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第百十九話 新城明里の絶許ポイント

第百十九話 新城明里の絶許ポイント


サイド 新城 明里



「ハッハー!」


 至近距離で金ぴか目玉にショットガン!相手は死ぬ!


 この研究所の人工衛星発射場は北棟から見る事ができる。そこで制御装置をどうにかするか、あるいはそこからロケットを狙撃するか。


「そっげき狙撃!そーげーきー!」


 ロケットの発射操作とか、流石のパーフェクト美少女も専門外である。


 佐藤?あんなクソは知らん。いや、マジで彼もロケットの操作までは知らんらしい。はー、つっかえ。関ケ原にでも帰れ落ち武者頭。


 なーんか知らんがアレは嫌いだ。理由は特にない。強いて言うなら生理的に受け付けない。


 軽快に走りながら、角から跳び出して来たニードリヒの眼球にショットガン。相手が反応するより先に絶命させる。


 私はスーパーギャラクシーオーバーパーフェクト美少女であるが、同時に非力でか弱い薄幸の美少女でもある。美人薄命とならないか心配なほどだ。


 そんな私だが、ここ半年ほどやけに『勘がいい』のだ。ついでに視力も。


 どーう考えてもクリスマス頃に私に部分憑依していたらしい邪神のせいである。たしか、『バタフライ伊藤』だったか?


 まったく。たかが神ごときが私のキューティーおめめをハックするとか何様なのか。こちとら今世紀どころか宇宙誕生以来最高の美少女様ぞ?


 はー……それで私が強化されているのが微妙に気に食わないのだが、まあ邪神でも私という美少女に貢ぎたかったのだろうと許してやろう。


 それはそれとして、だ。


「そぉい!」


 正面からやってくる集団が触手を放ってきたのでローリング回避しながら手榴弾をシュート!爆☆散!くぅー!


 うん。やっぱこういうの大好きである。非日常たーのしー!


 爆発で転んだ奴らを次々と撃ち殺す。この距離、この状況で外す様な鍛え方はしていない。


 そう、私はこういう状況がウェルカムな質なのだ。毎週こんな感じでも楽しめる自信がある。それで死んでも……まあ無念ではあるが、それはそれとしてしょうがないかと諦めもつく。


 それぐらいの覚悟決めて楽しんでいるというのに、大変不快な事があるのだ。そのせいで心の底から楽しめない。


「美国!」


 後ろで私に続きながら、おっかけの如くぞろぞろしているニードリヒ達を迎撃している美国に声をかける。眼前には長い階段が。


 私の相棒から貰った頼れるサブウェポンである。メイン?私自身ですが、なにか?


 とにかくそんな頼れる武装たる美国も一言で意図を理解したのか、こちらの腰を抱えて跳躍。階段を一足で跳び越えた。


 空中で体を捻りリュックから取り出したC4をぽーい。天井もろとも階段をエキサイティング!


「うーん。70点」


 やっぱり心から楽しめない。そのせいで心躍る爆音も微妙な採点に。


 別に、ニードリヒ達が元人間だとか。一般人を巻き込みやがってだとかは、そこまで気にしていない。不愉快ではあるが、まあどのみち犯人はしばくので知らん。被害者も他人ばかりだし。


 だが、この私『新城明里』には許せないものが三つある。


「おっと」


 眼前から追加で三体。先制で私が発砲。次に美国。速攻で二体を沈黙させる。


 さて、なんだったか。そうそう、許せないものの話しだ。


 一つ目。『私が認めた相手以外が私を見下した時』だ。このプァァァァァフェクト美少女たる私を一方的に下に見るとか、神でもちょっと許さないぞ?


『アアアア!』


 残った一体が触手を伸ばしてきたので美国のかげに。盾で受け止めた所に、その背中を駆けあがる様にして跳躍。


 不意をつけたようで馬鹿みたいに上を向いたニードリヒの顔面に散弾をどーん。まあ至近距離なので弾が広がる前に全部眼球に吸い込まれたのだが。


 仰け反って倒れたその個体の上に着地。うーん、我ながらナイスフォーム。


 二つ目。『私の家族を傷つけるもの』。残念ながら生きている家族はお父さんだけになってしまったが、亡くなったお母さんと叔母も範囲内だ。この三人を傷つける奴は問答無用で落とし前をつけさせる。


「あれまあ」


 更に前方から五体。いやぁ。もしかして通常のニードリヒは全部こっちに来てます?


 とりあえず美国が前に出ながら眼球を撃ち抜き、残り二体。だがそこで四本の触手が美国に絡みつきその動きを封じる。


「私の使い魔が触手プレイを!?」


 やめなさいR18になってしまう!クリーチャーとロボットとかどこに需要があるんですか!


 美国のメタルボディに夢中なニードリヒ達に触手と壁の隙間を通り過ぎる様に接近。続けざまに二発。手前の一体を始末する。


 だがそこでショットガンは弾切れ。残りの一体が右手を振りかぶって来た。


 砲弾かと言いたくなる勢いで突っ込んでくる右手を先読みして首を仰け反らせて回避。左手で引き抜いたハンドガンで眼球に三発。


 あ、だめだわ。ハンドガンだと目つぶしぐらいしかできぬぇ。つっら。


 まあ触手が減ったら美国が横からブッパするのだが。ナイスショット。


 さて、三つ目なわけだが。今回はこれが問題なんだよなぁ……。


 ショットガンを投げ捨て、右手にハンドガン。そして左手に蒼太さんから借りたヒートガンを装備。二丁拳銃である。


 当然私の細腕では碌に使いこなせないのだが、そこはそれ。


「すぅー……よしっ!」


 リミッターを解除。これでしばらくは片手でも撃てるだろう。後で骨やら筋肉がイカレルだろうが蒼太さんに治してもらうとしよう。


 そう、蒼太さんなんだよなぁ。


「『私の相棒を泣かせるな』」


 そう言いながら、ダクトから跳び出して来た奴にヒートガン。


 彼らに対してだと八つ当たりも甚だしいのだが、手近にいて襲ってきたのが悪い。


 剣崎蒼太さん。私の相棒である。その彼を勝手に泣かせるとは何事か。私以外が泣かせるとか絶許ですよ絶許。


 正直罪悪感もあるのだ。ここに彼を呼んだのは私だし。


「よっと」


 背負っていたリュックからラジコンを取り出す。パトカーがモデルで小さいリモコンで動くやつ。障害物にぶつかりかけると勝手に曲がる高いのだ。


 なんか警備室漁ったらリボン付きの箱に入っていたので拝借した。どうもニードリヒは光と魔力に反応するらしいので、利用させてもらうとしよう。


 ナイフで指先を切りつけて血を一滴、ラジコンへと垂らす。流れるさいに魔力を多少込めておいたので少しなら奴らを引き寄せられるだろう。


「いってこーい」


 ガムテープで張り付けた小さいリモコンのスイッチを入れて発進させる。どこまで効果があるかわからないが、やらないよりはマシだ。


 さて、話は戻るのだが、蒼太さんが泣いているのは本人のせいもある。まあ、彼の落ち度なんてほんの少しなのだが。


極端な話し彼にここで戦う『義務』はないのだ。十二月と違い逃げても死なないし。だから自分からこうして泣きながら戦う状況に陥っている。マゾかな?


 日本中にアバドン細胞がばら撒かれる?あの世とこの世の境界?


 そんなものは彼にとって大した害ではないだろう。周辺の被害を気にしなければニードリヒの百や二百敵ではないだろうし、怪異が増えた所でだからなに、という話だ。蒼太さんを武力でどうにかしようと思ったら、それこそ使徒クラスの戦力がいる。もしくは巡航ミサイルをしこたまぶち込むか。


 固有異能だっけ?使徒だとしてもアレが無ければ万全な彼を殺めるのは難しい。


 で、だ。そんなわけで極端な話し蒼太さんに戦う義務はない。


 ならどうして彼は命を懸けて戦い、泣きじゃくりながら立ち上がるのか。


 無辜の民を守るため剣をとる英雄なのか?はたまたこの世全ての命を慈しむ聖人だとでも?


 そんなわけがない。彼は『善良な人間』だ。どこにでもいそうな優しいだけの凡人だ。能力なんて関係ない。


 ただ単に、目の前で危ない人がいれば助けようとするし、大切な人達の為に泣きながら走るのだ。


 目の前で平凡な日々を過ごす人たちを害されたから怒った。アバドン細胞がばら撒かれたら家族や友人が危ないから焦った。本当にそれだけなのだ。


 だからこそ、私は彼を『相棒』とした。


 まあ、私よりも『今はまだ』美しい容姿や、『まだ追いついていないだけで』私より高い戦闘能力も加点要素ではあったが、本質的にはそこだ。


 自分が他とは『ズレている』自覚はある。だからこそ、私と一緒に歩ける『常人』が欲しかったのかもしれない。あいにく、家にも学校にも普通の人はいなかったし。誰も彼も『覚悟』か『立場』をもっていた。


 あれだけの力を持って常人の心を持っているのはある意味すごいとは思うけど……たぶん、高潔な精神とかそういうのではない。おおかた、転生する時にでも邪神の力を知ってしまい、伸びるはずだった天狗の鼻がぽっきり逝ってしまったのだろう。


 それでも私は彼に敬意をはらおう。超人であり凡人である彼の歩みが、ちょっとだけ格好いいと思ってしまったゆえに。


 なにはともあれ、彼は私の相棒だ。それは誰だろうと覆させない事実である。たとえ本人が『わかれよう』とぬかして来たらガン泣きして鉛弾撃ち込んでやる。


 その相棒が泣いているのだ。そのせいで私は心の底からこの状況を楽しめない。これはよくない。せっかくのイベントだというのに。


 だから、さっさと終わらせてしまおう。そして憂さ晴らし兼お詫びとして蒼太さんをからかうとしようじゃないか。


 こういう非日常も面白いが、彼と遊ぶのは悪くない。


「さー、しまっていこーう!」


 二丁拳銃というテンション爆上がり間違いなしスタイルにて、新城明里。参ります!




読んでいただきありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。今後ともよろしくお願いいたします。


新城明里の好感度高い順


父親

 唯一の肉親。中々帰ってこないのは少し寂しい。

母親

 自分と同じくパーフェクト美少女だったらしい。

叔母

 母親の妹さん。会った事はないが、尊敬できる人なのだと直感している。

剣崎

 相棒!

学校の友達

 今時珍しいテンプレお嬢様。明里唯一の友人。

「おーほっほ!明里さん。今日こそ貴女を超えますわ!」と頻繁に勝負をしては返り討ちに。メンタルは明里が若干有利。他の能力値は総合で見て五分ぐらいなもよう。それでも勝負運で毎回僅差で明里が勝つ。

 相手にとっても生涯のライバル認定されているので、数年来の付き合いなのに出会って半年の剣崎に好感度で抜かれたらハンカチを食いちぎってそっちにも勝負を挑むかもしれない。

 なお、こいつまで出すと話しが『明里と愉快な仲間たち』となりかねないので絶対にメインでは出さない。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 覚悟きまってるなー。 お父さんは胃を痛めているよ(実話) [一言] 他のヒロインと違って、横並びに立って歩いてくれるのはパーフェクト美少女だけだろうな。
[良い点] ヒロインが主人公の事をちゃんと常人と理解してくれている。 [気になる点] ヒロインが声かけなかったらこのイベント起きなかったけどそうしたらバタフライさんどうしたんだろう
[一言] 主人公以外は皆楽しそうか覚悟決まってる奴らばっかりだなぁ。
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