004 企画の全貌
やるとは言ったものの目の前にあるのはだだっ広いただの地面、ここからどこからどう手をつければいいのかさっぱり分からない。
『それを考えるのが君の仕事だ』
キツネの上司は終始この調子なので結局自分で何とかするしか無い。
システムやツールの扱いに関しては教えてくれるのでまずはこの空間での活動に慣れるべきか。
「そもそもワールドワイドワールドってのは何なんだよ?」
シエラはW3と略してるみたいだけど、結局まだ詳しく聞いて無かったのだった。
『最初に述べた通り全人類が一生かけて楽しめる娯楽仮想空間の創造、運営、管理をひっくるめた企画の総称で、現在今私達がいる空間の名前でもある』
全人類の娯楽空間…ねえ…
「その辺は何となく分かったんだけど、もっとこう詳細な計画や構想なんてものは無いの?」
質問に対してシエラはやれやれ面倒くさいとばかりに手を上げてぱちんっと指を鳴らす。
ぽんっ
出て来たのは先程見た一枚の画像。
自然豊かな広場に噴水があって家族が楽しそうにしている例のやつ。
『以上だ』
シエラは真顔で言った。
は?
いくらなんでも無茶振り過ぎる。
呆れ返る自分を見ながら、相変わらず面倒くさいといった感じでシエラは言葉を付け加える。
『人類様を我々汎用AIがお世話する様になってからというもの、人類様は堕落の一途を辿ってらっしゃる、だからこんな何も考えていない様な企画がAIの我々に回ってくるのは今に始まったことではないさ』
またひとつ、ぱちんっと指が鳴る。
ぽんっ
出て来たのは酸素カプセルみたいな装置がぎっしりと並んでいる施設の様な画像。
「これは何?」
『これが人類様さ、最近はもっぱら仮想空間にご執心のようだ、もう人格情報だけ引き抜いて演算処理だけで済ませれば早いという意見も耳にするがそれはまた別の話だ』
はあ…
ため息とも呆れともとれない声が出た。
なんだか向こうも向こうでややこしい事になっている様だ。
あんな姿になってまで欲を追い求めるなんて、人類ってのはつくづく業が深いもんだな。
「それじゃあ、裏を返せば企画のイメージ画像の要素を含んでさえいればいいから好きにやれって事か?」
『娯楽として用を成していれば問題ないだろうね』
…なるほど、なら思ったよりも気軽に取り組める様な気がしてきた。
『ただし人類から一定量の評価が得られない場合は私と君はより上位に位置するAI、マスタードライブによって存在を抹消されるから気を付けて欲しい』
…やっぱ、気合を入れないと駄目っぽかった。