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第三十八話 ミゲル=ゴルディオン

第三十八話 ミゲル=ゴルディオン


サイド剣崎 蒼太



 結局一睡もせず翌朝に。普通ならコンディションに不安の残る状態だろう。


 しかしそこはチート転生者。たかが一徹程度ではビクともしない。前世とは違うのだ。前世とは。


 ……懐かしいなぁ。入社一年目。任された在庫管理で、記録と実際の金額が合わないと焦ったものだ。あれ結局、先輩の入力忘れが原因だったのマジで恨んだからな。訂正。今も正直恨んでます。


 あれ?よく思い出したら、転生直前の時数字が合わなかったのも先輩が……そう言えば、あれの数カ月前に先輩が『後で入力しとく』と言っていた気が。けどその時の記録……後で入力するからを自分も先輩も忘れて……。


 やめよう。色々と負の感情が溢れてきた。


 徹夜を悟らせずに総一郎さん達に挨拶し、朝食に。それはそうと、住み込みで三食つきとか滅茶苦茶いいな……これで怪人とかわけわからんのが出なければなぁ……。


 そんなこんなで午前中に今日与えられた仕事は終えた。


「え!?も、もう終わったんか?」


「はい。念のため確認お願いします」


 驚きと若干の疑いの視線を向けてくる総一郎さん。まあ、その気持ちもわかる。


 本日与えられた仕事は、倉庫の整理。これだけ聞くと半日あれば終わりそうな内容だが、農家。それもこの島の場合はだいぶ事情が異なる。


 この島は昔こそ色々と人や物の循環が激しかったそうだが、今は別。数カ月に一回の定期便や、同じぐらいの頻度でやって来る大型トラックの運送。それぐらいしか外との取引がない。


 そういう理由もあり、『二か月後に肥料を三十袋撒きたいから、それぐらいに持って来て』と注文する事ができない。じゃあどうするかとなったら、でかい倉庫に保管しておくしかないのだ。それぞれの農家で。


 この倉庫は島にいる農家たちの共有物だが、区画ごとに誰それの家のと分けられている。ついでに言えば、農家を続けられる家も少なくなってきてだいぶスペースは空いていた。


 その倉庫で、総一郎さんの家の分を整理していたのだ。それと農薬も。


 だいぶ手入れをしていなかったようで、購入してから十年も経っている農薬まで見つかる始末。フォークリフトも少し前に壊れたらしいので、肥料を運ぶのは人力。パレットで運べない。


 これは、いかに力自慢の少年でも数日単位必要だろう。というか、最悪肥料に押しつぶされかねないから危険では?


 しかし、そう。自分はチート転生者。


 下手な重機よりもあるパワー。第六感覚による空間把握能力と勘の良さ。数日ぶっ通しで動いても倒れない体力。ついでに魔道具を少々。


 結果、午前中一杯で片づけは終了した。流石チート。


「こりゃ……たまげた……」


 午後の自由時間が確定した瞬間である。


 え、響の手伝い?いや、あっちは枝の剪定とか自分にはちょっとわからない領域なので。チートの範囲外です。


「そう言えば総一郎さん」


「お、おう。なんだ」


 小声で、『響が女だったら絶対に婿に来させたんだがなぁ』と恐ろしい事を呟いていた総一郎さんに、少し気の抜けた様子で問いかける。


 できるだけ、『ただの興味本位』と装って。


「例の赤毛の子。あの家は怪物の血が流れているとは?」


「ああ、それか」


 少し困ったような顔をした後、総一郎さんが頭を乱暴に掻く。


「……婆さんには、俺から聞いたって言うなよ?」


「はい、勿論です」


「昔。それこそまだお侍さんがいる時代の頃な、この島に化け物がよく出たらしい」


「化け物、ですか」


 咄嗟にアバドンが浮かんだが、別だろう。どちらかと言えば、蜘蛛怪人やサメ怪人を考えるべきか。


「なんでも、その化け物は海から来るらしくってな。島の若い女子を攫って行ったそうだ」


「そんな事が……」


「ま、嘘か本当かはわからねえがな。そして、この伝承には二つ別の話しがあんだよ」


「二つ?」


 首を傾げて尋ねれば、総一郎さんが神妙な表情で頷く。


「一つは、海原……あの赤毛の娘の家が、化け物と交渉して金と島の女子を交換していたって話しだ」


「……もう一つは?」


「さっきのとは逆さ。海原のご先祖が、旅の人から貰った刀で化け物共を追い払ったって話しさ」


 随分と両極端な話だ。片や裏切り。片や英雄。ここまで乖離する事があるか?


 というか、だ。


「あの、怪物の血というのは?」


「それがよう。こっちも二通りあんのよ」


 マジか。


「金目のもんと交換していたって話しじゃあ、海原の娘も化け物と結婚させられてその子孫が今もいるってぇ噂だ。そんで、追い払ったって話だと、化け物を倒すために自分も化け物になったって話しさ」


「なるほど」


 どちらにせよ、化け物とやらの血は赤毛の少女。海原家に流れていると。


「まあ、どう考えても作り話さ。大方、追い払った方の伝承は海原家が。悪い方の話は海原家を嫌う島民がって感じで作ったんだろうさ。あそこは元地主だから、恨まれる理由に事欠かねえもんよ。それを今も信じている奴が多いのなんの」


「なんというか……総一郎さんはドライですね」


「おう。おらぁよそもんだからな」


「よそもん?」


「俺はこの島が浮島……メガフロートっつうのか?あれで拡張された時に移住してきたんだよ。で、ここに婿入りしたのさ」


 あっけらかんと笑う総一郎さんに、内心マジかとなった。


 先ほどの『よそもん』という発言に違和感がなかった。彼は本心からそう思っているのである。数十年も住んでいて、まだ余所者扱いなのか。


 だが、それなら微妙に幸恵さんに頭が上がっていない空気なのも納得はいく。田舎って怖い。


 それはそれとして、『怪物の血』ねぇ……。


「なんというか、ありがとうございました。すみません突然」


「いいって事よ。昨日あんな風に話を遮られちまったら、気になるのが人の性ってやつさ。それより、お前さん姉か妹はいねえか?響は爺のひいき目を抜いても真面目で働きもんだから、いっちょ嫁にでも」


「前向きに検討したいと思います」


 そっと目を逸らした。人の事をガチの男の娘好きと勘違いする奴を、義弟にするのはちょっと……。



*      *           *



昼食をご馳走になり、総一郎さんの家を出ようと一声かけてから玄関に向かう。


「え、会長どちらに?」


 不思議そうな顔の響に、靴を履きながら振り返る。


「海原……あの赤毛の子に会いにな」


「ちょ、ダメですよ!今島には凶悪犯が」


「だからだよ」


 つま先を地面で叩き、履き心地を整える。


「あの子の家、島の人から敬遠されているだろう?凶悪犯とか、その辺の話を聞いてないかもしれない」


「そ、それは確かに……では、僕も行きます。お供させてください」


「いや、お前は家にいるべきだ」


「そんな!足手纏いにはなりません!」


「それも、『だから』だ」


 響は確かに隻腕ではある。小学生の頃交通事故に巻き込まれ、右腕の肘下から先を失ったらしい。


 だが、それでなおこいつは強い。


 中学時代、他校の不良に一年生が絡まれた事があった。それにこいつは乱入し、見事後輩達を助けたのだ。


 相手の数は九人。対してこいつは一人。いかにガタイがいいからと言って多勢に無勢。


 しかし、こいつは勝ってみせた。その辺にあった廃材を手に取ると、槍の様に振るいあっという間に九人とも殴り倒したのだ。


 なんでも、小さい頃から槍術を習っていたらしい。隻腕でなければ、あるいはどこぞの大会で賞とかとっていたかもしれない。


 なお、その後『他校生と喧嘩した』と糾弾されたこいつを庇うのは苦労した。なんで俺の在任中にもめ事起こすかなぁ……生徒会長的に、会員が問題起こしたら内申点が……いや、こいつが悪いわけじゃないんだけど。


「お前の腕っぷしは知っている。だから、総一郎さん達を守ってやれ。俺としても、いざという時駆け込む先がないのは困る」


 ……そういう気持ちもないではないが、本音としては『関わらせたくない』だがな。


 魔法関係は最悪、関わっただけで精神がイカレる時がある。なら、そういうのに関わりのない響を連れて行きたくはなかった。


「し、しかし」


「まあ、お前が俺の腕前を信用できないのはしょうがないがな。そう心配しないでくれ」


 中学時代、生徒会に所属しながら剣道部にも所属していた。しかし、自分は碌に試合をしていない。というのも、事故が怖かったのだ。


 今まで力加減を誤って誰かを怪我させた事はない。だが、百パーセント安全とも言えないのだ。万一自分がフルパワーを出してしまえば、竹刀でも人を一撃で殺すのは容易い。容易過ぎるのだ。


 結果、自分が剣道部で試合をしたのは片手の指で数えられるほど。当時はひたすら生徒会で忙しいと言い訳を重ねたものだ。


 そして、中学の知り合いが知る自分の最後の戦いはランスとの八百長。あえて無様に負けるという、かなり酷いものだった。これでは、響がこちらを心配するのも頷ける。


 さて、どう説得したものか。逃げ足の速さを押していくか?


「僕が!」


「うお」


 突然の大声に驚く。なにやら、何かを噛み締める様な。悲しんでいるような表情で響がこちらを見ていた。


 え、なに。どういう事?


「僕が、貴方を疑うはずなどありません……!会長の事は、僕が、僕たちが一番わかっています……!」


 人の性癖を完全に勘違いしている奴がなんか言ってる。


 いや、うん。まあ何とかなりそうだし、いいか。もうなんか面倒くさい。というか時間的に余裕がない。


 海原家に行った後、こっちは新垣さんに連絡を取る予定なのだ。正直時間がおしている。


「えっと、ありがとうな、響。信じてくれて」


「会長……」


「だから、安心してくれ。俺はちゃんと戻ってくる」


「……っ!?」


 玄関を開け、すぐに振りかえる。


「……ここにって意味だからな?変な風な曲解はするなよ?」


「はい。わかっております、会長!」


 不安だ。なんかわからんが不安だ。やけにキラキラとした目の響に、言いようのない不安を覚える。大丈夫?こいつまた変な誤解してない?あれ、俺がグウィンとデート(笑)している時にしていた目だよ?こっちはただ友達と遊んでいたつもりだったからね?


 とりあえず愛想笑いで誤魔化して、海原家へと向かう事にした。


 元々人の少ない島だが、今日は一段と少なく感じる。凶悪犯の噂が全体に広がったか。


 途中、井戸端会議をしているお婆さん方を見かけた。


「聞いた?山口さんが亡くなったって」


「そうそう松田さんと島村さんもでしょ?」


「なんでもこの前あった事故でって話よ?あれ、もしかして噂の指名手配犯の仕業じゃない?」


「可哀想に……島村さんなんて、お孫さんが産まれたばかりって話しなのにねぇ」


 ……そうか。


 聞こえてきた言葉に、強く頭を殴られたような衝撃を感じた。


 どうやら、無意識に目を逸らしていたらしい。あの時、人が死んでいたのを使い魔越しに確認していたのに。まるで、テレビの向こう側の様な感覚でいた。


 脳裏によぎるのは、東京駅で嘆き、叫び、家族の安否を叫んでいた人々。彼らは生きていたのだ。普通に生活し、家族だっていたはずだ。


 それが唐突に奪われる。理不尽に、残酷に。


 前世の両親も、もしかしたらそうなのかもしれない。自分が突然死んで、嘆いたのだろうか。現実を受け入れられたのだろうか。


 それは、あいにくとわからない。それを知る方法を、自分は焼いて捨てた。


 ……だから被害者や遺族の為に『命を懸けて犯人を殺す』とまでは思わない。そこまで自分は情に厚い人間ではないし、重ねて見るつもりもない。


 だが、かといって『はいそうですか』と割り切れるほど、薄情な人間でもないつもりだ。


 どこか害獣駆除程度に考えていた自分だったが、少し。ほんの少しだけ。


 今回の『犯人』とやらに殺意がわいた。


「スミマセン、今、イイデスカ?」


 そんな事を考えながら歩いていると、先ほどのお婆さん達に話しかける人影が一つ。


 その人物は中々に特徴的な容貌だった。


 かなり癖の強い、天パの金髪。冬だというのにサングラス。目の色はわからないが、髪と肌からして白人男性。服装は着崩したスーツ姿。なんとなくホストっぽい。


 そして、左手には杖が握られている。英国紳士が持っているようなタイプではなく、医療用の杖だ。


 咄嗟に物陰へと隠れて、彼らの様子を窺う。お婆さん達も突然話しかけられて随分驚いていたようだ。


「え、なにかしら……」


「外国の人……?」


 困惑した様子のお婆さん達に、男はニコニコと喋りかける。


「コノ島デ、怪物ヲ見タッテ噂、聞キマシタ。オ話シ、イイデスカ?」


 かなり片言の喋り方。外国の人なら、それでも流暢な方だろう。


「怪物?海原さんの」


「ちょっと!」


「そもそも貴方誰ですか?島の人じゃないでしょう」


「アア、スミマセン。私、ジャーナリスト、シテマス」


 そう言いながら、男が名刺らしき物をお婆さん達に渡している。


「ミゲル=ゴルディオンさん?」


「ハイ。オ話シ、イイデスカ?」


「……すみません、私畑いかなきゃ」


「私も洗濯物が」


「買い物にいかないと」


 そう言って、そそくさとお婆さん達がその場から去っていくのを、男、ミゲルはニコニコとしたまま見送っていた。


「少し、いいですか?」


「ハイ?」


 その背中に声をかけると、相変わらずの笑顔で彼が振り向く。


「質問したいのですが」


「ナンデショウ?質問、答エタラ、コチラノ質問ニ答エ、クレマスカ?」


「内容によります」


 五歩、離れた状態で立ち止まる。


「その体、『盗んだ物』ではありませんよね?」


 そう問いかければ、ミゲルは黙ってサングラス越しにこちらを観察してきた。口元は笑みを浮べたまま、微動だにしない。


「スミマセン。日本語、ヨクワカッテナイ、デス。私、アメリカ人デスカラ。英語トノ、違イ、ヨクワカッテナイ、デス」


「知っていますか?英語圏の人は『アア』を日本人の様には使わないんですよ」


 まあ、意外と使う人いるかもしれないけど。そこは今どうでもいい。


 なんせ、一目見た段階で確信があった。魔力の流れがおかしい。第六感覚が小さいが警告を出している。


 間違いない。『これ』は人ではない。


「人の体と言語に慣れていないから、外国人設定と杖ですか」


「……貴方。誰、デスカ?」


 そう問いかけながらも、ミゲルから危機感の類は感じ取れない。余裕の態度だ。何か隠し玉でもあるのか。あるいは。


「先に、こちらの質問に答えてもらえませんか?」


 たかが人間ごときとでもなめているのか?


 魔力を少しだけ溢れさせて、右手の指輪をいつでも起動できるように構える。おかしな真似をすれば、すぐさま首を刎ねられるように。


 こちらの魔力に反応したか、ミゲルが笑みを止め一度ポカンと口を半開きにした後、無表情に首を垂れてきた。右手も胸にあてられ、姿勢も少し歪だが整えようとしている。


「失礼シマシタ。御身ヲ前ニ、無礼ヲ」


「質問に、答えてください」


「ハッ。『契約』ニヨリ、体ノ持チ主カラ、借リテイル物デス。書類ヲ、オ見セシマスカ?」


 先ほどまでとは打って変わって、強い敬意を感じる態度。何というか、少し拍子抜けした。嘘もついている様子もない。考えすぎか。


 というか、そうなるとかなり失礼な態度をしてしまったのは自分だな。人外相手であれ、敵ではないならあの態度はまずい。


「申し訳ありません。失礼な事を聞いてしまいました」


 そう言って頭を下げると、ガバリとミゲルが頭をあげる。


「イイエ!御身ニ非ナド。ドウカ、貌ヲアゲテクダサイ」


「では、失礼して」


 ゆっくりと顔を上げて、ミゲルと相対する。


 こうして近距離で見れば、サングラス越しに奴の目が少しだけ確認できる。焦点の定まっていない、少し不気味な目だ。


「それで、貴方は誰、という質問への答えですが」


「イイエ、モウ、ワカリマシタ。アリガトウゴザイマス」


「そうですか」


 しばしの沈黙の後、ミゲルが腕時計に目を向ける。


「申シ訳アリマセン。私、時間ガ」


「ああ、これは失礼しました。お引止めしてすみません」


 そう言うと、ミゲルがもう一度深く頭を下げてから杖をせわしなく動かして歩いて行く。向かう先は、道沿いではなくそこを外れて雑木林の中に。


 目で追っていると、忽然とその姿が消え失せた。魔法……ではない。何か別の物か。


 小さくため息をついて、足を海原家へと向ける。どうやら、思った以上にこの島は面倒な事になっているらしい。



*     *      *



サイド 新垣 巧



「新垣さん」


「ああ」


 雑木林の中を歩きながら、細川くんの言葉に頷く。


 スーツではなく戦闘も想定した装備で来た場所は、昨夜内田くんが襲われたという場所のすぐ近く。


 あの時、向かう途中で微かにだが燃えている何かが空を飛んでいるのを見た。もっとも、燃えていた箇所は途中で千切れたようだが。


 雑木林に残された黒い血痕の様な物や、落ちていた炭化している物体。それらを頼りに追いながら、魔術を使って蝙蝠怪人について他にも情報がないか。


 蜘蛛怪人に蝙蝠怪人。共通しているのは、『動物を模した異形』。そして『灰色の肌と黒い血の様な物』だ。短期間に連続してこの島に現れた状況から、無関係とは思えない。


 であれば、何かしら集団。あるいは組織が裏にいると考えるべきだ。うちの業界だと、これで『個人でやってます』なんてぶっ飛んだ輩もいたりするが。


 とにかく、何か手掛かりが欲しいと痕跡を追っていたのだ。あわよくば拠点でも知る事が出来ればと。


 そう、追って『いた』。


「完全に途切れています。これは……」


「……転移系の何かをしたと、考えるべきだろうね」


 一切の痕跡が途絶えている。雑木林の中、ぷっつりとだ。


 自分達にこの島の土地勘はない。だが、これでも数十年この業界で生き抜いてきた身だ。追跡や目星をつける事に自信はある。


 その上で、この状況に『蝙蝠怪人は突然消え失せた』と判断している。


『転移』


 人が使うには、あまりにも高度な技術。物理化学的にはテレポーテーションは実用化されていないし、魔術的に見てもあのサイズを転移させるのはかなりの技術と手間が必要だ。というか、時空間に関わる魔術の段階でタブー視されている。特に『時間関係』。


「うーん……よし。一端帰ろうか。焔さんから何か来ているかもしれないしね」


 不敵な笑みを浮べて切り替える。


 よくある事だ、この業界だと。


 人の手に余る技術?むしろ人の手で容易く事が済んだ事件の方が少ない。それでもどうにかしてきたのが我々だ。


 人を襲う謎の怪人達。その黒幕。謎の転移技術。それらと戦うサメ怪人に、最近発生した漁師の行方不明。


どうやらこの島、思った以上に面倒な事になっていそうだな……。


 この島に来て何度目か。吐き出しそうになるため息を飲み下し、不敵な笑みを浮べ続けた。




読んでいただきありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。今後ともよろしくお願いいたします。


Q.新垣はプロフェッショナルなのに剣崎相手にビビリ過ぎじゃない?内心ぐらい探れるだろう。

A.新垣はあえて剣崎の内心を観察眼で直接読み取らないようにしています。『高位の魔術師』や『神話生物』の内心を察してしまうとそれだけで発狂してしまう場合があるので。


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― 新着の感想 ―
[一言] グウィンくんが3人目のヒロインなのだろうか
[一言] 時間関係はクラッシャー斎藤の領域ですもんね。まともならそもそも魔術に手を出さないけど。
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