表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】MOBILE FORMULA 2132 -スターライガ∞-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
最終章 THE LAST HOPE

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

315/400

【TLH-33】青よりも碧い蒼(前編)

 今回ルナサリアン艦隊が繰り出した航空部隊の内訳は、アサヅキ艦隊所属航空隊にオネヅキ艦隊の残存戦力が多数加わった臨時編成。

当然、機種も最新鋭サキモリから旧型戦闘機まで幅広く揃っている。

(にび)1より航空隊全機、高度を保ち編隊を崩すな。敵艦隊の側面より一気に強襲を掛ける」

新型戦闘機"キ-36 スザク"を駆る鈍1が航空隊の指揮官であり、彼女は戦艦部隊の意向を反映した指示を出す。

「戦闘機部隊は対艦攻撃、サキモリ部隊は航空優勢の確保にそれぞれ集中しろ」

兵器の特性を十二分に理解したこの役割分担は何ら問題無い。

「蒼1、サキモリ部隊の指揮は君に任せる。若くして小隊長に抜擢された才能――期待しているぞ」

戦闘機部隊の方は自ら動かすとして、航空機としての特性が大きく異なるサキモリ部隊に関しては蒼1――リュウセンに一任する鈍1。

「り、了解です!」

「敵艦隊、対艦誘導弾の射程に入りました!」

若干声を(うわ)ずらせながら返答するリュウセンをよそに、鈍部隊のパイロットが攻撃可能範囲に入ったことを告げる。

「状況を開始する! ここで全艦沈めるつもりで臨め!」

鈍1率いる戦闘機部隊はそのまま針路を維持し、対艦ミサイルの発射準備に入る。

「敵航空戦力も迎撃に上がって来るぞ! 隊長、指示を請う!」

「えっと……こちらも正面から迎え撃ちましょう……!」

一方、蒼部隊はというとベテラン士官の蒼2に若過ぎるリュウセンが引っ張られる有様であった。

「今のあんたは隊長なんだぜ? もっと自信を持って――って、勝手に先行してるのはどこの部隊だ!?」

そのリュウセンとは訓練生時代からの同期である蒼3――イサミヅキ・ユウキは自信を持つよう励まそうとするが、それを遮るかのように別のサキモリ部隊が突出し始める。

「こちら(へき)1、我が隊が先行して敵部隊を叩きます」

蒼部隊の前に出たのは3機の最新鋭機"モ-04 試製オミヅヌ丁"で構成されている碧部隊。

使用機材こそ同じだが、こちらは実戦経験豊富な実力派エイシで揃えられた部隊だ。

「経験不足で未熟な部隊長殿は援護に徹して下さいまし」

そして何より、碧1は自分より年下で才能も経験も足りないくせに、軍上層部直々の人事発令で同じ立場となったリュウセンのことを一方的に嫌っていた。


「フラッシュ1より各機、本来の母艦を失えど俺たちの為すべきことは変わらない」

ルナサリアンの航空攻撃に対する地球側の反応は極めて早く、多国籍艦隊の生き残りであるフラッシュ1を筆頭とする混成航空隊を迎撃に向かわせる。

「戦闘機乗りの誇りに懸けて任務を遂行し、友軍艦隊を守り抜くだけだ」

彼の部隊は轟沈した航空戦艦アイオワに代わりオリエント国防海軍空母アドミラル・ユベールを母艦としているが、これまでと同じように任務へ当たらなければならない。

「前方より敵戦闘機多数接近!」

「真正面から突っ込んで来るか……対艦ミサイルを抱えたまま――」

何とか生き延びてきた僚機の報告を受け、対艦ミサイルを撃たれる前に真っ向勝負を仕掛けようとするフラッシュ1。

「上から来るぞッ! 気を付けろッ!」

「くそったれッ! 戦闘機部隊に誘われたか!」

しかしその時、オリエント人女性士官――セシルの警告と同時に多数の蒼い光線とマイクロミサイルが飛来。

フラッシュ1は反射的に回避運動を取るが、それに追従できなかった味方機が直撃弾を受けて爆散してしまう。

「バラけるなッ! 孤立した奴から狙われるぞ!」

「見たことの無いMFに追われている! 誰か助け――!」

彼の忠告も空しく、突然の奇襲で分断された混成航空隊は敵の新型MFに次々と喰われていく。

「1機、いや2~3機落とされたか! 私がもっと早く警告していれば……!」

阿鼻叫喚の戦場に駆け付けたセシル率いるゲイル隊はすぐさま援護に入ったものの、限られた味方しか救えなかったことに彼女は肩を落とす。

「自分を責めるな、ゲイル1! それよりも敵MFを何とかしてくれ! ライトニングの運動性じゃさすがに厳しい!」

それに対してフラッシュ1は"責任を背負う必要は無い"と諭しつつ、厄介な敵MF――試製オミヅヌ丁への対処を依頼する。

いくら彼がエースパイロットだとしても、旧式化しつつあるF-35Eでまともにやり合うことは困難だからだ。

「このタイミングで新型機とは、ルナサリアンは意外に新しい物好きなんだな」

「ねえ、あの機体って……」

新型機の登場について特に気にしていないアヤネルとは異なり、その機体にスレイはどことなく見覚えがあった。

「(やはり似ている……まさか、スズランが最期に乗っていた機体の量産型とでも言うのか)」

そして、部下たちの発言でセシルの疑問は確信に変わろうとしていた。


 アメハヅチ・モ-04 試製オミヅヌ丁――。

オリエント連邦本土空襲に投入された試製オミヅヌをベースとする暫定量産型で、一定の条件を満たしたサキモリ部隊向けに少数機が配備されている。

最大の特徴であった変形機構こそオミットされてしまったが、機体強度及び信頼性の向上など原型機から改善された点も少なくない。

いずれにせよ、オリエント国防軍のオーディール並みの性能を持つこの機体は大きな脅威となるだろう。

「小隊ごとに散開し隊形を維持! まずは敵新型機の戦闘力を把握する!」

「撃ち方始めッ!」

3機小隊×2に散開して様子見を図るセシルに対し、碧1率いるサキモリ部隊は一斉攻撃でそれを許さない。

「非可変機のわりに結構食い付いてくるな……!」

「機体性能はほぼ互角、条件が同じならこっちの方が少し上回ってると思う」

最初のコンタクトを終えた後はゲイル隊が追いかけられる展開で始まった。

非可変機ながら機動力が高いオーディールに追従してくる敵機を目の当たりにし、アヤネルとスレイは少なからず危機感を抱く。

開戦時から戦っているツクヨミ系列機とは異なり、今回の相手は性能差で押し切ることは難しそうだ。

「こいつら……噂の"蒼い悪魔"じゃないのか!?」

「蒼い悪魔って、地球で次々とこっちの超兵器を撃破してきたっていう……」

他方、末端の兵士ですら知っている"蒼い悪魔"との遭遇に驚いているのはユウキとリュウセンも同じだった。

二人は"超兵器すら沈める連中相手に生き残れるのか"と動揺を隠せない。

「狼狽えるな若いの! どんな強敵であっても、戦場で遭遇したのならば戦うしかない!」

「せ、先輩の言う通りですね……こちらも連携しながら対抗しないと……!」

しかし、その遣り取りを聞いていた最年長の蒼2から窘められ、多少落ち着きを取り戻したリュウセンは自分たちも連携を重視するよう指示を出す。

「(機体は良くてもチームワークはイマイチのようだね。そこを突けば容易にあしらえる相手と見た)」

碧部隊の突出と蒼部隊の連携の甘さを見抜いたリリスは、これはおそらく勝てる相手だと判断するのであった。


「(さすがに速い! 照準が定まらない!)」

蒼いMFの背後に何とか食らい付き、改良型光線銃を構えながら攻撃チャンスを窺うリュウセンの試製オミヅヌ丁。

だが、"蒼い悪魔"が駆るオーディールM2の回避運動は極めて鋭く、照準補正機能が対応できないほどの動きでロックオンを許さない。

「リュウ! 後ろに付かれてるぞ!」

「ッ!」

そうして手間取っているうちにユウキから警告を受け、リュウセンは咄嗟に機体をローリングさせレーザーをかわしていく。

経験不足は否めないが、操縦技術自体には光るモノがあるようだ。

「当たれ! 当たれぇッ!」

後方の敵機をユウキが引き付けている間にリュウセンは再び間合いを詰め、今度は弾倉内のエネルギーを使い尽くすつもりで連射攻撃を行う。

若さが目立つヤケクソ気味な攻撃はさすがに(かす)りもしないと思われたが……。

「(……!)」

ところが、最後の一発を放つ瞬間に彼女は突如驚異的な集中力を発揮し、急旋回中の蒼いMFにレーザーを直撃させてみせた。

「敵機に直撃弾!? あの角度で当てるとはやるな、若いの!」

これにはリュウセンの実力を侮っていた蒼2もさすがに驚き、着任以来初めて小隊長のことを褒め称える。

自分だったら同じ状況では攻撃を躊躇い、別の機会を求めるだろうと判断したからだ。

若さゆえの思い切りの良さは時として大きな武器になる。

「ブフェーラ3、ダメージは大丈夫?」

「増加装甲に当てられただけだ! ダメージにもなってない!」

ローゼルから機体の状態について尋ねられ、現時点では特に問題は無いと返すヴァイル。

オーディールM2及びA2専用の増加装甲"SG-BOOSTER"は本体よりも安価な装甲材を用いているが、深い角度で直撃したレーザーを食い止めるだけの防御力は有している。

「ある程度の攻撃は増加装甲が肩代わりしてくれるが、あまり頼り過ぎるなよ。連続で同じ箇所に被弾したらさすがに穴が開くからな」

「ええ、気を付けます」

それはともかくリリス隊長から"増加装甲は無敵ではない"というアドバイスを受け、ヴァイルは引き続き敵新型機とのドッグファイトに臨む。

「(後ろの奴、思った以上に強いな……チームワークはガバガバのくせに)」

自分とオーディールM2に直撃弾を与えた相手――。

ヴァイルはその戦闘力に対する認識を改めるが、少なくともこの時点では"ミスをしなければ勝てる"という考えは変わらなかった。


 蒼部隊とブフェーラ隊が一進一退の攻防を繰り広げていた頃、別の場所では碧部隊とゲイル隊も交戦状態に突入していた。

「単独戦闘は禁止! 3機で確実に1機を追い詰めますわよ!」

「数で優勢を取るのは(いささ)か武士道精神に欠けますがね」

碧1は対エース部隊戦において最も適切と思われる指示を出すが、開戦前まで本土防空隊に所属しており自らの技量に自信を持つ碧2は若干否定的な反応を見せる。

軍事武門のトップであるユキヒメの影響なのか、ルナサリアンのエイシには一騎討ちを美徳と考える者が多い。

「相手はあの"蒼い悪魔"ですわ! 武士道がどうとか言ってられなくてよ!」

一方、現実主義的な考え方を重視する碧1は武士道をバッサリと切り捨て、半ば強引に自身の戦術を実行へ移し始める。

実際のところ、蒼い悪魔ことゲイル隊も隊長(セシル)の意向で騎士道精神を重視しているのだが……。

「隊長が集中的に狙われてるよ! 援護しないと!」

「あの人なら3対1でも何とかなるだろ。隊長のケツを狙ってる奴らのケツに一発撃ち込んでやろうぜ」

不利な戦いを強いられつつあるセシルを援護するべきだと叫ぶスレイを冷静に諭しつつ、アヤネルは隊長機をフォローできる攻撃位置へと素早く向かう。

数に物を言わせて一人の敵エースを徹底的にマークする戦法は悪くないが、碧部隊は自分たちまでカバーする余力が無い――。

彼女は幸運にもフリーで動ける状態を最大限活かすつもりでいた。

「数的有利を重視するのは戦術的に正しい判断だ……しかし、無粋ではあるな」

相手の包囲戦法をセシルは敵ながら高く評価するが、同時に自分に対する戦い方としては"無粋"であるとも指摘する。

「加速した!? くッ、逃がすものか!」

「敵の手に乗るな! 奴の目的は……!」

碧部隊最年少の碧3はベテランである碧2の忠告を聞き入れず、無謀にも急加速した蒼いMFの追跡を試みる。

「ッ……ヘッドオン……良い位置だ!」

セシルのオーディールは持ち前の機動力で敵機を突き放した後、E-M理論を意識した効率的な旋回半径で速度を維持しつつヘッドオン勝負に持ち込む。

「ファイアッ!」

カウル内側全天周囲スクリーンのレティクルと敵影が重なった次の瞬間、セシルは操縦桿のトリガーを引きながら左斜め後ろに倒す。

「碧3がやられた! あの野郎、操縦席を躊躇無く撃ち抜きやがった……!」

僚機のカバーに回ろうとした碧2が見ている前で碧3の試製オミヅヌ丁は蒼いレーザーに貫かれ被弾炎上。

紺色のサキモリは複数の火の玉に分かれながら宇宙の塵と化してしまう。

コックピットブロックに直撃弾を受け、尚且つベイルアウトが確認できなかったことから生存は絶望的であった。

【Tips】

戦闘機のマニューバとして知られる"バレルロール"は当然MFでも行える。

可変機のファイター形態時は戦闘機と同様の操作で可能だが、機体サイズが小さいためよりクイックに回ることができる。

MFの操縦においては基本的且つ応用が利くマニューバである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ