主人公はなんでも分かる。かも知れない。
ほのぼのファンタジーから少し外れたかも。
「さて、状況を整理しよう」
俺たちが今いるのはプラメラの中でもかなりマイナーな喫茶店だ。何故そんなとこを選んだのか。
それを説明するには、少し時間を巻き戻る必要がある。
俺とリエルはフレイを探している途中に何処かへ飛び立つ赤い流星を見た。
俺とリエルだけではなく、王の話を聞いていた国民全員がそれが何かはわかっただろう。
あぁ、あれが王の言っていた流星だろうと。
そのあとしばらくしてフレイが王城の上から降りてきた。
その時のフレイは顔面蒼白だった。
フレイに話を聞く為、俺たちはこのカフェにいる。
ちなみにこのカフェを選んだのは、あのあと国中の警備が厳しくなり、あまりゆっくり話せなかったからだ。
「取り敢えず、フレイに怪我がなくて良かった」
「うん」
「何があったの?あいつはなんて言ってた?」
「今回は偵察だからこの街には何もしないって」
「偵察、か」
「なぁゼクス、結局あいつは何者なんだ?空から卵で落ちてきた時点で絶対まともじゃないとは思ってたが……」
まぁ背中から羽が生えてる時点でなんかもう人間じゃないことはわかるよな。
「あいつが何なのかは分からない、だから情報が必要なんだ」
「とは言っても、何処から情報を入手するんだ?詳しいことを知っていそうなのはこの国の王くらいだろ?」
「あぁそうだ、だから聞きに行こう」
「だから聞きに行くって……何処へ…………まさかお前!」
「その通り、この国の王のところにだ!」
そう言ってゼクスが取り出したのは一枚の紙切れ。
それは王城に入るための許可証だった。
ほんとこいつ何者?
〜王城〜
「よく来たな、わしがこの国の王 マナフレア リーファンである」
「この度は誠にありがとうございます」
「いや良い、わしもお主らに話を聞きたかった」
そう言って王様は俺たちをゆっくりと品定めするように見た。
ちなみに王様との会話は基本的にゼクスがする。
ここの王様とは、騎士団時代に一度会ったことがあるらしい。
王様も俺たちに聞きたいことがあるようだが、なんかやったっけ俺達?
「お主ら、奴と街を散策しとったな?」
「この場合、奴というのは聞くまでもないですね?」
「左様、あの漆黒の翼を持つ悪魔じゃ」
悪魔?アイツが?
「お主らは奴が何者か知っておったのか?」
「いえ、森で遭遇しそのまま街に来ました。私達は先ほど初めてこの国の伝承を聞きました」
「あの〜、ところで何で俺達がアイツと一緒だったのを知ってるんですか?」
俺はつい気になったことを聞いてみる。
すると代わりにゼクスが答えた。
「王の固有魔法である[ゼウスマナ]だ、この街全体に王の魔力が少しずつ漂わせてあって、王はそこから街全体の様子を把握できるんだ」
「へぇー」
内心めっちゃびっくりだ。
この街はそこそこな広さがある、街全体に魔力を回すなんてとんでもない魔力だ。
少なくとも最高位の魔導士30人は必要なはず。
「マナフレア様、私からも質問よろしいでしょうか?」
「うむ、申すが良い」
「ありがとうございます、ではこの国の伝承を教えてはいただけないでしょうか?俺たちはアイツを調べたいと思っています」
「………」
王様は少しの間沈黙した。
俺は何となく、次に王様が言うセリフを予想できた。
「ならん!」
「!!」
「すまぬが、お主らに教えることはできぬ」
「何故か、聞いてもよろしいですか?」
「アレ関われば厄災に見舞われる、お主達のためにもやめておいた方が良かろう」
何となく予想はついていたけど。
厄災、か
「あの〜王様俺も一ついいですか?」
「レン!」
「何だ?」
「さっき厄災に見舞われるとか言ってましたけど何でわかるんです?」
「………我の魔法の力だ」
その微妙な間は何だよ!バレバレなんだよ!
嘘が下手くそな味方とか王様ってファンタジー世界の定番だよな!
「へぇー凄いですね、何でもわかるんですか?じゃあ厄災の内容は何です?」
「それは言えん」
「レン、もういいだろ」
「そうだな、これ以上は時間の無駄だ!」
「「「「!!!」」」」
どうやら王様はなんか隠してるっぽいし、ここにいてももう何も得るものはないと思う。
ならさっさと帰るのが一番だ!
「帰ろうぜ!」
「馬鹿かお前は!王様の前でなんて態度だよ!」
「いいだろ別に、もうこの国からは出るんだから」
「は?何言ってんだよ?」
珍しくゼクスが慌てた顔をしている。
なんか笑えるな。
「俺たちが調べるのは俺たちの前に現れたアイツについてだ、この国の伝承なんて知らなくたっていいだろ」
「少なくとも厄災については知っとくべきだろ!」
「何だゼクス、お前もうそんな心配してんのか?」
「当たり前だろ!なんかあったら……」
全く、いつからこいつはこんな慎重になったんだ?
「俺を誰だと思ってる?国最強と言われたギルドのナンバー10だぞ!」
「ナンバー1じゃないのが微妙だし変顔やめろ!」
あのさ、前々から気になってたけど俺のキメ顔を変顔って言うのやめてくれない?結構傷つくんだけど。
「俺たちは勝手にやる、それでいいだろ?王様?」
「お主達がそう言うなら、好きにするがいい」
「そう言うわけだ、行くぞゼクス」
「全くお前は!申し訳ありませんマナフレア様」
「いや良い、もう行くが良い」
そう言って王様は杖を振った。
次の瞬間、俺たちは宿屋に戻って来ていた。
スゲー!テレポートの魔法初めて体験した!
「先輩!何王様の前で何な友達に話しかけるみたいな態度とってんですか!私もう汗やばかったですよ!」
「私も流石に肝を冷やしたわ」
「ボクもちょっと怖かったな、レンってすごいねいろんな意味で」
「ハン!褒め言葉と受け取っておくぜ!!」
「うわ、開き直った。俺もスゲェと思うよ、ホント」
さてと、王様にあんだけ生意気なこと言ったからには
これから自分たちだけで何とかするしかないんだが………
「あーお前ら」
「「「「?」」」」
「俺あんなこと言ったけど、実は何も考えてないわ」
空気が凍りついた。
スゲェ、多分雪国と同じくらい寒いぞこの空間。
あ、暑くなって来た。
暑さの正体はどうやらうちの魔導士二人の怒りが魔力に現れているらしい。
こんなとき何すればいいか知ってる?
「「「「お前はバカかクソ野郎!!」」」」
「誠にすいませんでした!!」
俺は一瞬で膝を畳み、音速を超えるのではないかと言うスピードで額を床に擦り付ける。
ちなみに土下座させるのは作者の好みだ。
「どうすんだよ!何の手がかりもないままなんて絶対無理だろ!」
「そうね、流石に厳しいんじゃないかしら」
「無理っすね」
「ボクもそう思う」
「うん、だよね!!俺も無理だと思う!!!」
「「「「お前はもう少し責任感を持て!!」」」」
「ゴメンナサイ」
取り敢えず、この街から出ることになりました。
あいつが飛び去った方向には他の街があるらしい、俺たちが目指すのはその街だ。
出発は明日の朝、今日は温泉に入ってゆっくり寝ることになった。
〜温泉〜
「あ〜いい湯だな〜」
「あぁ、ほんと良い湯だ」
「なぁゼクス」
「んー?」
「あいつって結局何者なんだろうなぁ?」
そう言うと、ゼクスはなんとも言えない顔をして押し黙った。
でもその顔はすぐにいつものイケメンフェイスに戻る。
「さぁ?俺も分かんないなー」
こいつはいつもそうだ。
いつもいつもこんな風にのらりくらりとかわして行く。
こいつとはそれなりに付き合いも長いし、考えてることもそれなりにわかるつもりだった。
でも最近、こいつの考えてることがよくわからなくなって来た。
なんでさっき一瞬黙ったのか、俺は何も尋ねなかった。多分何か隠してるとは思うが、今はこれで良いと思ったから。
「はぁー気持ちよかったー」
「ホントだよなー」
さて、これから部屋に戻って明日の準備でもするか。
最近段々だらしなさが薄れて来た気がする。
気のせいかな?気のせいかもなー
そんなことを考えながら歩いていると、外に気配を感じた。
(ん?誰だ?こんな時間に)
もうそこそこ良い時間のはずだから宿に泊まっている人間は大体寝ているか部屋にいる頃だ。
(気になるな、行ってみるか)
「なぁゼクス、先に行っててくれ」
「どうした?」
「ちょっとやりたいことがあってな」
「……分かった、先に行く」
サンキュー、ホントこう言う時に気が効くよなお前は
〜プラメラ市街地〜
フレイは髪も完全に乾いていない状態で静まり返った街中を歩いていた。
聞こえてくるのは自分の足音のみ、この街は夜になると虫の声すら聞こえなくなる。
そして空には満点の星空が広がっている。
なんの音も聞こえないのは、虫や植物でさえかの星空に見入っているからだという噂があるくらいだ。
「気付かれた、ボクと姉ちゃんの秘密」
あの時、クロエルに言われた言葉はいつまでも耳から離れてくれなかった。
「星の子」
それは姉妹にとって、一番言われたくない言葉であり記憶から抹消したい言葉でもあった。
星の子、響は綺麗な言葉。
何も知らない人が聞けば、素敵だと思うかもしれない。
「なんでそんなこと知ってるの、あの子は何処から来たんだろう」
あの時感じた圧倒的なプレッシャーはクロエルが圧倒的な力を持っていることを証明していた。
外見は人間でも、中身は化け物そのものだった。
もしかしたら彼は姉妹のことを元々知っていたのかもしれない。
「フレイ」
「!!」
「何してんだ?風邪引くぞ?」
「なんで、ここにいるの?」
そこにはレンがいた。
誰にも気だから内容に出て来たはずなのに。
フレイは少し混乱していた。
「なんでって、風呂から上がったらなんか気配みたいなもんを感じたからな。お前だとは思わなかった」
そういえば、クロエルを会った時も彼はフレイに気付いた。魔力でバレバレだと言われたけど、レンほどの実力者ともなれば何となく感じ取れるのかもしれない。
「知らない人だったらどうするつもりだったの?」
「別にどうもしない、俺が気になって来ただけだしな」
「変わってるね、レンって」
「フレイさん、それはプラスに取っていいんですか?」
「ううん、マイナス」
「ガハッ!」
やはりレンは面白い、少し目つきは悪いけど表情が豊かでこちらが言ったことにしっかり反応してくれる。
フレイは今まで感じていた不安の様なものが少しほぐれるのを感じた。
だがそれは一瞬の事だった。
「ところで、星の子って何だ?」
ビクッ!
「な、何の話?」
「誤魔化しても無駄だ、しっかり聞こえてた」
「……ボク何も話してないよ?」
「バレバレだよ」
どうやら、誤魔化せないらしい。
「なぁフレイ、お前は何でそんなに怖がってるんだ?」
「え?」
「何で怖がってるんだって聞いてんだ」
「何も怖がってないよ」
「顔に書いてあんの、俺そう言うのすぐ分かるんだよ」
分かる?顔?表情から読み取ったんだろうか、そんな魔法あったかな?
「俺な、ゼクスに会う前はマジで陰気なひねくれ野郎だったんだよ」
「え?レンが陰気?」
「そう、あいつが俺に何度も話しかけてくれてようやく最初の友達ができた。まぁ今もあいつだけだけどな友達は」
「それがどうやってボクの顔のことにつながるの?」
今の話の中で顔の話なんて出てこなかった。
「まぁ最後まで聞けって。人一倍人付き合いが苦手な俺は、人の顔を見て表情を読む様になった。こいつは今どう思っててどうして欲しいかとかな」
「人付き合いが苦手なのに人の顔を見るの?」
不思議な話だ、人付き合いが嫌いなら人の顔なんて見たくないはずなのに。
「見るって言っても目を合わせるわけじゃない、盗み見るだけだ。それに多分、俺は人抱き合いが苦手なだけで嫌いじゃない」
「なんか矛盾してるし、結局レンは何が言いたいの?」
「つまりだ、お前が何考えてるかなんて分かるってことだよ。お前らはずっとなんかを俺たちに隠してた、
特にお前は露骨にな」
どうやらレンは、最初からわかっていた様だった。
たかだか自分が嫌になる、化け物どころか人一人すら騙せないなんて。
「何で今まで何も聞かなかったの?」
「特に興味もなかったし、お前らが隠したいなら聞くべきじゃないと思った。でもお前はあいつに会ってから明らかにおかしいからな」
人のことになんて興味がなさそうなのに、案外人をよく見ている。普段自分は口数が多い方ではない。
そんな自分のことまでレンは見ていたのだ。
「この際だからお前が、いや、お前らが隠してること洗いざらい言ってもらうぞ?仲間がそんな顔してんのはなんか気に入らないしな」
自分は仲間に恵まれた。
フレイはそう思った。
この人になら、この人達になら自分達のことを話してもいいと思った。
こんなことは初めてだった。
「うん、分かった。レン、ボクと姉ちゃんが隠してたこと、聞いて……くれる?」
自分はどんな表情だっただろう、泣きそうだったかもしれないしそうじゃないかもしれない。
「ああ、そもそも聞いてるのは俺の方だ。きっちり聞いてやるよ」
「ありがとう、レン」
この日この夜、フレイは初めて、星空が綺麗だと思うことが出来た。
あざした
これからもよろしく