行くとすでに真白が来ていた。
「おはよう、咲久。」
「おはよう」
「服似合ってるね。可愛い」
「あ、ありがとう。真白も似合ってる。」
真白は白のニットのクールネックセーターに黒のパンツでネイビーのチェスターコートを羽織っていていつもよりも大人っぽい。
「ありがとう」
と言って微笑んだ。
「じゃあそろそろ行こうか」
と言って真白は手を繋いだ。
「うん」
遊園地までは電車で向かった。
「やっぱり多いね」
「まあ、クリスマスだから」
フリーパスを買って入ってすぐのお店でネコのマカロンちゃんのカチューシャを買ってお揃いで着けた。
「真白がカチューシャ着けてるのなんかちょっと……」
「そんなに変?」
「ううん。なんか可愛いなって」
「それは俺の台詞だよ」
と言って優しく微笑んだ。真白は高身長で大人っぽいけど雰囲気が柔らかいから以外とカチューシャが似合ってる。
「どこから乗る?」
と真白が訊いた。
「もちろんジェットコースターから」
と言って私は県内最恐と言われているジェットコースターを指して言った。
「そうだね。」
ジェットコースターはすでに30分待ちだった。
列に並ぶと前に並んでいる人達に見覚えがあった。
「伊織?」
と一応訊いてみた。するとその子は振り返って「え!」と叫んですぐさま口を押さえた。
「真白と小鳥遊も来ていたのか」
と副会長が言った。するとさらに前に並んでいた侑李が
「え!咲久じゃん!」
と言うと侑李の隣で喋っていた俊が
「マジで!?」
と言って副会長の後ろから顔を出した。
「勢揃いだね」
と言うと真白がそうだねと言って笑った。
「それにしても、副会長が遊園地ってなんか意外ですね」
と言うと侑李が
「だよね~。全然似合わない」
と言って笑った。すると、副会長は
「連れてきたのは侑李だろ」
と言った。
「まあね~。まあそれはおいといて、会長と咲久はデート?」
「そうだよ。」
と言うと俊が
「お揃いのカチューシャいいな~」
と言って伊織に視線を送ると伊織は顔を背けた。
「なんか最近、積極的になったよね」
と言うと俊が
「まあな。告白してフラれたけど誰かさんが素直にならないから好きになってもらえるように頑張るんだ」
と言ってガッツポーズをした。
「宣言するのはいいと思うんだけど、本人の前で言うのは伊織が反応に困っちゃうと思うよ」
と言って伊織に視線を移すと案の定、伊織は顔を真っ赤にしていた。
「あ、もうそろそろだね」
とわざとらしく明るく言うと侑李が
「ホントだ。次ぐらいだね」
と言って笑った。
ジェットコースターに乗って降りると侑李達とは別れた。
「俊の言ってた誰かって副会長のことだよね」
「だろうね。」
と苦笑した。
「それにしても、俊が意外と積極的で驚いたな~」
と言うと真白が
「確かに驚いたけどせっかくのデートなんだからもっと俺のこと意識してほしいな~」
と言って繋いだ手に少し力を込めた。
「え」
と言葉に詰まっていると真白は
「なんちゃって」
といたずらに笑った。
「…意識、してるよ。文化祭以外で付き合って初めてのデートだから緊張してて何話したらいいか分からなくて伊織達の話をして気を紛らわしてただけだよ」
「そうだったんだ。じゃあ次はどこ行く?」
「えっと─」
それからたくさんのアトラクションに乗った。
「もうすぐで帰らないとだね」
と言うと真白は
「最後に行きたいところあるんだけどいい?」
と訊いた。
「うん」
と言うと真白は観覧車の列に並んだ。
順番になり観覧車のゴンドラに乗り込んだ。
「やっぱりゴンドラの中はちょっと寒いね」
と言うと真白がリュックから紙袋を取り出してその中に入っていた真っ白なマフラーを私の首に巻いた。
「メリークリスマス、咲久」
「ありがとう。えっと似合う?」
と訊くと真白は
「すごく」
と言って微笑んだ。
「ありがとう。私もプレゼントあるの」
と言って箱を渡した。
「開けてもいい?」
「うん」
と言うと真白は大事そうにリボンをとって箱を開けた。
「アロマライトと栞にしてみたんだけど……」
「栞ってもしかして」
「えっと、私の手作りなんだけど」
栞は革の生地にステッチを入れて真白のイニシャルを縫った。すると
「ありがとう」
と言って真白が私を抱きしめた。
「どういたしまして」
と言って私も抱き返した。
観覧車を降りてお土産を買って駅に向かった。
「やっぱりクリスマスだからカップル多いね」
と言うと
「俺達もその中の1組なんだけどね」
と言って微笑んだ。
家に帰るとお土産を心待にしていた莉久が玄関で待ち伏せていた。
「お土産何~?」
「クッキーとチョコにしたよ。明日のクリスマスパーティーで食べる用に少し残しててね」
「分かってる!」
と言って紙袋を受け取るとリビングに走っていった。莉久はお菓子を沢山食べるのにずっと体型を維持している。部活がバスケ部っていうのもあるのかな?
翌日は朝から大忙しだった。葵と湊と莉久と颯の4人は輪飾りを作って翔と蒼空が他の飾り付けをしていた。(蒼空は一番身長が高いから飾り付けをしているけど翔は自分では気付いていないけど少し不器用なので皆で輪飾り班から外した)
一度、翔の作った輪飾りののりが取れてそのまま蒼空の頭に落ちてきたこともあったっけ。
私は基本的には料理の手伝いをして一段落すると真白を呼びに行った。
「お邪魔します」
と言って真白がリビングに入ると皆(蒼空以外)、作業をしていた手を止めて寄ってきた。
「真白兄!待ってたぜ!」
「真白兄!後でトランプしよ!」
「真白兄も手伝って~」
「準備終わったらゲームしようぜ!ゲーム!」
「え~映画観ようよ!」
と口々に言った。
「5人とも、真白は1人しかいないんだから順番に言わないと聞き取れないよ」
と言うと
「あはは。なんか人気者になったみたいで嬉しいな」
と真白が言った。
「……学校でも人気者じゃん。モテてるし……」
と言うと真白は
「咲久だけだよ」
と言って微笑んだ。すると周りが
「何が咲久姉だけなの?」
と訊いてきた。
「好きになるのは咲久だけだよって意味……って咲久、どこ行くの?」
「ちょっと外の風に当たってくる。ついでに紙コップとか紙皿とか買ってくる」
と言って私はリビングを出た。
私は走って近くのスーパーに向かった。皆の前で嫉妬したり好きとか言われたり恥ずかしすぎる。
* * *
「咲久姉、顔真っ赤だった」
と莉久ちゃんが言うと
「可愛かったね」
と葵ちゃんが言った。
「そうだね。じゃなくて財布とか何も持っていってないみたいだし追いかけてくるね」
と言って俺は小鳥遊家の玄関を出た。
咲久、速いから追い付けるかな。
近所のスーパーに入ると見覚えのある後ろ姿を見つけた。
息を整えながら腕を掴んだ。
「うわ!ってなんだ。真白か……」
* * *
「驚かせてごめん。財布持っていってなかったから持ってきたんだけど」
そういうと真白は腕を離した。
「……スマホ持ってきたから電子マネーで払えるし大丈夫だけど……」
と言うと沈黙がおとずれた。
沈黙の中、紙コップと紙皿を買って家に向かった。
私達は帰る途中にあった自動販売機で飲み物を買って隣のベンチに座った。
「……その、真白が学校で人気っていうかモテてるのを思い出して嫉妬しちゃって嫌みっぽいなこと言っちゃってごめん」
「いいよ」
「それと、恥ずかしくて家飛び出ちゃってごめんね。驚いたよね」
「驚いたけど恥ずかしいって思うってことは俺の気持ちはちゃんと伝わったってことでいいんだよね?」
と真白が首をかしげた。
「うん」
「良かった」
「うっとうしいって思わないの?ヤキモチ妬いたり突然家飛び出したり」
「思わないよ。咲久がヤキモチ妬いてくれるのは嬉しいし、照れた顔も恥ずかしくて家を飛び出すのも可愛いって思うから」
と言うと真白は大きな手を私の頬に当てて
「冷たい。上着着ないで出ていったから寒いでしょ?俺のコート着なよ」
と言ってコートを脱いで私の肩に掛けた。
「私が着たら真白が寒くなるじゃん。」
「俺は暑がりだから大丈夫だよ。咲久は寒いの苦手でしょ?」
「うん。ありがとう」
そう言ってコートの袖に腕を通した。
「なんか、コートが大きすぎて子供になったみたい」
と言うと真白が笑って
「確かに」
と言った。
「寒いし早く帰ろう」
と言って真白の手を握ると真白も優しく握り返した。
家に着くと準備はほとんど終わっていて紙皿と紙コップを渡すと皆ジュースや料理を取った。
「皆コップは持った?」
とお父さんが言うと皆頷いた。
「乾杯!」
「「乾杯!」」
と言ってコップを高く上げた。
料理を食べ終えてケーキを切り分けて食べ終わると料理の片付けをした。
片付けも終えると翔と蒼空と湊と葵は一緒にバトルゲームをしていた。(颯と真白は別のゲームをしていた)
「結構大規模なイルミネーションあるんだって!行きたい!」
と莉久がスマホの画面をお父さんに見せて言うと
「え!往復3時間半もかかんの!?」
とお父さんが言った。
「お父さん、お願い」
と莉久が言った。私も
「お願い」
と言うとお母さんも
「海斗くん、お願い」
と言った。
「うっ、まあそこまで言うなら……。でも、さすがにうちの車に全員は乗れないから渉もいいよな?」
「いいけど。というか海斗、娘と嫁に弱いよな」
と渉くんが笑って言った。
「仕方ないだろ。こんなに可愛いんだから」
とお父さんが言うと蒼空がゲームをしながら小さく頷いた。
「うふふ。ありがとう。夜ご飯は屋台が出てるみたいだしそっちで済ます?」
とお母さんが訊いた。
「そうだな。じゃあ17時に出るからそれまでに準備は終わらせとけよ。特にそこの4人」
とお父さんが言った。すると翔、蒼空、湊、葵は
「「は~い」」
とゲームをしながら言った。
17時前、皆イルミネーションに行く準備を終えてまたうちに集まった。私達子供組はくじをひいてお父さんと渉くんの車のどちらに乗るかを決めた。
くじの結果、私、葵、颯、湊が渉くんの車に、翔、蒼空、真白、莉久がお父さんの車に乗ることになった。
それぞれ暖かい格好をして車に乗り込んだ。
「イルミネーション楽しみだね~」
と葵が言った。
「そうだね。莉久に感謝だね」
「うん!」
と葵がニカッと笑って言った。
「ところでさっきから気になってたんだけどそのマフラーって真白兄からのプレゼント?」
と葵がニヤニヤと笑いながら訊いた。
「そうだけど。あれ、私、葵に言ったっけ?」
「ううん。すごく大事そうに持ってたからそうなのかな~って思っただけだよ」
「そんなに顔に出てた!?」
「うん!もしかしてだけどその腕時計もプレゼント?」
「実はそうなんだよね。誕生日は遊園地のチケットもらったんだけど形に残るものもって言ってくれたんだ。」
「咲久姉愛されてるね」
「えへへ」
「ねえ、咲久姉と真白兄ってどっちから告白したの?」
「一応ちゃんと告白として受け取れるのは私から」
と言うと葵だけじゃなく湊と颯も首をかしげた。
「えっとね。真白に何回も告白してた子がいたんだけどその子に諦めてもらうために付き合ってるフリをしてたの。でも、フリをする必要がなくなったからこのままだったらまた幼馴染みに戻っちゃうって思って告白したの」
「そっか~。いいな。私も彼氏欲しいな」
と葵が言った。
「葵は告白しないの?」
「今はまだ無理かな」
と葵が言うと
「葵、好きなやついたのか!?誰だ!?」
と湊が訊いた。
「鈍感お兄ちゃんには内緒。てか、お兄ちゃんも告白すればいいのに。好きな子、いるでしょ?」
と葵が言うと颯も
「兄貴の好きな子ってり……」
と言い掛けていたところに湊が被せて
「ばっ!俺は別に莉久のこと好きじゃねえし!」
と言った。すると颯は笑って
「誰も莉久姉のことだなんて言ってねえけど。俺は兄貴の好きな子は『理想高そう』って言おうとしただけだし」
と言った。
「そこで莉久姉の名前出すなんて認めたも同然じゃない?まあ、仕方ないよね~。莉久姉、可愛いし。」
と葵がニヤニヤと笑いながら言った。
「まあ?可愛いか可愛くないかで言ったら可愛い方だとは思うけど」
と湊が言うと颯が
「でも、あれだけ美形で優しいと年上の大人っぽい男からもモテるんだろうな」
と言った。すると湊は盛大にため息をついて
「だよな。」
とポツリと呟いた。
「あれ?莉久姉が好きって認めた。」
と葵が少し驚いたように言った。すると
「はいはいそーですよ。莉久が好きですけどなにか?」
と開き直ったように言った。
「急に素直になったね。」
と言うと湊は
「仕方ねえじゃん。あんだけ可愛くて優しい奴とずっと一緒にいて好きになるなって方がおかしいだろ!?」
と言った。
「てかさっきの反応的に莉久姉、年上の男子からもモテてるの?」
と葵が訊いた。
「モテてるっていうか一昨日、委員会の先輩から告られてるところみたんだよ。その先輩、結構人気だし誰にでも優しいし大人っぽいから多分OKしたんじゃねえ?」
と湊がため息混じりに言った。
「多分?返事は聞いてないの?」
と訊くと
「告られてるところ見てすぐに下駄箱に向かったから」
と言った。
「莉久はOKしてないと思うよ。だって、あんなに顔に出やすいんだから彼氏出来たら1週間ぐらいは変なはずなのにいつも通りだもん」
と言うと葵と颯も頷いた。
「後で訊いてみようよ」
と葵が言うと頷いた。
それから、1時間ちょっとでイルミネーションを行っているパークに着いた。
車を降りてお父さん達と合流した。
「せっかくだしお父さんとお母さんは2人で行動してきなよ。」
と言うと葵も
「お母さん達もデートしてきていいよ。あ、でも屋台でご飯食べるからお金はちょーだい」
と言って手を差し出していた。
「そうだな。じゃあ1人1500円ずつでいいよな」
と言って渉くんは1人ずつお小遣いを渡していた。私達もお小遣いをもらってそれぞれ自由行動をするはずだった。
「やべ!キッズ携帯持ってくんの忘れた!」
と翔が言い出すまでは。
「じゃあ翔は絶対に1人行動したらダメだよ。今日は人が多いから迷子になったら大変だからね」
「分かった」
と言って翔が頷いた。
「そうだ!莉久姉、お兄ちゃんが訊きたいことがあるんだって」
と葵が言うと「訊きたいことって?」と言って莉久が首をかしげた。
「一昨日、綾瀬先輩に告白されてるところをたまたま聞いちゃったんだけど……」
と湊が言うと莉久は慌てて
「え!……全部、聞いたの?」
と言った。
「いや、告白されてるのを聞いてすぐに帰ったけど……」
「良かった~。で、訊きたいことって?」
「付き合ったのか?」
「付き合ってないよ!」
「マジで!?綾瀬先輩かっけえし優しいし大人っぽいからOKしたのかと思った」
「確かに先輩はカッコいいし優しいし大人っぽいけど断ったよ」
「え、なんで?」
「なんでって湊が訊いてきたんでしょ」
「いや、そうなんだけどさそんなに先輩のこと褒めてんのに断ったって言ったから」
「……好きな人がいるから」
と言って莉久は顔を背けてスマホを操作した。
湊はというとなんともいえない顔をしていた。私はポンッと湊の肩に手を置いた。まあ、莉久の好きな人って湊のことだから落ち込む必要はないんだけど。と思いながら私は
「最初はどこからまわる?」
と訊くと蒼空が
「5人のことは俺がみているから姉貴と真白は2人でまわってこいよ」
と言った。
「でも、5人も大丈夫?」
と訊くと颯が
「俺も着いてるから心配しなくていいよ」
と言った。
「そうだね。蒼空と颯がいたら安心だね。」
と言うと真白が
「蒼空、颯くん、ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうね」
と言って微笑むと私の手を握った。
このパークは公園と遊園地を兼ね備えているらしくメリーゴーラウンドや観覧車、コーヒーカップといった遊園地らしいアトラクションがいくつかある。そしてそのアトラクション全てライトアップされている。
「昨日も遊園地行ったけどやっぱりそれぞれ雰囲気が違っていいね」
と真白が笑って言った。
「うん。」
「咲久、あそこで写真撮らない?」
と言って真白が指した先にはイルミネーションで飾られたハートのオブジェがあった。
「うん、いいよ」
近くにいたスタッフの人が写真を撮ってくれた……んだけど
「ラブラブですね」
スタッフさんは真白にスマホを返しながら言った。
真白のスマホの画面には真白が私の頬にキスをしているところが写っていた。
「ほっぺにキスするなら先に言ってよ!心臓に悪いよ」
と言うと真白は両手で顔を覆った。「どうしたの?」と訊くと真白は
「俺の彼女が可愛いすぎて……」
と言った。
「しゃ、写真も撮ったしイルミネーション見に行こ」
と言ってイルミネーションのアーチに向かった。
アーチは赤、黄色、緑、青、紫の順に光っていてとてもきれい。しばらく、アーチの下をくぐってパークの真ん中の広場に行ってクリスマスツリーの写真を撮ったりとイルミネーションを堪能した。
「咲久、メリーゴーラウンド乗ってみない?」
と真白が訊いた。
「うん」
メリーゴーラウンドの前に行くと誰も並んでいなかったのですぐに乗ることが出来た。
「メリーゴーラウンドとか何年ぶりだろ。」
「俺は小学生以来だな。どうする?馬に乗る?」
「う~ん。寒いし馬車でもいい?」
「いいよ」
と真白は頷いてお姫様抱っこをして
「馬車までお運びしますよ、お姫様。」
と言って馬車まで運んでくれた。
「なんか、本当の王子様みたい」
と言うと真白は「光栄です」と言って額にキスをした。少ししてメリーゴーラウンドが動き出した。
「すごい。きれいだね」
「そうだね。」
と真白が微笑んだ。
「それにしても、今日は寒いね」
「そう?俺のコート羽織る?」
「大丈夫!でも、もうちょっと寄ってもいいかな?」
と訊くと真白はおいでと言って腕を広げた。
私は真白を抱きしめると抱き返してくれた。少しして顔をあげるとイルミネーションの光に照らされた真白の顔は少し赤くなっていた。
「咲久、大好きだよ」
と言って真白はそっと唇にキスをした。
メリーゴーラウンドが止まって降りて少し歩いているとチラチラと雪が降ってきた。
「雪だ。どうりで寒いと思った」
「じゃあ最初にいた場所に戻ってなにか暖かいもの食べようか」
と言って真白は私の手を引いた。
「クリスマスにこうやって真白と手を繋いでるなんて去年は思いもしなかったよ」
「俺も。こうして咲久と付き合えるなんて思いもよらなかった。咲久、好きになってくれてありがとう」
「どういたしまして。それと、こちらこそ好きになってくれてありがとう」
「どういたしまして。」
と言って私と真白は笑い合った。