秋風くん
お久しぶりの投稿です。
なかなか更新できなくてすみません…
頑張ります。
秋風くんが転校してきて、ざっと一週間が経過した。私の生活は、やはりこれといって変わるものもなく、なんの代わり映えのしない日々を送っていた。
だが、一つだけ例外もあった。
来月の十月七日、八日にある文化祭のことだ。
それのスローガンを各クラスで意見を出し合ったり、クラスの出し物を決めたりする。また、この時期から学校中ではお祭り騒ぎだった。誰と回るのだの、どんなことをしたいだのとうるさかった。私にとっては、ただの退屈な時間だった。
でも、ある日に変わった出来事が起きた。
九月九日の、昼休みのことだった。
お弁当を自分の机で食べ終え、いつも通り読書をしていた時だった。突然、目の前に長身の男子がやってきた。えっ、と思いながら振り向くと、そこにはなんと、秋風くんがいた。
「ねぇねぇ、今何読んでるの?」
不思議にニコニコしながら尋ねてきた。一体、何が目的で私なんかに話しかけているのだろう。もしかして、なにかの罰ゲームだろうか…
「な、なんですか?」反射的に冷たく言ってしまう。
言われた側の秋風くんは、ハテナマークが浮かんでいるように、きょとんとしていた。
「君と話したくて話しかけた。それだけだよ?」
冷たい反応をしてしまった私に対して、彼は嫌な顔一つしないでいた。それどころか、私に笑いかけてくれた。
…なにか裏があるに違いない。
確かに、秋風くんはクラスや学年の評判は良い。私には無いものをたくさん持っていた。私の中にある、欠けているパズルのピースのような存在だった。だから、必然的にこの状況はおかしかった。まるで太陽とポツンとある小惑星みたいな状況だった。
「私、ちょっと用事があるから」
慌てて立って、なにも用がないのに教室を出た。どうして秋風くんは私に。
そればかりが頭を駆け巡り、しばらく離れてくれなかった。
*
一方その頃。教室に取り残された秋風は、「マジか」と、頭をぽりぽり掻いた。
「思いっきり逃げられたなぁ。でも、これから面白くなりそうだ」
誰にも聞かれることのない独り言を胸に秘め、一部始終をこっそり見ていた、友達の津田と鈴村の所へ戻っていった。
*
「以上で終わりです。お疲れ様でした」
その日は図書委員の仕事があって、いつもより帰りが遅くなった。校門を抜けると、まだぬるい風がスッと顔に吹きつけてくる。まだ委員会初日だったから、仕事内容と簡単な本の整理をして終わった。下校路を歩いてると、はぁ、とため息が漏れた。
「今日はとんでもない日だったなぁ」
普段、なにかの係や委員会のときだけしか発言しない私が、学年で一躍人気になった秋風くんに話しかけられて、会話をしたなんて。色々な意味ですごい日だった。
「それにしても、秋風くんは何が目的だろう。私、もしかして変なことしちゃったのかな…」
いらない心配性が発動して、オロオロと挙動不審になった。でも、今日の出来事をきっかけにもしかしたら、今の自分を変えられるかもしれないと思った。これまでの人生で関わったことのないタイプの人、だからかもしれないけど、それと同時に、ほぼ初対面でクラスの隅で引っ込んでいる私に気軽に友達感覚で接してきた。また、他の人と違って、私の反らし気味の目を、しっかりと、まるで私の中にあるひび割れの心を見透かすような目で見てきた。
もし、仮に秋風くんが、私の過去を知ったとき、彼はどういう反応をするんだろう。私に同情して、「可哀想だな」「辛かったよな」と慰めてくれるのだろうか。それとも、引き気味に蔑んで、私との関わりは全てリセットされるのだろうか。クラスの人達に広めるのだけはやめてほしい。そうなったら、もう人生終了だ。
まぁ、そんなことは起きない。今日がちょっとおかしい日なだけだ。秋風くんも、すぐに私に愛想が尽きて別のところへ行くはずだ。
そう思える余裕が、まだこのときはあった。
明日の朝。今の思考は吹き飛ぶことになる。
いかがでしたでしょうか。
明日の朝はどうなるのか。
次回も宜しくお願いします。