表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】MOBILE FORMULA 2132 -スターライガ∞-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
最終章 THE LAST HOPE

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

296/400

【TLH-14】絶対防衛戦略宙域、強行突破!(前編)

 オリエント・プライベーター同盟と国防海軍第17高機動水雷戦隊で構成される先遣隊は、ルナサリアン無人戦闘機の迎撃に晒されつつも順調に進軍中。

「(この辺りはまだ静かだな……ルナサリアンめ、どの防衛ラインから本気を出してくる?)」

ヤン率いるトムキャッターズも発艦後速やかに戦列へ加わり、同業者たちと共に艦隊防空に当たっている。

無人戦闘機による迎撃を除けば戦闘は散発的だが、彼女にとってはそれこそが不安要素であった。

「リーダー、こちらケット・シー。艦の磁気探知機が機雷と思われる浮遊物を多数確認した」

その予感を裏付けるかのように母艦ケット・シーの艦長代理を務めるシリカから通信が入る。

「ああ、こちらでも目視確認している。あんな大量に敷設しやがって」

艦長代理の報告を受けたヤンは全天周囲モニターのズーム機能で前方を確認し、宇宙空間に溶け込んで見づらい浮遊機雷の姿を認める。

彼女の愛機ハイパートムキャット・カスタムのセンサーカメラの性能はもちろん、ドライバー自身の視力の高さが地味ながら役立っていた。

「強引に通過するにはリスクが高い。今から艦砲射撃で一気に処理するから、リーダーたちには針路上の撃ち漏らしを片付けてほしい」

広範囲に敷設された機雷原を強行突破するのは不可能だと述べ、艦砲射撃とMFによる迅速な処理を提案するシリカ。

「了解した。戦術データリンクで予定針路と予測攻撃範囲を送ってくれ」

艦の扱いについてはシリカの方が詳しいため、艦長代理の意見を承諾したヤンはMFドライバーとしての役目に注力し始める。

「戦術データリンク……更新完了」

トムキャッターズはスターライガやキリシマ・ファミリーと同じ戦術データリンクシステム"草の根ネットワーク"を運用しており、ネットワーク内の味方が情報を取得・更新すると瞬時に反映されるのだ。

また、"草の根ネットワーク"はオリエント国防軍の"国防軍戦術情報連携システム"と同規格なので、連携設定を行えば正規軍との情報共有も可能となる。

「各機、新たな戦術データは受け取ったな? 艦隊による艦砲射撃の(のち)、残った機雷をあたしたちで処理するぞ」

「こちらシンドル、了解。動かない射的ゲームなんざ軽いもんですよ」

「ディアール、了解!」

ヤンから作戦目標の説明を受けると、シンドルやディアールといったトムキャッターズ所属のドライバーたちは力強い返事でそれに応える。

「艦砲射撃まで10秒! 各機は味方艦隊の攻撃範囲より退避!」

彼女がカウントダウン開始を告げたちょうど10秒後、トムキャッターズMF部隊の近くを艦砲射撃の蒼い極太レーザーが通過していくのだった。


 先遣隊各艦の艦砲射撃により、宇宙空間を活かし立体的に敷設されていた機雷原に艦艇が通過できるだけの隙間が生まれる。

ただし、これだけでは戦艦や航空母艦のような大型艦の安全確保には不十分なため、小回りが利くMFによる仕上げが必要となる。

「艦砲射撃が終わった。よし、際どい所に浮かんでいる機雷の処理に取り掛かろう」

艦砲射撃が終了したタイミングを見計らい、ロータス・チームのナスルは仕事を開始する。

「機雷って近付くと爆発するんだっけ?」

「だから機雷なんだよ。至近距離での炸裂時は船底に穴を開けるほどの威力があるから、精密射撃で撃ち抜いていかないと」

あまりにも初歩的な質問をしてくる相棒のショウコに呆れつつも、対艦用のトラップである機雷の威力は油断ならないと忠告するナスル。

仮にMFが至近距離で巻き込まれた場合、無事では済まない可能性が極めて高い。

「ボク、射撃は苦手なんだよねぇ……」

こう愚痴りながらもショウコは愛機スパイラルC2のサブマシンガンを構え、弾をばら撒くような撃ち方で機雷に攻撃を当てていく。

あまり効率的とは言えないが、これで手際良くやれるのならば悪くない。

「全部片付ける必要は無い。艦隊と接触しそうな物だけを処理していけばいい」

同じくスパイラルC2を駆るナスルの方が射撃は得意であり、彼女はアサルトライフルの2点バースト射撃で丁寧に機雷を狙い撃つ。

「ったく、数だけは多いな!」

「こちらフリエータ、機雷の磁気反応が減少してきているわ。引き続き処理に当たってちょうだい」

無数に浮かぶ機雷相手に悪態を()くナスルだったが、後方にいる母艦トリアシュル・フリエータのノゾミからはポジティブな報告が返ってくる。

「先頭の(ふね)が機雷原に近付いてる……!」

「このペースなら間に合う! 私たちはもう少し先行して機雷の数を減らすぞ!」

機雷処理のペースを不安視するショウコを励ますと、ナスルは機雷原の奥の方へ向かうよう指示を出す。

「了解! ルナサリアン相手に真っ向勝負は無謀だから、せめてサポート役として頑張らないとね!」

こういう局面で頼りになる冷静沈着な相棒を信頼しているのか、前向きさを取り戻したショウコは改めて自分たちの役目に集中するのであった。


 艦砲射撃とMF隊の活躍によって機雷原に最低限のルートが確保され、地球側はミサイル巡洋艦アドミラル・エイトケンを先頭に通過を開始する。

それでも切り開かれたルートは大型艦がギリギリ通れる程度にすぎないため、ここでは陣形を単縦陣に移行せざるを得ない。

「艦長、これより機雷原の中央を突破します」

「あなたの操船技術を当てにしているわよ、マオ中尉」

自動操縦が使えない状況こそ操舵士マオ・メイロン中尉の腕の見せ所であり、メルトは艦の安全をマオの優れた操船技術に託す。

「艦長ッ! レーダー上に複数の敵航空機を捕捉しました!」

しかし、ルートが限られる場所は敵にとっても絶好の攻撃タイミングだ。

レーダー管制官のエーラ=サニア・ムリヤンケ少尉はレーダー画面に新たな敵影が映り始めたことを報告する。

「機種は分かるか!?」

「サイズから見て固定翼機と思われます! 機数16!」

副長のシギノ・アオバ少佐から敵航空機の種類について問われ、レーダー画面上の光点の大きさを根拠に固定翼機だと回答するエーラ。

「攻撃機か……機雷原の中で回避運動に制約があるところを、対艦ミサイルで狙い撃つ腹積もりだな」

その報告を聞いたシギノは敵の狙いを即座に見抜き、自分たちを潰すための用意周到な策に感心さえ抱く。

おそらく、立場が逆だったら彼女も同じ作戦を採っていただろう。

「推力最大! 的にされる前に危険地帯を抜ける!」

このまま進めば対艦ミサイルの標的にされるが、それを恐れて速力を落とすと後続が機雷原の中で渋滞を起こす――。

判断が難しい状況に対するメルトの答えは単純明快、"狙われる前に機雷原を突破する"であった。

「……了解! 推力最大!」

シビアな操舵が求められる局面での推力最大を不安視するマオだったが、メルト艦長に無言の圧力を掛けられたことでスロットルレバーへ手を伸ばす。

どちらにせよ、進み続ける以外に道は無いのだ。

「オペレーターは後続艦にも対空警戒を厳とするよう通達を!」

「了解! すぐに打電します!」

航空攻撃を警戒するメルトからの指示を受け、オペレーターのエミール・カザマ少尉は僚艦へメッセージを送る作業に取り掛かる。

「エイトケンCICより航空隊各機、本艦を狙う攻撃機が接近している! 対艦ミサイルを発射される前に排除せよ!」

そして、シギノは自身が装着している骨伝導式ヘッドセットのチャンネルを切り替えると、機転を利かせて航空隊に艦隊の直掩を行うよう命ずるのだった。


「やはり速い! さすがは無人機ね……!」

その頃、艦隊上空ではヒナ率いるΗ(イータ)小隊が無人戦闘機相手にドッグファイトを繰り広げていた。

無人戦闘機のAIには脅威度が高い目標を識別する機能があるのか、実力派とされるヒナのトリアキスに狙いを絞っているように見える。

「機雷原の中であれだけの高機動戦闘を行うなんて、正気の沙汰じゃない!」

「AIには正気もクソも無いからな!」

機雷原という名の危険地帯を縦横無尽に飛び回る無人戦闘機に驚きを隠せないアレニエとは対照的に、それこそが心理的ストッパーを廃されたAIの長所だとリュンクスは冷静に分析していた。

「航空優勢を取るために可能な限り落とす!」

恐れを知らない無人戦闘機は確かに脅威的だが、このまま翻弄され続けるわけにはいかない。

AIゆえの機械的な機動(マニューバ)の見極めると、パルトネルは愛機テレイアのレーザーライフルで完璧な偏差射撃を決めてみせる。

「ヒナ! 後ろに付かれてるぞ!」

「くッ……油断した!」

しかし、そうしている間にも別の無人戦闘機がヒナに食らい付いており、リュンクスが警告した時には既に空戦の主導権を握られつつあった。

「(機雷原の中では自由に飛べない……無理な回避運動を取ると機雷に接触するかもしれない)」

ヒナのトリアキスは高い機動力を持つ可変型MFであるため、機雷原のように動きを制限される状況では持ち味を活かすことができない。

「速いんだよその機体! 私のアラーネアじゃ追い付けない!」

何とかして小隊長の援護に入ろうとするものの、他の敵機の妨害で思うように近付けないアレニエ。

「ファイアッ! ファイアッ!」

結局は自力で切り抜けなければならないかと思われたその時、どこからともなく飛来した蒼いレーザーが無人戦闘機に相次いで命中する。

コア部分に致命傷を受けた無人戦闘機はコントロールを失い、味方が敷設した機雷に衝突し爆発四散してしまう。

「今の援護は……!?」

「オデッサの時の借りは返しましたよ!」

窮地を脱したヒナが視線を移すと、若い女性ドライバーの声と共に蒼い可変型MFが飛び去って行く姿が見えた。

「あいつ、オデッサでヒナが助けた正規軍のお嬢さんかい?」

「駆け足気味に飛び去って行ったな……ホント仕事熱心なモンだぜ」

その声に聞き覚えがあったパルトネルとリュンクスはオデッサの戦いを思い出し、世界は意外なほど狭いのだなと内心苦笑いしていた。

【Tips】

可変型MFはファイター形態時のみコックピットをカウルで覆う構造となっており、カウル内側が全天周囲モニターを兼ねることで視界を確保する。

なお、視覚情報を得るためのセンサーカメラはカウル外側及び死角となる部分に配置されている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ