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文化祭初日


 付き合って2日目。


 今日は真白(ましろ)と私のお弁当を作った。


 準備をして天気予報を見てるとチャイムが鳴った。


 バッグを持ってドアを開けると真白(ましろ)が待っていた。


「おはよう、咲久(さく)


「おはよう」


「今日は編み込んだんだね。可愛い」


「ありがとう。ちょっと浮かれすぎかなって思ったけど良かった」


「でも、可愛すぎてまた咲久(さく)を好きになる奴が増えそう」


「大丈夫だよ。これまでも真白(ましろ)以外好きになってこなかったんだし」


「そうだね。」


と言って真白(ましろ)は手を繋いで歩きだした。


「もうすぐ、咲久(さく)の誕生日だけどなにか欲しいものある?」


「まだ2ヶ月半ぐらいあるよ?」


「そうだけど早めにリサーチしたくて」


「“もの”じゃなくてもいい?」


「いいけど。」


「じゃあ、一緒に遊園地行きたい」


「うん。一緒に行こうか」


と言って微笑んだ。


 学校に着くと真白(ましろ)が教室まで送ってくれた。


 教室に入ると友達に囲まれた。


「なんかこの前よりも恋人っぽくなった気が…」


「なにかあったの!?」


「ラブラブになってる」


と口々に言った。


「実は前までは訳があって付き合ってるフリをしてたんだけど、それが解決して正式に付き合い始めたんだ。」


「そうなんだ。なんか漫画みたいだね」


「そう?」


「うん!でも、会長と咲久(さく)ちゃんだとすごく画になる」


「えへへ、ありがとう」




 放課後、生徒会室に各クラスの委員長と生徒会メンバーが集まった。


「1ヶ月後の文化祭についてです。例年通り1年生は劇か展示のどちらかで2年生は教室で出来る出し物とグラウンドでの食べ物の屋台。3年生はグラウンドでの食べ物屋台とステージでの出し物。劇は2クラスまでなので3クラス以上が劇をするとなるとくじ引きになります。グラウンドは屋台を決めてから場所を決めてください。ステージは主に午後での使用になります。もし、空いていたら1日目と2日目を同じクラスが使うことも可能です。何か質問はありますか?」


「もし、どのクラスも劇をやらない場合はどうするんですか?」


「その場合はくじ引きで劇をするクラスを決めます。まあ、どの年も劇は人気があるんですけどね」


「飲食はグラウンドのみですか?」


「カフェなどをしたい場合は申請が必要ですが教室で行うことも可能です」



 * * *


「今日の真白兄(ましろにい)、普段とちょっと雰囲気違った。なんか会長!って感じ」


「会長だよ。というかまた真白兄(ましろにい)呼びに戻ってるよ」


「もう染み付いちゃってるから。まだ付き合って2日だし」


「そうだね。でもその呼び方も嫌いじゃないよ」


「そうなんだ。でも、せっかく付き合えたんだし真白(ましろ)って呼ぶのに馴れたいな」


「じゃあ、いっぱい呼んで馴れて」


と言って真白(ましろ)は笑って手を握った。


「そうだ。良かったら文化祭一緒にまわらない?」


「うん!一緒にまわりたい!」


「じゃあ約束」


と言って2人で指切りをした。




 3週間後、文化祭の準備をしていた。私達のクラスは劇でをすることになった。そして、ミスコンに出ることに。


 こうなったのは2週間と数日前のことだった。


「3年生がミスコンとミスターコンを行うことになったらしい。それで1クラス男女2人ずつが出場してほしいんだって」


と文化祭委員の生徒が言った。


「じゃあ咲久(さく)千花(ちか)がいいんじゃない?」


と友達が言った。


「「え!私!?」」


千花(ちか)と私は同時に言った。


「だってクラスの中で2人が一番目立つしそれを鼻にかけてないから」


と言った。


「え、でも千花(ちか)はまだしも私は…」


と言うと千花(ちか)


咲久(さく)は可愛いよ!自信持って!」


と言って私の手を握った。


「それに咲久(さく)とならなんでも楽しめそう!」


と言った。


「そうだね。私も千花(ちか)とならなんだって楽しめる!皆がいいなら千花(ちか)と一緒に出てみたい」


と言うと大きな拍手が起こった。すると


「ミスターコンはトモがいいんじゃね」


と男子生徒が言った。


「確かに!」


と他の生徒も言った。


「竹田くんはそれでいいですか?」


と文化祭委員の生徒が言うと


「面白そうだからいいよ」


と言った。


「もう1人はどうする?」


瀬川(せがわ)くんは?」


と何人かのグループの女子生徒が言った。瀬川(せがわ)くんこと瀬川(せがわ)光輝(こうき)くんだ。瀬川(せがわ)くんは最近転校してきたばかりだけど1年生の中では少し人気がある。


瀬川(せがわ)くんはそれでもいいですか?」


「俺でいいなら」


「じゃあ決まりですね」


と委員の生徒が言って紙に名前を書いて教室を出ていった。


 劇は眠り姫のターリアと狩りをしていた王子様の物語。なんと私はターリア姫の役になった。そして王子役は瀬川(せがわ)くんに決まった。衣装は演劇部の衣装を少しいじって借りられるらしい。


 現在は劇の練習をしている。


「ーーお婆さん、何をしているの?」


「糸を紡いでいるんだよ。嬢ちゃんもやるか?」


「うん」


 そういって私は紡ぎ車の(おもり)に指を触れてばたりと倒れた。すると王様役の子が


「やはりあの魔女の呪いは本当だったのか?」


と言い泣き崩れる。


 そして、最後。王子様の瀬川(せがわ)くんが剣で茨を伐り進んで歩いてきて


「な、なんということだ。こんなところに美しい姫が眠っているではないか」


と言うと監督の子が「ストップ!」と言って


瀬川(せがわ)くん、もうちょっと感情込めて。王子様とターリア姫は練習してきて」


と言った。


「「はい」」


と言って中庭に行った。


「ごめん、俺、演技とかしたことなくて」


と言って瀬川(せがわ)くんが頭を下げていった。


「気にしないで!くじ引きだし。それに私もそんなに上手くないから」


「ありがとう」


と言って笑った瀬川(せがわ)くんはクールな彼と違ってとても可愛らしかった。


「じゃあ、練習しようか」



「なんということだ。こんなところに美しい姫が眠っているではないか」


「すごい!めちゃくちゃ上達してるよ!」


「マジで?良かった」


「うん!じゃあ次の場面ね」


 王子様(瀬川(せがわ)くん)からキス(のフリ)をされ私が体を起こす。


「あなたは…?」


「私は隣の国の王子です」


「私はターリアといいます。」


「ターリア姫。出会ってすぐに私はあなたに恋に落ちました。私が悪い魔女を倒すことが出来たら私と結婚してください」


「はい」


 瀬川(せがわ)くんは魔女を倒す演技をし私に振り返る。


「これからは私があなたを守ります。私と結婚してください」


「ええ、喜んで」


と言って私は瀬川(せがわ)くんに手のひらを重ねる。するとどこから見ていたのか監督の子が


「完璧よ!小鳥遊(たかなし)さんも瀬川(せがわ)くんも本当にターリア姫と王子だった。」


と言って走ってきた。


「ありがとう。やっぱり演技って役になりきるのが一番だね。」


「そうだな。俺もそう思う」


そう言うと瀬川(せがわ)くんは自動販売機に向かって何か飲み物を買って帰ってきた。


「はい、小鳥遊(たかなし)も」


と言って炭酸水をくれた。


「ありがとう。」


と言うと瀬川(せがわ)くんは


「感謝するのは俺の方だよ。練習付き合ってくれて助かった」


と言ってジュースを開けた。私もプシュッと音を立ててペットボトルを開けて炭酸を飲んだ。もう10月の終わりということもあり夕方になると少し肌寒い。でも、練習に熱中していたせいかあまり気にならなかった。


 数日後、衣装合わせをした。


咲久(さく)!すごく似合ってる!」


千花(ちか)が言った。


「写真撮ろうよ!」


と監督の子が言うと役者も道具班も皆集まって記念撮影をした。


 王子に扮した瀬川(せがわ)くんはというと女子に囲まれてツーショットを頼まれていた。


「なんか文化祭の準備の期間でさらに人気出たね」


千花(ちか)が言った。


「だね。でもクラスに馴染めたみたいで良かった」


「確かに。瀬川(せがわ)くんって一匹狼っぽいイメージだったけど今は結構クラスに溶け込んでるよね」


「うん」



 ちなみにミスコンとミスターコンは1クラス男女2人ずつで3学年の5クラスなので総勢60人から男女それぞれ10人に絞られる。


 うちのクラスからの参加者は皆決勝に残ることが出来た。私も運良く残れて少し嬉しい。


 帰り道、久しぶりに真白(ましろ)と帰ることが出来た。


「最近は準備が忙しくて一緒に帰れなくてごめんね」


「ううん。暗い時間になったら蒼空(そら)莉久(りく)が途中まで迎えにきてくれたから大丈夫。」


「そっか。そういえば今日は衣装合わせをしたんだよね?」


「うん!あ、写真撮ったから見せるね。えっとね~、あった!」


「…可愛い」


「あ、ありがと」


「王子役がこの子?」


「うん!体育祭が終わってすぐの頃に転校してきた瀬川(せがわ)洸輝(こうき)くん。ミスターコンの決勝にも残ってるんだよ」


「そういえば咲久(さく)のクラスは全員残ってたね」


「私は運がよかっただけだろうけどちょっと嬉しい。でも、真白(ましろ)も残ってたよね?」


「まあね。あと(かおる)も」


「副会長は出場しなかったんだね」


悠陽(ゆうひ)も出てほしいって言われてたんだけどじゃんけんで勝ったから俺と(かおる)が出ることになったんだ。そのときの悠陽(ゆうひ)の顔、今までに見たことがないぐらい嬉しそうな顔だった」


「じゃんけんで勝ったときの副会長の顔、なんか想像出来る」


「俺も思い出したらお腹痛くなってきた」


そう言って真白(ましろ)は無邪気に笑った。


真白(ましろ)の笑い方結構好き」


「どうしたの?急に」


「いや~なんかさ、いつもは大人っぽい感じなのに笑うと子供みたいで可愛いなって思って」


「それは喜んでいいの?」


「いいよ。好きなところなんだし」


「でも俺は、可愛いよりもかっこいいって思ってほしいな」


「そんなのいつも思ってるよ」


「ありがとう」



 それから、1週間後。文化祭当日。


「文化祭とかめっちゃ楽しみ!」


莉久(りく)が言った。


「うちのクラスは劇だから今日だけだけどね」


「劇って何するの?」


「眠り姫だよ。私は姫役だけど半分は寝てるだけだけどね。」


と言うと莉久(りく)が「確かに」と言って笑った。


「じゃあ私は先に行くね」


そう言って玄関を出た。



 学校についてすぐにリハーサルを行った。


「どうしよう。皆、緊張しすぎて台詞が棒読みになってる。」


と監督の子が言った。すると1人の生徒が大声をあげるとクラス皆その生徒に注目した。


「緊張しすぎだろ!今まで頑張ってきたんだから絶対に大丈夫だ!これまでの努力を信じろ!」


震えた声でそう言ったのは瀬川(せがわ)くんだった。きっとこの中で彼が1番緊張しているだろう。転校してすぐに文化祭の準備が始まってクラスの中に溶け込めていると言えどやっぱり全員にこうして話すのは緊張するだろう。


 きっと皆もそれを分かっていたから一生懸命緊張をほぐそうとしてくれた瀬川(せがわ)くんの言葉を受け止めてそれぞれ深呼吸をした。


瀬川(せがわ)くん、ありがとう。お陰で皆、緊張がほぐれたと思うよ」


と言うと瀬川(せがわ)くんは


「良かった」


と小さく呟いた。


 リハーサルが終わりしばらくして体育館はお客さんでいっぱいになった。


『まもなく1年2組による演劇“眠り姫”を開演します。どうぞ楽しんでいってください。』


『昔々、あるところに王様と王妃様がいました。2人には子供がまだいませんでしたが仲睦まじく暮らしていました。ですが数年後2人の間には可愛らしいお姫様が生まれ2人はターリアと名付けました。』


『ターリア姫の誕生を祝い7人の魔法使いがお城に招待され金の食器でもてなされました。しかし、そこには呼ばれていなかった魔女のお婆さんがいました。』


『慌てて支度をしましたが7人分しか用意されていなかったことを見て魔女は軽蔑されたと思いました。そして祝宴が終わり、魔法使い達がターリア姫にプレゼントを渡していきその魔女は報復としてあるものを渡しました。』


「ハッハッハ。15年後、この紡ぎ車の錘が指に刺さって死ぬだろう。」


『笑って魔女は去っていきました。まだプレゼントを渡していなかった魔法使いが言いました。』


「呪いを完全にとくことはできないが呪いを弱めることはできる。ターリア姫の運命の王子の口付けで姫は目覚めることが出来る」


『15年後、ターリア姫はとても美しく育った。』


「まあ、なんてきれいな花なのかしら。」


『ターリア姫が庭を散歩していると老婆に会いました』


「お婆さん、何をしているの?」


「糸を紡いでいるんだよ。嬢ちゃんもやるかい?」


「うん」


『そう言ってターリア姫が紡ぎ車に触れると呪いで指に錘が刺さってしまいました。近くにいた従者がすぐに王様と王妃様に伝えに行きました』


「ターリア!ああ、私の愛しの娘」


「やはりあの魔女の呪いは本当だったのか?」


『王様と王妃様はひどく傷付きお城に閉じ籠もりました。すると、1人の魔法使いがお城を訪ねてきました。』


「私はあの時の魔法使いです。ターリア姫は運命の王子の口付けで目を覚まします。ですから落ち込まないでください」


『そう言って魔法使いはお城を去ってしまいました。王様と王妃様はターリア姫をお城の隣の塔に移動させゆっくり休ませてあげることにしました。』


『数年後、お城の近くの森で異国の王子様が狩りをしていました。そして、王子様は少し休むためにターリア姫のいる塔に行きました。』


「なんだここは。茨だらけだ」


『王子様は茨を伐り進んでターリア姫の寝ている部屋に入りました。』


「なんということだ。こんなところに美しい姫が眠っているではないか」


『王子様が来たことに気付いた従者はすぐに王様と王妃様に伝えにいきました』


「あなた達は?」


「私はあの子の父親でこの国の王です。お願いです。あの子に口付けをしてください」


「どうしてですか?」


「あの子は今、悪い魔女の呪いにかけれられていて運命の王子の口付けがないと目覚めないからです」


「分かりました。私で良ければ」


そう言って王子(瀬川(せがわ)くん)が顔を近付けた。


『そう言って王子様はターリア姫に口付けを交わしました。』


ナレーションの声と同時に会場から悲鳴が聞こえた。


「ターリア!目が覚めてくれて良かったわ!」


「お母様」


「お前が目覚めるのをどれだけ待ち望んだことか」


「お父様。2人とも心配かけてごめんなさい。」


「目が覚めたようで良かったです」


「あなたは…?」


「私は隣の国の王子です」


「私はターリアといいます。」


「ターリア姫。出会ってすぐに私はあなたに恋に落ちました。私が魔女を倒すことが出来たら私と結婚してください」


「はい」


『王子様は森を探索し魔女を見つけ無事倒すことが出来ました』


「これからは私があなたを守ります。私と結婚してください」


「はい。喜んで」


『それからターリア姫と王子は沢山の家族に囲まれて幸せに暮らしました。』


 最後に皆で舞台に出て礼をすると割れるような大きな音の拍手が体育館全体に響いた。


 劇が終わり片付けをしていると真白(ましろ)と副会長が来た。


「すごく面白かった」


と副会長が珍しく素直に褒めてくれた。


「ありがとうございます。でも、内心緊張しすぎて全然覚えてないんです」


と言うと「意外だな」と言って笑った。


咲久(さく)、片付けが終わったら時間ある?」


真白(ましろ)が訊いた。


「片付けはほとんど終わったから大丈夫だけどこの後、莉久(りく)達と写真撮る予定なんだ。衣装、早く返さないとだし」


「その前にちょっとだけいい?」


「うん。 ごめん!ちょっと抜けていい?」


と訊くと


「もう片付けは大道具と小道具で出来るから大丈夫だよ」


とクラスの子が言った。


 なぜか今、体育館裏に来ている。そして、壁ドンをされている。


真白(ましろ)、どうしたの?」


「やっぱりフリだって分かっててもしんどいな。ごめん。俺、演技だって分かってるのにめちゃくちゃ嫉妬した。」


「なんで謝るの?」


「え、だって勝手に嫉妬してウザいでしょ?今も独り占めしたくて壁ドンしてるし」


「嫉妬するのはそんなにダメなの?それに私だっていっぱい嫉妬してるよ。それに、好きな人は独り占めしたいって思うのは普通じゃない?まあ、限度はあるかもだけど」


「そっか。そうだね」


「うん!私はちゃんと口に出してくれたの嬉しかったよ。こういうのって溜め込んじゃうとしんどいからこれからも言ってほしい」


「ありがとう」


そう言って真白(ましろ)は私のおでこにキスをした。


「じゃあ莉久(りく)ちゃん達のところ行こっか」


と言って私の手を引いて歩いた。


咲久姉(さくねえ)真白兄(ましろにい)!こっちだよ~」


と言って莉久(りく)が手を振った。私と真白(ましろ)は急いで行った。すると(あおい)が私の顔を見上げて


「あれ?咲久姉(さくねえ)なんか顔赤くない?」


と言った。


「え!あ~今走ったせいかな?」


と言うと


咲久(さく)はこんな少しの距離走っただけじゃ全然平気でしょ?」


真白(ましろ)が笑って言った。


真白(ましろ)の意地悪。そんなのだとモテなくなるよ」


「俺は咲久(さく)意外にモテなくてもいいよ」


と言って笑った。私が笑った顔が好きだって知ってて笑うなんて


「…ずるいよ」


「お~い!そこイチャイチャすんなよ」


(かける)が言った。


「イチャイチャなんか…」


「してただろ」


と私の言葉を遮って(はやて)が言った。


「仕方ないじゃん。付き合ってすぐに文化祭の準備が始まって忙しくて全然一緒にいられなかったんだから」


真白(ましろ)が言った。


「はいはい。取りあえず写真撮るんだろ?」


と言って蒼空(そら)がスマホで写真を撮った。


「ありがとう。後で送ってね」


と言うと蒼空(そら)は無言で頷いた。相変わらず外ではクールだな。


「じゃあ私はそろそろ衣装返してくるね」


と言って体育館に戻った。


 制服に着替えて真白(ましろ)との待ち合わせ場所に向かった。


「どこからまわる?」


「じゃあ真白(ましろ)のクラス見に行きたい」


「いいの?というか大丈夫?」


と言いつつ2年2組の教室に向かった。


「…お化け屋敷…?」


「無理に入らなくてもいいよ。結構本格的だから」


「怖そうだけど真白(ましろ)と一緒だったら大丈夫」


「じゃあ入ろっか」


と言って真白(ましろ)が手を引いて歩きだした。


 お化け屋敷の中は教室の姿など跡形もなく遊園地のお化け屋敷みたいだった。音楽も有名なホラー映画の曲を使っていて今にもお化けが襲ってきそうだ。


 すると、泣いている女性がいた。私は真白(ましろ)の腕にしがみついて恐る恐る訊いた。


「あ、あの。どうしたんですか?怪我したんですか?」


すると女性は振り返って


「私の顔、見ませんでしたか?」


と訊いた。


「み、見てません!」


と言って私は真白(ましろ)の後ろに隠れた。すると女性はどこかに行った。


 その後も次々とお化けが出てきてやっとの思いで外に出て屋上に向かった。


「怖かった~」


「そんなに怖がってくれると頑張った甲斐があったよ」


真白(ましろ)が言った。


「最初の女の人、お客さんだと思ったのにお化けですごく怖かった」


「実はあの演出考えたの俺なんだ」


そう言った私の彼氏はイタズラっぽく笑った。


「そうなの!?」


「うん。怖がって俺の後ろに隠れてるの可愛かったよ」


「どうせ子供っぽいって思ったんでしょ」


「そんなことないよ。それに、怖がりながらも泣いている人に声を掛けてあげる優しいところとか質問されてちゃんと答えてあげてるところとか好きだなって思ったよ。」


と言って真白(ましろ)は笑って頭を撫でた。さっきまでの体の震えはとまり今はつま先から顔まで全身が暑い。


咲久(さく)、照れてるの?赤くなってるよ」


と言って真白(ましろ)が顔を覗き込んだ。


「好きな人に好きって言われて照れない人いるの?」


「あ~、本当に可愛い。天使みたい」


真白(ましろ)が言ったから「へ!」と変な声を出してしまった。


「やばっ。声に出てた」


と言って真白(ましろ)は顔を手で覆った。


真白(ましろ)が照れてるの珍しい!ねえ、顔見せて!」


と言って真白(ましろ)の手をよけると抱きしめられた。


「今、咲久(さく)と目を合わせたら心臓止まっちゃいそうだからダメ」


「え~。ねえ、真白(ましろ)


「なに?」


「大好き。こんなに顔が緩んじゃうのは真白(ましろ)のことを考えてるときか一緒にいるときだけだよ」


「もう、キャパオーバーなんだけど…」


「そういえば明日ミスコンとミスターコンあるから今日ほどはまわれないと思うし今のうちに屋台いっぱいみてまわらない?」


「うん」


と言って真白(ましろ)は顔をあげた。


「顔赤いよ」


と言うと真白(ましろ)


咲久(さく)にはこんな余裕がない顔あんまり見られたくなかったんだけどな」


と言って真っ赤な顔で笑った。


「なんか今の真白(ましろ)を見てるとホントに真白(ましろ)と付き合ってるんだなって実感する」


「今までは実感してなかったの?」


「まあ、付き合ってからあんまり一緒にいられなかったから」


「確にね。じゃあ今日は帰るギリギリまで実感させてあげるからね」


と言って真白(ましろ)は手を繋いだ。


「次はどのクラスに行く?」


「じゃあー-」


 文化祭初日が終わった。


咲久(さく)、一緒に帰ろ」


真白(ましろ)が言った。


「でも、莉久(りく)達と帰ろうって言ってたんだけど…」


「そっか。じゃあ莉久(りく)ちゃん達と待ち合わせして一緒に帰ろうか」


 それから、莉久(りく)達と待ち合わせて8人で一緒に帰った。


 

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