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【完結済み】MOBILE FORMULA 2132 -スターライガ∞-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
最終章 THE LAST HOPE

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【TLH-49】FINAL FRONTLINE(後編)

 サニーズのシルフシュヴァリエBSTを強敵と認め、ユキヒメはそういった相手と戦うための戦闘機動"アキヅキ流奥義"を再び解禁する。

「この太刀筋は見切れまいッ!」

白と青緑の高機動型MFへ攻撃が当たる可能性を少しでも高めるべく、敵機頭上から強襲攻撃を仕掛けるユキヒメのイザナギ。

「(チルドたちもそこそこ苦戦しているか……ここは独力で切り抜けるしかない!)」

脳内物質の分泌により世界がスローモーションになっていく中、サニーズは一瞬だけ僚機が戦っているであろう方角を見やる。

アキヅキ姉妹の取り巻きである皇族親衛隊も相応に強力らしく、奴らと交戦中のチルドたちを呼び出して援護に回すことは不可能だ。

状況打開のためには自分の技量と愛機の性能を信じるしかなかった。

「何ィ!?」

ユキヒメのイザナギは叩き斬るつもりで専用カタナを振り下ろしたが、敵機にクリーンヒットした時の手応えが感じられない。

次の瞬間、理解が追い付いた彼女は驚愕する。

「動体視力には自信があるのでな……!」

それもそのはず、サニーズのシルフシュヴァリエBSTは銀色の刃を"真剣白刃取り"の要領で受け止めていたからだ。

軽量級ゆえ力負けしやすいシルフシュヴァリエでこの行動は大博打だったが、今回は賭けに勝つことができた。

「こっちは一撃も当たるつもりは無い!」

「くッ、噂に違わず手強い女だ!」

間髪入れずに機体の両脚を揃えたドロップキックでユキヒメのイザナギの腹部を蹴り飛ばし、後方宙返りを決めながら白刃取りのために投棄したレーザーアサルトライフルを回収するサニーズ。

「姉上! もっと強気に援護射撃をしてくれ!」

「正確に狙い撃つ自信は無いわよ!」

一騎討ちではリスクが大きいと判断したユキヒメは信念を捻じ曲げてまでオリヒメに援護を求めるが、当のオリヒメ本人は誤射を恐れているのか有効な援護射撃をしてくれない。

オリヒメのイザナミ重は射撃武装は基本的に強力過ぎるため、これはやむを得ないのだが……。

「構わん! 私は姉さんの腕を信頼している!」

「そこまで言うのなら……仕方が無い、仕方が無いわね!」

まさか、間違って妹を撃ってしまうほどヘタクソではあるまい――。

ユキヒメに発破を掛けられたら姉として無下にするわけにもいかず、オリヒメは周囲の状況を確認しながら長銃身大型光線銃による精密射撃を試みる。

「(もっと狙いやすい位置に誘導しなさいな……!)」

性能的にはある程度正確な射撃も可能と云われているが、それはあくまでも操縦者が高い技量を有している前提での話だ。

2機の機動兵器による狙いを付けづらい高速戦闘に苛立ちを隠せないオリヒメ。

「もらったわッ!」

しかし、辛抱強く待っていれば必ずチャンスは訪れる。

あるタイミングでシルフシュヴァリエBSTの機影とレティクルが重なった時、オリヒメは考えるよりも先に右操縦桿のトリガーを引いていた。


「くそッ……!」

実際のところ、サニーズはユキヒメとの戦いに集中しながらオリヒメの動向にも注意を払っていた。

ただ、妹を誤射しかねない状況での思い切った射撃はさすがに予想できなかっただけだ。

サニーズほどの実力者でも想定外の攻撃を咄嗟に回避することは難しかった。

「電波妨害!? 何事だ!」

彼女の被弾は時間の問題かと思われたが、ここでユキヒメのイザナギの機上レーダーに突然ノイズが発生する。

電波妨害――ジャミングであることは一目瞭然とはいえ、直前まで電子戦機の存在は確認できなかった。

「ファイアッ!」

その直後、中性的な男の声と同時に2発の蒼く細いレーザーが飛来し、サニーズ機を狙っていた蒼く太い光線と2回接触することで弾道を少しだけ逸らしてみせる。

この行為による影響はごくわずかだったはずだが、それでも攻撃を外すには必要十分過ぎる干渉であった。

「は、外れた!?」

必中を期した攻撃を打ち消されたオリヒメが驚くのも無理はない。

レーザー同士がぶつかるとエネルギーを拡散しながら弾き合う性質"ビダン=イカリ効果"はよく知られているが、それを狙って起こすことなど人間の反応速度では不可能だからだ。

まぐれ当たりにしてはいくらなんでもタイミングが良すぎる。

「電探、機能回復。識別信号を確認――こいつは!?」

機上レーダーの復旧と同時に新たな敵機の識別信号を確認した瞬間、ユキヒメはご都合主義的な展開が立て続けに起きた理由を完全に理解する。

「全く、相変わらず大した割り込みだな……リーダー」

「リリーたちはチルドたちの援護に向かわせた。アキヅキ姉妹の相手は俺とお前でやるぞ」

九死に一生を得たサニーズのシルフシュヴァリエBSTを庇うように白と蒼のMF――ライガのパルトナ・メガミ(決戦仕様)がその姿を現す。

彼は自機の電子戦ポッドでジャミングを掛けながら戦闘へ乱入し、仲間を助けるべく腰部可変速レーザーキャノンの狙撃モードでオリヒメ機の攻撃を逸らすという神業を人知れず発揮していたのだった。


 4人の実力者とその乗機たちが一触即発の状態で対峙する。

「気を付けろよ、どちらの機体も本土防衛戦の時から大きく強化されている」

「そのようだな……増加装甲持ちとはまた厄介そうだぜ」

アキヅキ姉妹の機体の戦闘力を嫌と言うほど見せつけられたサニーズが警鐘を鳴らすと、相手を一目見たライガも頷きながらそれに同意した。

適切に設計・装着された増加装甲は防御力を飛躍的に高めてくれるため、いざ戦うとなると一苦労させられるだろう。

「先日の惨敗を糧に私とイザナミは生まれ変わったのよ。今回はそう簡単に勝てるとは思わないことね」

「私がいる限り、姉上には指一本触れさせん! 近付かれる前にその指を斬り落としてくれる!」

オリヒメとユキヒメは完全に臨戦態勢に入っており、残念ながら戦闘を回避することは難しいかもしれない。

「ライガ! 貴様の機体のビームソードを貸してくれ!」

それを悟ったサニーズは戦友に対し格闘武装を貸すよう要求する。

「ビームレイピアは失くしたのか? 貸すのは別にいいんだが、少し重いからアジャストが必要だぞ」

ライガのパルトナ・メガミのビームソードは専用品として設計されているが、一応他の機体でも握れる程度の範囲に留まっている。

彼は射撃主体の戦い方がメインとなるので格闘武装が減ってもそこまで困らない。

ただし、シルフシュヴァリエBSTのビームレイピアよりも重量があるため、同機でまともに扱うつもりならば即席の設定変更が必要だ。

「フッ、無いよりはマシさ」

白と青のMFから投げ渡されたビームソードの柄を受け取り、普段使っているレイピアとの違いを確かめながら笑みを浮かべるサニーズ。

「ユキヒメの方は頼む。重装備のこっちは運動性が低いからな」

仕切り直しの準備ができたところでライガは大まかな役割分担を決める。

格闘戦が得意なユキヒメに同じくインファイターのサニーズをぶつけるのは適切な判断と言えた。

「ああ、まずは姉妹に連携されないよう孤立させる!」

「貴様に我々の結束を断てるものか!」

連携の切り崩しを狙うサニーズのシルフシュヴァリエBSTと、そうはさせんとばかりに再び専用カタナを構えるユキヒメのイザナギ。

「オリヒメ……お前からしたら気が早いことかもしれないが、ここでケリを付けてやる」

「……望むところよ。あなたを倒し、地球側の精神的支柱を完全にへし折ってあげる」

ライガのパルトナ・メガミとオリヒメのイザナミ重も互いに射撃武装を向け合い、相手の出方を探り始めるのであった。


「ファイアッ!」

「発射ッ!」

パルトナ・メガミの専用長銃身レーザーライフル2丁とイザナミ重の長銃身大型光線銃2丁が同じタイミングで発射されるが、両者の攻撃は共に外れて回避運動を取りながらの撃ち合いへ移行する。

「おいおい、バリアフィールド持ちだなんて聞いてないぜ! サニーズのヤツ……!」

ファーストコンタクトを深刻に受け止めていたのはライガの方だ。

彼のパルトナが放った蒼いレーザーは白と紫のサキモリのバリアフィールド"ショウマキョウ"に容易く打ち消されていた。

「そんな機能、私も初耳だぞ!」

この防御兵装の存在を見落としていたのはサニーズのミスだが、そもそも彼女でさえバリアフィールドの発動を目撃したのはこれが初めてだった。

「(冗談じゃねえ……バリアフィールドと増加装甲を併用されたら、有効な攻撃手段が限られてくるな)」

ライガは考える。

バリアフィールドはレーザー、増加装甲は物理攻撃全般に対し高い防御効果を発揮する。

それらの機能が適切に働いている場合、攻撃手段が少ない機体では有効打が無くなってしまう。

「イザナミが手に入れた鉄壁の防御力、あなたの機体で()けるかしら?」

「たとえ鎧を纏おうと無敵ではないはずだ!」

ルナサリアン驚異のメカニズムを誇示するオリヒメからの攻撃をかわしつつ、"小さなダメージでも蓄積させればいつか必ず壊れる"と粘り強く反撃を続けるライガ。

「VSLC、スナイプモード……ファイアッ!」

細々とした攻撃は全てこの本命のため。

彼はパルトナの腰部可変速レーザーキャノンを狙撃モードにセットし、敵機の回避運動を見極めてから左右操縦桿のトリガーを引く。

「(VSLCで狙うとやはり警戒されるか。他に有効打があるとすれば……)」

経験と技術がモノを言う偏差射撃は完璧に近かった。

だが、VSLCの存在と性能は以前の戦闘で知られているためか、発射前から警戒される状態ではライガの実力でも当てることは難しい。

「(……やむを得ないな)」

照準を定めるための時間が必要な射撃はどうしても隙が生まれるうえ、レーザー・実体弾問わずバリアフィールド及び増加装甲の影響を何かしらのカタチで受ける。

射撃戦の腕には絶対の自信を持つライガも、今回に限っては格闘戦で対応せざるを得ないと感じていた。

「(バリアフィールドを貫通しつつ、装甲の物理的厚さの影響を受けづらいモノ――それはビームだ!)」

バリアフィールドが形成するエネルギーの壁に穴を開け、増加装甲を高熱で無理矢理溶断できるのはビームだけ。

そして、ライガのパルトナはそれが可能な格闘武装"ツインビームトライデント"を装備していた。

【増加装甲の効果】

増加装甲によって物理攻撃に対する防御力が上がるのは、単純に装甲を厚くするのと同じ効果を得られるためである。

逆にレーザーやビームは高熱により金属さえ溶断してしまうため、これらを無効化することは難しい。

ちなみに、機動兵器用の増加装甲は内部空間を設けた"空間装甲"とすることで軽量化を図っており、空きスペースの一部をウェポンベイに転用している機体も珍しくない。

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