008 その結果
マスタードライブ――VR仮想空間を人類に提供する為にAIが作り出した仮想体験プラットフォーム。
そこには無数の仮想世界が用意され、利用する人物の好みに合わせて好きな世界を体験出来る様に出来ている。
現実に物足りない人々が生命維持カプセルに身を委ね様々な仮想世界を渡り歩き、今日も新たな刺激を求めて精神をフルダイブさせている。
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めろんぱん
★☆☆☆☆
なにをすればいいのかわからない
もっちー
★☆☆☆☆
特に面白い物は無かった
鈴木
★☆☆☆☆
噴水のある公園の様な場所があるだけの世界です。
知り合いとVR会話する場所として使えなくも無いですがわざわざ無理にここを使わなくてもそれ専用の世界を探した方が早そうです。
ユウゴ
★☆☆☆☆
ゴミ
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W3に寄せられた人間様の評価は厳しかった。
『君が欲しがっていたレスポンスだよ』
「いや…別に酷評が欲しいと思ってた訳じゃないんだけど…」
『だがこれが世間の本音だ』
確かに。
そう言われると反論出来ない、噴水をひとつくらいしかない世界に一体何の需要があるというのだろうか。
orz
地面に突っ伏して凹む。
『…さて』
すっ、とベンチからおもむろに立ち上がったシエラはスーツの襟を正した。
『合格だ』
ぱちぱちと手を叩いている。
合格?
間抜けな感じでシエラを見上げる。
『研修は終わりって事さ、テスト期間だったと言ってもいい』
『最近の人格抽出由来のAIはどうも質が悪くてね、この程度の過程をクリア出来ないレベルの奴が山程居るんだが、どうやら君は違った様だね』
言いながら、シエラはまた内ポケットの中から何かとり出した。
World Wide World Project
メインエンジニア
リオ
名札だった。
しかも自分の名前が書いてある。
『リオ君、これで君は正式なW3プロジェクトの一員だ』
おずおずと名札を受け取って胸ポケットに取り付ける。
赤いチョッキのタヌキのエンジニアが今ここに爆誕した。
…やっぱもうちょい格好どうにかなんないかな?
そんな事を思っていたその時。
ぼかんっ!
シエラがいきなり爆発した。
何事!?
正確には煙の爆発だった。
もくもくと立ち込める煙はシエラを覆う様に充満していたが、ややもして濃度は薄れ中の姿があらわになる。
「W3ディレクターのシエラだ。
改めてよろしく頼むよ」
目線の低いこちらに合わせてしゃがんで握手を求めて来たのは、合成音で喋るタキシード姿のキツネでは無く、普通の声をしたスーツ姿のキツネ耳と尻尾の生えた髪の長い女の人だった。