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【完結済み】MOBILE FORMULA 2132 -スターライガ∞-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
最終章 THE LAST HOPE

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【TLH-104】最終決戦Ⅶ:覚醒

 ここは……水の中……?

鉄兜(ヘルメット)の中に浸水してくる……水が火傷に浸み込んで痛い……。

……だけど、このまま苦しんで溺れ死ぬのも悪くない。

深い湖の底で朽ち果てれば、皆に忘れ去られてもらえるかしら……。

私と一緒に戦ってきたこの機体と――私を支えてくれた人たちには申し訳ないけど……。

ねえ、ユキ……天国なんてあるのかな……?


 ――霎帙>縺ァ縺励g?溘??闍ヲ縺励>縺ァ縺励g?溘??縺セ縺?豁サ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?〒縺励g縺?シ


 暗い……寒い……苦しい……怖い……。

死ぬのがこんなに辛くて恐ろしいなんて思ってもみなかった……。

いっそ一思いに殺してくれれば良かったのに……。

嫌だ……嫌だ……嫌だ……。

死にたくない……死にたくない……死にたくない……!


 ――縺ソ繧薙↑驟キ縺?o縺ュ窶ヲ窶ヲ縺ゅ↑縺溘′阯サ謗サ縺崎協縺励s縺ァ縺?k縺ョ縺ォ縲∬ェー繧よ焔繧貞キョ縺嶺シク縺ケ繧医≧縺ィ縺励↑縺


 ユキ……あなたは昔からそうだった……。

自分の力を過信して危地へ乗り込み、そして勝手に死んでしまう……本当に愚かでバカな妹よ。

スズヤ……もうあなたには何一つ期待していない。

取り巻きに一方的に翻弄され、主君の援護ができない無能な親衛隊隊長はそのままくたばってしまえ。

ライラック博士……私は貴女のことを本当に信頼していたのに、なぜ私を見捨てて逃げたのですか?

そうやって私を否定するのですか?

かつてスターライガに敗北し逃避行を続けていた貴女を客将として招き入れ、あらゆる支援を与えてやったのは誰だか分かっていますよね……?


 ――縺セ縺?險?縺?◆縺?%縺ィ縺後≠繧九h縺??窶ヲ窶ヲ縺ゅ?莠御ココ縺ォ蟇セ縺励※


 レガリア・シャルラハロート……私はあなたのことが初めて対面した時から嫌いだった。

生まれながらにして女王の器を持つ天才でありながら大衆や凡人の味方を気取り、私のやり方を"独裁者"と呼んで否定し続けるあなたとは永遠に分かり合えない。

愚民は己の知る事しか知らないし、自分からは遠い物事を知ろうとも思わない。

そのような臆病で矮小な者共に未来を選ぶ権利など必要無い。

彼らが欲しているのは思考を丸投げできる唯一無二にして絶対的な指導者。

与えるべきなのは100年先のことを心配しなくてもいい、箱庭のように小さく自足できる虚飾の楽園。

レガリアさん、あなたにはそれを実現し得る力があるはず。

持たざる者共の愚かさを知りながら、なぜ彼らに過度な期待を寄せ続けるの……?


 ――縺ゥ縺?○豁サ縺ャ縺ョ縺ェ繧峨?窶ヲ窶ヲ縺ゅ↑縺溘r蜷ヲ螳壹@縺溷?縺ヲ繧堤?エ螢翫@蟆ス縺上@縺ェ縺輔>


 ライガ・シルバーストン……あなただけは絶対に許さない。

ライラック博士からあなたの存在について話を聞き、最初の首脳会談の一件で助けられた時からあなたに一目惚れしていた。

あんな気持ちは生まれて初めてだった……妹以外の親族一同を皆殺しにした私が、赤の他人に恋をするなんて……。

あなたへの気持ちに気付いた瞬間、私は自分が血の通った人間であることを自覚できた。

周囲の人間は私のことを"冷血"と陰で呼んでいたみたいだけど、あなたは敵でありながら素の私を見てくれていた。

ただ……心を許せる人からの愛が欲しかった。

オリエント連邦を訪ねたあの日、一言だけでも――お世辞でもいいから「愛している」と囁いてほしかった。

あなたが相手ならば純潔を散らすことに悔いは無かったし、本心では無理矢理抱かれてもいいとさえ思っていたのに……。


 ――谺イ縺励>繧ゅ?縺ッ迢ャ陬∬??i縺励¥蜉帛ース縺上〒螂ェ縺」縺溘i?溘??莉翫∪縺ァ繧ゅ◎縺?@縺ヲ縺阪◆縺ョ縺ァ縺励g縺?シ


 ……そうよね。

欲しいモノはあらゆる手段を使ってでも勝ち取る。

どうしても手に入らない時は他人が利用できないように抹消する。

私はそうしてきた。

そうせざるを得なかった。

最期までそれを貫いてやる。

私の傍にいてくれないというのなら、力尽くで地獄へと引きずり込んであげるまで。

そうすれば永遠に一つになれる……ああ、考えるだけで幸せだわ……!

ねえ、お願い……私ト一緒ニ死ンデクレル……?


 ――目覚メナサイ、全テヲ失イ心ガ壊レタ哀レナ女帝ヨ――


「(浮き上がって来ない……か。そりゃそうだ、あの機体は7トン弱はありそうなヘビー級みたいだからな……)」

一方その頃、武器を収めたライガのパルトナ・メガミは人造湖の水面付近まで高度を下げ、オリヒメのイザナミが墜落した地点を確認していた。

着水時の衝撃で飛散したと思われる多数の破片が湖面を漂っているものの、藤色のサキモリの姿を見つけることはできなかった。

パルトナよりも重い機体が淡水湖で自然に浮き上がって来るとは考えにくい。

「(俺に与えられた作戦目標は達成できたが、戦争はまだ終わっていない。苦戦しているレガを援護してやらないと)」

少し離れた所ではレガリアと皇族親衛隊隊長の戦闘がまだ続いているらしく、両者の機体のものと思われる蒼い光跡は空に複雑な軌道を描いていた。

戦友をここまで付き合わせたライガには彼女を無事に連れて帰る義務がある。

「……ッ!?」

その時、味方の援護へ向かおうとしていた彼に背筋が凍るような感覚が襲い掛かる。

明らかに異常な悪寒は穏やかな湖面の下から湧き上がって来るように感じられた。

「(真下からッ!?)」

高いイノセンス能力で水面下に殺意を感じ取ったライガは離脱を図ろうとするが……。

「お、オリヒメッ! 俺を水中へ引きずり込むつもりかッ!?」

次の瞬間、巨大な水飛沫と共に白と紫のサキモリが突如姿を現し、ライガのパルトナの両脚を全力で掴みに掛かってくる。

その挙動はさながらホオジロザメやシャチといった水中の捕食者のようであった。

「……」

一言も発すること無くボロボロになった乗機のコックピットに座るオリヒメの表情は窺い知れない。

「(モード11・ポジション5! フルスロットルで振り払うしかない!)」

そんなことなど気にしている余裕が無いライガは推進剤の濃度を変更し、スロットルペダルを限界まで踏み抜き脱出を試みる。

「……私ト一緒ニ死ンデクレル……?」

「(な、何なんだこの力はッ!? それにこの……寒気がする(おぞ)ましい感覚は……!)」

しかし、何かに取り憑かれているかのようなオリヒメのイザナミのパワーは凄まじく、ライガのパルトナが全スラスターを最大噴射しても全く振り払える気がしない。

それどころか少しずつ高度が低下し、逆に水中へと引きずり込まれてしまいそうだ。

「(推進剤が足りない! ダメだ……完全に持って行かれる……!)」

決死の抵抗も空しく、推進剤をほぼ使い尽くした白と蒼のMFにもはや為す術は無かった。


 無数の白い泡が視界を完全に奪う。

やがてヘルメットのバイザーを覆っていた泡が消えると、周囲には暗く青い空間が広がっていた。

「(ここは……水中か!? コンバットスーツへの浸水は……今のところは無さそうだな)」

自分の状況を把握したライガはまずコンバットスーツの気密性が機能していることを確認する。

地上から宇宙空間まで幅広い環境に対応できるMFドライバーのコンバットスーツ及びヘルメットは、当然ながら水中での使用も考慮されている。

ただし、その防水性能はあくまでも洋上でのベイルアウトなど緊急時を想定したものであり、ダイビング器材のような本格的な水中活動には対応していない。

「(オリヒメめ、俺を水中へ引きずり込んで道連れにでもするつもりか!)」

自分をこの厄介なフィールドに引きずり込んだであろうオリヒメのイザナミの姿は視認できない。

だが、ライガのイノセンス能力は一度殺したはずの女の存在を知らせていた。

「(くそッ、水中じゃレーダーが利かねえ……まだ近くにいるはずだ!)」

水中は電波が大きく減衰する機上レーダーにとっては厳しい環境。

そもそも、人型という水中活動に不向きな形態を取るMFに水中戦能力を求めるのはナンセンスだ。

レーダーもセンサー類も使えない中、ライガは己の視力とイノセンス能力を頼りに索敵を行う。

「ッ……!」

自機の周囲を動き回る存在に気付いた次の瞬間、実体剣と思わしき鋭い斬撃が白と蒼のMFを掠める。

水中という特殊な状況での不意打ちはライガでなければ避け切れなかったかもしれない。

「(そうか、ルナサリアンの機動兵器は実体剣を標準装備している。光学兵器主体のこちらよりは多少有利というわけだな)」

彼は思い通りに動かせない機体で何とか回避運動を続けながら、水中戦における実体剣のアドバンテージとその脅威について考えるのだった。


「くッ……!」

今度の一撃はこれまでの攻撃の中で最も際どく、ライガのパルトナの装甲の一部を斬り落としていく。

「(しかも、あの損傷状態で水中を動けるとは……冗談じゃねえ)」

しかし、間一髪の状況を切り抜けたライガが最も驚いたのは、かなり接近することでようやく目視確認できたオリヒメのイザナミの姿だ。

暗い水中ではハッキリとは分からないものの、銀色の刃を握り締めるイザナミは前面部が重度の火傷のように焦げて(ただ)れているように見えた。

外装がこれほど損傷していると内部機構にも少なくないダメージを負っているはずだが、白と紫のサキモリは水中でもまずまずの運動性を維持しているようだ。

「(苦手な水中戦に付き合う必要は無いが……この状況、どうやって脱する?)」

一方、ライガのパルトナはたとえ万全の状態であったとしても水中適応は皆無なため、まともに戦うことは難しい。

窮地を切り抜けるには速やかに水中から離脱する必要があるが、残りわずかな推進剤では十分な加速を得られない可能性が高い。

水の抵抗の大きさは泳いだことがある人間なら誰でも理解できるだろう。

「(……そうだ! 確か、昔リリーが観てたロボットアニメで似たようなシチュエーションがあったはずだ!)」

こういった時、参考にできるのは自分と同じような状況に陥った場合の前例。

まさかとは思ったが、ライガは記憶を頼りに参考資料を思い出すことができた。

如何せん昔の出来事なので作品タイトルは覚えていないとはいえ、幸運にも該当するワンシーンだけは脳内にハッキリと浮かび上がっていた。

「(あのアニメでは水中戦で推進剤が尽きた後、ビーム刀剣類の熱量で周囲の海水を沸騰させることで無理矢理推進力を作っていた。俺のパルトナならば同じことができるかもしれない)」

あれはジャパニメーションの描写なのであまり鵜呑みにするべきではない。

ただし、リアルで真似できないほど非現実的というわけでもなかった。

そして何より、ライガの愛機にはあの巨大ロボットと同等以上のスペックがあるはずだ。

「(すぐに実践できる方法はこれだけだ! やってみる価値はある!)」

自分よりも水中戦が得意な相手の脅威に晒されている以上、他の方法を考えている余裕は無い。

ライガは愛機パルトナのポテンシャルに賭けてみることにした。

「(ビームソードに全エネルギーを集中……ドライブ開始! 間に合えッ!)」

そう決めた彼はH.I.S(ホログラム・インターフェース)の設定画面を開き、エネルギー供給の優先順位をマニュアル操作で変更。

操縦系統を維持する必要最低限のエネルギー以外は全てビームソードへ回すように切り替えると、すぐにビームソードから巨大な蒼い光の刃を発生させる。

「ッ……!」

その不審な動きを察したオリヒメのイザナミは銀色の刃で斬りかかってくるが、それよりも僅かに早く周囲の水の加熱を間に合わせたライガのパルトナは沸騰の勢いを活かして急上昇していく。

白と紫のサキモリは圧力によって行く手を阻まれ、これ以上の追撃は叶わなかった。

「(生きて帰ったらリリーに感謝しないといけないな……!)」

水面へ近付くにつれて周囲が徐々に明るくなってくる。

月の空へと戻る直前、ライガは打開策を思い付くキッカケとなった幼馴染のオタク趣味に感謝するのであった。

今回のエピソードで出てきた文字化け文章は"文字化けテスター"というサイトで再現したものです(https://tools.m-bsys.com/dev_tools/char_corruption.php)。

このサイトでは文字化け文章を逆に復元することもできるので、興味がある方は試してみてください。

ただし、作者の作業環境はPCがメインであるため、スマートフォンでもこのサイトが正常に動くかは分かりません。

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