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【完結済み】MOBILE FORMULA 2132 -スターライガ∞-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
第3部 BELIEVING THE FUTURE

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【BTF-43】防空システムに飛び込め(中編)

 ジャミングの影響で各種アビオニクスに異常が生じる中、スターライガ及びロータス・チームは小隊ごとに散開して戦闘を開始する。

ブランデル率いるBチームは機動力の高さを活かし、作戦エリアの最奥部――オデッサに最も近い空域を担当することになった。

「ベルフェ――、――ア!」

Bチームで最初に戦果を挙げたのはニブルスのベルフェゴール。

黒い可変型MFは機体下面に装備したレーザーライフルで直接照準を行い、納屋にカモフラージュされたジャミング装置を破壊していく。

接近すると当然SAM(地対空ミサイル)が発射されるが、MFの運動性ならば問題無く回避可能だ。

「こら、ニブルス! 指示を――に攻撃――な!」

今の攻撃は伝達ミスによって行われたものであり、それを確認したブランデルは自分の指示に従うよう警告する。

たとえ故意では無かったとしても、難しい状況下で統制を乱されると大変困るからだ。

最悪の場合、コミュニケーションミスが誤射のような大きなトラブルを招く可能性もあり得る。

「え? もう一度――い!」

「だーかーらー! 私はまだ――なんて――ないんだぞ!」

しかし、ニブルスの方は警告を聞き取ることができなかったらしく、ブランデルと痴話喧嘩のような押し問答を繰り広げている。

原因である航空無線のノイズを排除しない限り、二人は作戦中ずっとこの調子かもしれない。

「(ノイズが酷いわね……やはり、力尽くでジャミング装置を減らさないとダメか)」

それを見かねたレンカは独力でのトラブル解決を断念し、大人しくジャミング装置自体の破壊へと方針を切り替える。

「――、ファイアッ!」

彼女の愛機ルーナ・レプスは専用スナイパーライフルを構えると、最小限の動きで対空砲火をかわしながら蒼いレーザーを撃ち放つのであった。


 ルナール率いるCチームはBチームよりも北のエリアを担当し、比較的順調なペースで作戦を進行させていく。

「ジャミング装置、――基目の破壊を――! ルナサリアンめ、サイロに――するとは――!」

担当エリアの約3割に当たる3基目のジャミング装置破壊を報告するレカミエ。

今回破壊したターゲットは農業用サイロの内部に隠されており、攻撃に少し手間取るハメとなった。

「これで少しは――と――けど……!」

ジャミング装置の減少に伴う通信状況の改善を期待するメルリンだったが、相変わらず航空無線はノイズだらけでまともに機能していない。

ただ、失速警報や対地接近警報が誤作動しなくなったのは良い兆候だろうか。

「よし、対空兵器を――たら、次の――へ向かおう! 早く通信――を――ればな」

ターゲットの周囲に配置されていた対空兵器の排除を確認し、無線とハンドサインの合わせ技で次の目標を指示するルナール。

無線通信が不可能な状況を想定した訓練の成果が活かされている。

「(この調子ならいずれ通信は復活するはず。だけど……何だろう、嫌な予感がする)」

一方、リリーは能力者(イノセンティア)としての直感で「悪くない未来」を見るが、同時に妙な胸騒ぎも感じていた。

この感覚は……「コロニー落とし阻止作戦で敵増援が現れた時」とほぼ同じだ。

「――した、リリー?」

「……気を付けて、そろそろ――が――するかもしれな――」

指示が伝わっているか再確認してくるルナールに対し、敵増援に注意するよう促すリリー。

「何が――するって?」

しかし、彼女の言葉は肝心な部分がノイズに飲まれてしまい、ルナールは上手く聞き取ることができなかった。


 戦力がMF2機と非常に少なく、性能面でも心許無いロータス・チームは作戦エリアの端っこを担当している。

扱いは完全に脇役のそれだが、範囲が広大なので今はとにかく手数が欲しい。

「これが――か……! 破壊する!」

民家に擬装されたジャミング装置を発見し、ナスルのスパイラルC型は攻撃態勢に移行。

灰色と黒のMFは無反動砲を発射しながら機銃掃射で地上を薙ぎ払う。

複数のターゲットを同時に破壊していくのがクレバーな彼女らしい。

「ジャミング装置を――した! よし、少しずつ――が見え――!」

ナスルの報告は相変わらずノイズ混じりなものの、数分前よりは明らかに通信状況が改善している。

アビオニクスの動作もかなり安定するようになってきた。

「ショウコ! ちゃんと――い!?」

唯一背中を任せられる僚機であるショウコの様子が気になり、互いに援護できる位置で戦っているか尋ねるナスル。

案の定というか何と言うか、相棒からの応答はなかなか帰ってこない。

「……何だ、通信――で聞こえて――のか?」

「ねえ、あそこ――って……」

機影は見えているので心配要らないとナスルが肩をすくめた直後、彼女より南で戦闘中のショウコがようやく応答してくれる。

何か気になることがあるようだが、その部分がノイズのせいで全く聞こえない。

「――だよナスル! あれ絶対敵機だよッ! ほら、こっちに向かって来てるし!」

幸運にも通信状況が一瞬だけ復活した時、ショウコは非常に重要な報告を行っていた。

ついに迎撃機が戦闘空域へやって来た――と。


「やっと――か! ペンデュラムから――、方位1-8-3より――インバウンド!」

敵影らしき点が飛んでいるのを視認したナスルは無線システムを起動し、全ての味方機に向けて敵増援の出現を知らせる。

今はまだ点にしか見えないが、数十秒後には機種が特定できるほどの距離まで接近してくるはずだ。

「クソッ、あっちは長射程――で狙い撃ちかよ!?」

先手を打ったのは遠方を飛行中の敵増援だった。

彼らは長射程ミサイルによる先制飽和攻撃を試みたものの、その標的にされたショウコは悪態を()きながらも気合で全弾回避していく。

「チャフと――を使え、ショウコ! 今は出し惜しみ――な!」

愛機スパイラルのFCS(火器管制システム)を対地対空モードへ切り替えつつ、一方的に狙われている相棒に防御兵装を使うよう勧めるナスル。

長射程ミサイルは運動性があまり高くないため、チャフやフレアを散布しながら回避運動を取れば容易にかわせるだろう。

「(あのMF……コロニー落としの時に出てきたバイオロイドの機体か!?)」

HISのズーム機能で敵機の姿を確認したナスルは、敵増援が白い可変型MF――バイオロイド専用機のリガゾルドであることに気付く。

これはハッキリ言って想定外の事態だ。

「――食い付かれた! 速い……――ないッ! このまま――やられる!」

非常に高い機動力を持つ敵機の接近を許し、集中攻撃で追い詰められるショウコのスパイラルC型。

彼女の技量と機体性能では状況打開には期待できない。

「ッ! すぐ援護に――!」

相棒の窮地を見かねたナスルが堪らず援護へ向かおうとしたその時、レーダー画面に味方機を示す青い光点が表示される。

「ファイア、ファイア、ファイアッ!」

青い光点――セシルのオーディールM2はレーザーライフルを連射しながら戦いに乱入し、ショウコを狙うリガゾルドの編隊を無理矢理散開させるのだった。


「ロータス・チーム、敵機は――が相手――! そちらは――ジャミング装置の――を!」

「何だって? ノイズ――!」

セシルはロータス・チームの二人にターゲット破壊へ集中するよう促すが、応答したナスルは内容が把握できていないらしい。

「――の破壊に――しろッ! 早急に――る必要が――!」

少しイライラ気味に内容を繰り返すと、それ以上は何も言わず目の前に敵機へ意識を向けるセシル。

「(さすがはバイオロイドだ……私が攻撃位置に就けないよう、3機で連携してくるか)」

敵編隊は旧型オーディールと同等の性能を持つリガゾルドが3機。

性能面はもちろん、無人機のように無慈悲且つ連携に優れるバイオロイドの操縦も厄介だ。

「(まずは後方に張り付いている奴を何とかしなければ……!)」

セシルのオーディールはリガゾルドの後ろ姿を捉え続けているが、その後方からは2機の白い可変型MFが付いてきており、断続的な射撃攻撃で神経をすり減らしてくる。

背中を晒している機体は言わば「囮」で、フリーになっている僚機が誘い込まれた敵を落とすという戦術なのだろう。

「今だッ!」

しかし、相手のやり方が予想できれば打開策も見えてくる。

後方からの攻撃が止んだ次の瞬間、セシルは操縦桿とスロットルペダルを総動員し機体を意図的に失速させる。

バレルロールをしながら蒼いMFが人型へ変形した時、後ろにいたはずのリガゾルドはオーバーシュートで致命的な隙を晒していた。

「改良されたオーディールの運動性……見くびってもらっては困る!」

ついに新たな愛機の「コツ」を掴んだ彼女はHISのレティクルに2機の白いMFを捉え、右操縦桿のトリガーを素早く2回引くのであった。


「ドライバー、――しろ!」

敵機が火を噴いたのを確認したセシルはオープンチャンネルで脱出を呼び掛けるが、低空で制御を失ったリガゾルドは相次いで地面に激突。

墜落地点の小麦畑には破片がばら撒かれ、搭乗者がベイルアウトした様子は見られなかった。

「(バイオロイドは人工的に作られた人間……死んでも代わりはいくらでもいるというわけか)」

消耗品同然の扱いを受ける人工生命体を憐れみつつも、今は間合いを取られてしまった最後の敵機を倒すことを考えるセシル。

少しでも気を抜けば彼女も同じ末路を辿る可能性があるからだ。

「ッ!」

僚機を一気に失ったリガゾルドは人型のノーマル形態へ変形し、セシルのオーディールと同条件で戦うことを選ぶ。

どうやら、バイオロイドにも正々堂々を重んじる心があるらしい。

「(格闘戦を挑んでくるか! だが、その間合いは私の距離だ!)」

それを見たセシルは武装をビームソードへと持ち替え、騎士の末裔に相応しい二刀流スタイルで迎え撃つ。

「(機械のような奴らに負けはしない!)」

2機の可変型MFが蒼い光の刃を振りながら交錯した時、バラバラに切り裂かれていたのは白いMF――リガゾルドの方だった。


 ゲイル隊及びブフェーラ隊が迎撃機を引き付けているため、スターライガは予定通り地上目標の破壊に集中することができる。

「7基目のジャミング装置を破壊! この辺りはこれで最後か?」

パルトネルのテレイアがジャミング装置をレーザーライフルで撃ち抜き、Dチームが担当するエリアのターゲットは対空兵器も含めて完全に一掃された。

「パルトネルさん! 無線が……通信状況が回復したみたいです!」

「本当だ! まだ音声が乱れる時があるが、聞き取れないほどじゃない」

彼女の報告にノイズはほとんど混じっておらず、それを聞いていたクローネは航空無線が復活したことを確信する。

数分前の状態が嘘のようにパルトネルの声がハッキリと聞き取れる。

「トリアキスより各機、レーダー画面をチェックしてみて。多少はクリアになっているはずよ」

同時にレーダーもある程度機能を取り戻したらしく、ヒナは仲間たちにレーダー画面を確認するよう促す。

本来は無線もレーダーも使えるのが当たり前なのだが、封印状態での戦闘を強いられたことでアビオニクスの重要性を痛感する良い機会となった。

「よし、イイぞ! この勢いで他のエリアもやっちまおう!」

ジャミング装置を減らすほどこちらが有利になる――。

調子が出てきたリュンクスの言葉に同意するようにDチームは編隊を組み直し、他の小隊が戦闘中のエリアに向けて移動を始めるのであった。

【FCSのモード】

FCSにはロックオン対象を絞り込める機能が搭載されている。

例えば対地対空モードの場合、地上兵器と航空機はロックオンできるが、艦船はその対象から外される。

特定のターゲットだけを狙いたい時などに便利な機能である。

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