ミスコン&ミスターコン
文化祭2日目。
2日目は主に屋台とミスコン、ミスターコンをメインで開催される。
参加者は空き教室に集まることになっていたので千花と一緒にその教室に向かっていた。
「緊張するね」
と千花が言った。
「そうだね。でも楽しみ」
と言うと千花は笑って頷いた。
向かっている途中で
「小鳥遊さん!」
と話しかけられた。
「あ、山崎さん。それに近藤先輩も」
「この前は本当にごめん(なさい)。」
と山崎さんと近藤さんが同時に言った。
「いいですよ。それに、私も謝らないといけないので。私、あのときはまだ真白と付き合ってなかったんです。嘘ついててごめんなさい」
と言って頭を下げると
「謝らないでよ!私のせいなんだし。」
と山崎さんが慌てていった。
「でも、山崎さんには少し感謝もしてるの。山崎さんのお陰で自分の気持ちをちゃんと伝えることが出来たから」
と言うと山崎さんは
「お礼を言うのは私の方だよ。小鳥遊さんが言ってくれたからまたこうして付き合えたんだし。ありがとね」
と言った。
「私も素直になれなかったから。」
「話してるところ悪いんだけどそろそろ時間が」
と千花が言った。
「あ!ホントだ!じゃあ、また」
「うん!ミスコン応援してるからね」
と言って山崎さんが手を振った。
私と千花は急いで控え室に向かった。控え室に入るとミスコンの出場メンバーが揃っていた。
すると、係の3年生が入ってきた。
「特技披露で使う小道具とかがあったら運ぶのでこの箱の中にいれてください」
指示を受けてそれぞれの小道具を箱に入れた。
「千花は何するんだっけ?」
「私はクラリネットだよ。お母さんが趣味でよく演奏してたから簡単な曲なら吹けるんだ」
「そういえば千花の家に行ったときに千花のお母さん演奏してくれたね。でもピアノ習ってなかった?」
「うん。ピアノも習ってたんだけど野外では出来ないから」
「そうだね」
「咲久は体操だよね」
「そうだよ」
「咲久って運動系でも勉強系でもなんでもできるね」
「そんなことないよ。私、千花と違って歌とか合奏とかダメだもん。私とカラオケ行ったことあるでしょ?」
と言うと千花は「確かに」と言って笑った。
「でもまあ、咲久は音痴だけどそれはそれでいいと思うよ。だって完璧すぎる人ってなんか嫌じゃん?」
「完璧って。運動は昔、走り回ってたから得意なだけだし勉強も真白に教えてもらってるだけだよ」
と話していると時間になったので私達はグラウンドのステージに行った。
千花の特技披露が終わりとうとう私の順番がまわってきた。
『次は1年2組の小鳥遊咲久さんの特技披露です。』
私がアクロバットを披露すると多くの人が拍手をしてくれた。
全員の披露が終わったので午後の結果発表までは自由時間になる。私達の次はミスターコンの特技披露を行っているので私は千花と一緒に見に行くことにした。
「あ!ちょうど会長の番だよ」
と千花がステージを指して言った。
「ホントだ。真白は英語なんだ」
「さすが会長だね。英語ペラペラ」
「うん!ゆずちゃん…じゃなくて真白のお姉さんが昔から英語が得意で皆でよく教えてもらってたんだよ。それに今は英語教師の勉強してるんだよ」
「咲久、会長の話になるとめちゃくちゃ嬉しそうに話すね」
と千花に笑われてしまった。
「そんなことないし。てか、次は五十嵐みたいだからちゃんと見ないとだよ」
五十嵐はボールハンドリングを、薫先輩は歌を、トモはマジックをしていた。
「後は結果発表だけだね」
「そうだね。私、亮太のところに行くけど咲久はどうする?」
「私も行く」
と言ってミスターコンの控え室に向かった。
ドアをノックするとミスターコンに参加していた人が開けてくれた。
「どうしたの?」
「えっと、仁科先輩と五十嵐くんいますか?」
「2人は飲み物買いに行ったよ」
「そうなんですか。」
話していると奥から他の参加者が出てきた。
「君、小鳥遊さんじゃん。隣の子も可愛いね」
「ホントだ~。ねえ、俺らがグランプリと準グランプリ取ったらさぁ付き合ってくれない?ちなみに小鳥遊さんは俺とね」
「じゃあ俺はもう一人の子」
と言ってその参加者2人はニヤニヤと笑った。ドアを開けてくれた人が「お前らやめろよ」と言うとその人を睨んで千花の肩を掴もうとしてきた。
私は慌ててその手を掴んで捻った。
「私達2人とも大事な彼氏がいるので無理です。後、私の親友に気安くさわらないで」
と笑顔で言うと
「こわっ。でも俺、そういうタイプ好きだな~。やっぱりグランプリ取ったら俺と付き合ってよ。俺ぐらいイケメンと付き合ったら鼻が高いよ」
と言われた。すると千花が
「何言ってんの?咲久の方があんたの100倍かっこいいし」
と言った。
「おいおい。君は俺の女になる予定なんだから他のやつを褒めるんじゃねえよ」
ともう片方が言った。すると真白と五十嵐を見つけた。五十嵐は状況を察して走ってきて
「千花は俺の彼女だ。何言ってんだてめえ?」
と言った。
「あ、亮太」
すると、真白も
「咲久!大丈夫?怪我してない?」
と言って駆け寄った。
「あ、うん。そんなことより、この人千花の肩を掴もうとしたんだよ!まあ、未然に防いだから大丈夫だったけど」
と言うと五十嵐はさらに怒った。
「咲久が怪我してるかどうかは俺にとって“そんなこと”じゃないんだけど」
と真白が言った。
「え、そこ?今そこツッコむ?」
「俺はすごい心配したのにそんなことって言われたから。」
と言って真白はバックハグをした。
「ちょっ、人前であんまりくっつかないでよ」
と言うと
「誰のせいで拗ねてると思ってるの?」
と言って真白が肩に頭をのせた。
「お2人さん。ここでイチャつかないでくれません?」
と千花が言った。
「別にイチャついてる訳じゃないし」
と言うと「ほんと~?」とニヤニヤと笑っていた。
「アホらし」
と言ってさっきの2人はこの場を去っていった。
「やっとどっか行ってくれた」
と言うと千花も
「亮太を呼びにきただけなのに絡まれるなんて最悪」
と言った。
「千花さ、もうちょっと危機感持ってくれない?」
と五十嵐が言うと
「咲久もだよ。たとえ強くても花火のときみたいに咲久よりも強い人もいるんだからね」
と真白が言った。
「うん」
「は~い」
と私と千花は同時に言って顔を見合わせた。
「結果発表までまだ時間あるしどこかみてまわらない?」
と千花が私に訊いた。
「せっかくだし五十嵐と2人でまわればいいのに」
「亮太とは昨日一緒にまわったし咲久とも文化祭楽しみたいもん」
「じゃあ4人でまわろ!真白も五十嵐もいいよね!」
「え、ああ。」
「俺は…まあ、」
「じゃあ私クレープ食べたい!」
と千花が言った。
「私も!早く行こ!」
と言って千花と手を繋いでクレープ屋台に向かった。
後ろで五十嵐が『俺が繋ぎたかったのに』と言っていたのは聞こえなかったことにしておいた。
私は苺チョコクレープに、千花はチョコバナナクレープにした。真白はお好み焼きで五十嵐はホットドッグを買って4人でベンチに座って食べた。
「それにしても会長が小鳥遊に甘えてるのとかちょっと意外でした」
と五十嵐が言うと
「だよね。前は咲久が甘えようとして私と亮太にどうやって甘えたらいい?って訊いてたのに」
と千花が言った。
「ちょっと!真白の前で言わないでよ!」
と言っても2人は聞かず真白が「そうなの?」と五十嵐と千花に前のことをいろいろ訊いていた。
「ヤバい!恥ずかしすぎる!」
と言って私はクレープを口に詰め込んだ。すると真白が急に近付いてきて頬にキスをした。
「な、にを…」
「クリームついてたから」
「真白はもっと人目を気にしてよ」
「じゃあ人がいないところだったらいいんだよね」
と言って私を抱き抱えて校舎裏に行った。
「降ろしてくれない?」
「どうして?」
「真白の顔がいつもより近いから緊張する」
と言うと
「わかった」
と言って降ろしてくれた。
「顔を近付けるだけで緊張してくれるんだね」
「だけって。好きな人に顔を近付けられたら緊張するよ」
「そっか。そうだね。」
と言って真白は微笑んだ。そして、少しの間を開けて口を開いた。
「俺さ、咲久が俺と2人でいるのがもしかしたら嫌なのかなって思ってたんだ」
「どうして?」
「体育祭の次の日に家に来たでしょ?そのとき、いきなり押し倒して怖がらせたし、付き合えたのが嬉しくてキスもたくさんしたからもしかしたら俺に対して〝怖い〟とか〝気持ち悪い〟とか少しでも思ってるんじゃないかなって」
と言っている真白の言葉を遮るように「そんなことない!」とすぐに否定した。
「そりゃ、あのときはちょっと怖いって思ってたけどそれを察して座るとき少し距離を開けて座ってくれたり密室にならないようにリビングのドアとか窓を開けてくれたりしてくれたからその後は全然怖いなんて思わなかったよ」
「それは、俺が嫌われたくなかったからしただけで…」
「そうだとしても気遣ってくれて嬉しかった」
「…」
「それに、その、キスも嫌じゃなかったよ。思い出したらめちゃくちゃ恥ずかしいけど真白も私のことを好きでいてくれてるんだなって感じて嬉しかった。真白を気持ち悪いなんて思わないよ。」
「ありがとう。それと、ごめん。人前でキスなんて咲久が嬉しい訳がないのに。俺、咲久を独り占めしたかったんだと思う。だから、葉山さんにも少しヤキモチ妬いてた」
「え!千花に?」
「うん。でももう大丈夫。」
と真白が言ったのとほとんど同時に放送が流れた。
『ミスコン、ミスターコンに参加している人は集計が終わったのですぐにステージに集まってください』
「じゃあ行こっか」
「うん」
ステージに着くとそれぞれ女子も男子もエントリー順に並んだ。
準グランプリはミスもミスターも紙に張り出されていた。
『皆さん揃いましたね。それではミス桜川を発表します。準グランプリとはたったの2票差。ミス桜川に選ばれたのは1年2組“小鳥遊咲久”!』
すると、ティアラとマントを被せられた。
「…私が?」
『続きまして、ミスター桜川を発表します。こちらは驚異の20票差。ミスター桜川に選ばれたのは2年2組“仁科真白”!』
真白も冠とマントを被せられた。
『では、ミス桜川に選ばれた小鳥遊咲久さん。今のお気持ちは?』
「えっと。初めは友達と思い出が作りたくて参加したんです。まさか選ばれるとは思わなくてすごく驚いています。でも、めちゃくちゃ嬉しいです。」
『ありがとうございます。それではミスター桜川の仁科真白さん。今のお気持ちを聞かせてください』
「俺も最初は言われたから参加しただけだったんですけど、彼女にとって自慢の彼氏でいたかったのですごく嬉しいです。それに、彼女がすごくモテるのでこれめライバルも減るかなって思って」
と言って真白がニコッと笑うと会場から『キャー』と言う声援が聞こえてきた。
すると、真白は私の隣に並んで肩を引き寄せて
「てことで、咲久を狙ってるやつは諦めてね」
と言った。すると、さっきよりも大きな声援が聞こえてきた。
『すごく盛り上がってきたところですがこれにてミスコン&ミスターコンを終了いたします』
と担当の生徒が言って参加者はそれぞれバラけていった。
「咲久!おめでとう~!」
と言って千花が飛びついてきた。
「ありがとう。千花も準グランプリおめでとう」
「ありがとう!てか、私の予想当たってたんだけど!絶対グランプリは咲久と会長だと思ってた。」
「それは俺も思ってた」
と五十嵐が頷いて言った。
「真白は分かるけどなんで私?」
「咲久って自分のこと下にみすぎだよね。可愛いのに。しかもそれだけじゃなくて咲久と会長がカップルとして人気だから絶対グランプリだと思ってたんだ。」
「へ~知らなかった。」
「私も」
と言うと千花は
「噂なんだけどファンクラブもあるんだって」
と言った。
「その子達は俺と咲久の仲を邪魔しようとしたやつがいたら守ってくれそうで心強いな」
と真白が言った。
「どうせただの噂だよ」
「それは分からないよ。だって、同じ生徒会で幼馴染みで2人とも美形って周りから見れば結構面白いし」
と千花が言った。
「もともと会長のファンクラブが小鳥遊のファンと合体したって聞いたぜ」
と五十嵐が言った。
「そんな噂どこから流れてるのよ」
「さあ?」
「まあいいや。てか、もう3時だしそろそろ片付けに行かないと。」
と私が時計を見て言うと千花が
「ホントだ。」
と言った。
「咲久は後夜祭出る?」
と真白が聞いた。
「私は出ないつもりだけど。もう疲れちゃったし」
「そっか。じゃあ片付けが終わったら呼びに行くから一緒に帰ろうね」
「うん」
と言って真白と別れた。
片付けが終わったのと同じぐらいに真白が迎えに来てくれた。
「ちょうど良いタイミングだよ」
「良かった。じゃあ帰ろう」
と言って手を繋いだ。
「咲久!またね!」
と言って千花が手を振った。
「うん。またね」
と言って私も手を振った。
学校を出て家に向かった。
「咲久、文化祭は楽しかった?」
「うん!中学とは規模が全然違って楽しかった」
「俺も。去年も楽しかったけど今年は咲久も一緒だったからさらに楽しかった。」
「私も」
「そうだ。今週の土曜に合咲公園行かない?」
「行きたい!」
「良かった。じゃあ13時半に迎えに行くね」
「うん!楽しみにしてる!」
と言って手を振って別れた。