即死王、竜の群れと遭遇する
「さて…あそこの木陰で一休みしよう。」
丁度良いところに休めそうな場所があったので腰を下ろす。
未知の場所でこんなにゆったりして大丈夫なのかって?
未知の場所だからこそゆとりを持つんだよ。
心の中で誰かに言い訳しながら瞼を閉じようとしていたその時。
木々が倒れナニかが降り立ったような轟音が響く。
「なっ……!」
竜が目の前に降り立った、それも五体…更に上空に8体もいる…
あ、そうえば居たねそんなの!明らかにやばいの居たね!
そりゃあ大声でステータス連呼してたら寄ってきますよね……。
だがここは異世界だ、もしかしたら言語が通じる動物が居るかもしれない。
対話を試みてみよう!
「あー、こんにちは!今日はいい天気ですね!」
私が信頼を置く天気デッキだ、お返しが来るだろうか?
もちろん返って来たのは竜の雄叫びと鋭い爪…
ただの一般人に避けられる筈も無く…その凶器は私の身体を引き裂いた。
「ま、まじか?」
血が大量に流れ出ている。
身体全体が芯から冷めていく様な感覚。
せっかく蘇ったばかりなのに、ここで死ぬのか?そう思い始めた頃。
身体が芯から温められる様な感覚がした。
なんだか活力が漲ってくる!。これが【不撓不屈】の効果か!
いつの間にか傷も消えていた。
「危な!死んだけど死ぬかと思ったわ!」
一回殺されたのだからもう対話は不可能とみていいだろう。
何か私のスキル中で使えるものがあるだろうか…見てみよう。
「鑑定!」
私は竜達に蹂躙されながらステータスのスキル欄を見た。
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スキル 【弓術】【投擲】【呪術】【錬金】【鍛治】
【鑑定】【槍術】
特殊スキル 【唯一無二】【愚者】【作業覚醒】
【言語理解】【犠牲】【執念】
固有スキル【不撓不屈】【逾樊ョコ縺】【謾サ蝓取姶蝎ィ】
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通常スキルは全部道具が無いから使えないし…よし、特殊スキルの【犠牲】で行こう!
一応詳細の確認だ。
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【犠牲】自らの命を犠牲に大量の荊棘を召喚し周りの生物に無差別的に攻撃する。
茎、枝に触れた者にはエナジードレイン、針に刺された者には状態以上の麻痺、火傷、毒、腐食、即死をランダムで付与する。召喚から13分後に荊棘は灰になる。
詠唱をする必要がある。
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よし、周りの被害が怖くてゲームでも使わなかったけど今なら使える!
詠唱を誰かに聞かれたら死ぬほど恥ずかしいがここには誰もいない!
《嗚呼、死霊達よ…我が身を糧にその怨みを解き放て》
詠唱はだいぶ端折ったけど多分大丈夫!
「犠牲!」
スキル名を唱えた瞬間身体から力が抜ける様な感覚に襲われる。
私の身体から抜けるように漆黒の霧が辺りを立ち込め始める。
そして紅く怪しげに、それでいて強い執念と未練を感じさせる光を放つ魔法陣が展開され荊棘が解き放たれた。
解き放たれた荊棘達は空を飛んでいた竜達にも絡みつき、身体に深く刺さり多くの苦しみを与えている。
「ハッハッハ!殺した相手が悪かったな!即死王さんを舐めるなよ?」
荊棘の勢いは衰える事なく周りの植物達をも次々と枯らしゆく……。
そして、当然近くにいた私も荊棘に絡まれる……。
「痛い!普通に痛い!そうだよね!普通に考えれば生き返った私も対象だよね!」
完全に失敗した!と言うか男が触手(荊棘)に絡まれるシーンとか何処に需要あるんだよ!
くそぉ〜!もう二度とこんなスキルなんぞ使わねぇ!
危険だからもう【犠牲】は封印しよう、死ななくても痛いの嫌だからね。
精神力∞じゃ無かったら普通に廃人ルートだよ⁉︎コレ!
危なっ!【不撓不屈】あってよかった……本当によかった。
【犠牲】の効果が切れた13分後…
森林の中に半径2.5キロメートルぐらいの巨大な更地ポッカリと空いていた。
「あぁ…酷い目にあった……。」
いやまぁ原因は私だけどね?色々見落としてた私が悪いんだけどね!
まぁ、過ぎたことをどうこう言っても仕方ないか。
「ふぅ、気を取り直してまずは人里を探しますか。」
何事も切り替えが大事!
ここにこのままいたらまたさっきの竜みたいな化け物に襲われるかも知れない。
死ななくても普通に痛いのいやだから早く安全地帯に行かねば!
「ところで、何処に行けば人が居るかな?」
此処は深い森の中だし正しい道なんてない。
10分ほど当たりを見回してみた。
おや、犠牲の跡地の奥に何か街道のようなものがある!
早速近くまで行こう!
近くまで来てみたら蔦や苔に覆われていて今は使われていない街道のようだ。
とりあえずいくあても無いのでこの街道沿いに進んで行くことにした。
2時間程歩いた頃ようやく森を抜け、開けた場所にでた。
主人公がぼっちで若干おかしくなってますが、次回は人との接触がある予定なのでご安心ください。