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プロローグ

 もしも自分が他人より優れた能力を持っていたら、なんて考えることがある。それは、自分の自信のなさからくるものだとわかっていたし、けれどどうしても考えざるをえない。


「追いこめ! ターゲットは塀の向こうだ! 」


 部隊長の声に自分の内側から外側へ、意識が引っ張られる。

冷たいコンクリートの感触と、戦闘による緊張感が、俺にどうでもいい事を考えさせていたようだ。いくら演習とはいえ、一瞬の気の緩みが敗北を招く。


ついさっきも、仲間がやられたばかりだっていうのに。

現在俺達は、戦闘演習の真っ最中。赤のゼッケンをつけた俺達Aチームが、青のゼッケンをつけたBチームを追い込み、勝利まであと一歩だ。


部隊長の突撃の合図を皮切りに、皆一斉に塀を目指して走り出した。戦場の独特の緊張感が、俺を高揚させる。

握っている拳銃の感触が、まるで手のひらと一つになった様な不思議な感覚だ。

目標まで残り20メートル程だろうか。俺は、指をトリガーに掛けた。その時、塀の向こうから、視界を覆うほどの煙が噴き出して、視界は灰色に染まる。


「煙幕か……、『黒の目(ブラック・アイ)』! 」


再び部隊長の叫び声が聞こえた。俺は魔力を目に集中させる。じーんと眼球に熱がこもった様な感覚と共に、視界は煙などないようにクリアになった。


「わかってる! 」


俺はそのまま塀を飛び越えた。俺から見て正面に一人、右側に二人。着地の音を聞かれたのか、正面の一人は右手を前方につきだした。そしてその手からは、オレンジ色の炎が噴き出し、俺に襲い掛かってくる。


「うおお、演習でそこまでするか!? 」


我ながら情けない叫び声を上げてしまったと後悔したと共に、急いで地面に寝そべり、迫りくる炎に備えた。

熱気が頭を撫で、全身の汗腺が開くのがわかる。死にはしないだろうけど火傷くらいは覚悟しなけりゃならないか。そう覚悟してぎゅっと目をつぶった直後、全身を押しつぶす衝撃を受けた。


「がぼぉ! 」


たまらず肺の中の空気を思わず吐いてしまう。どうやら大量の水が上から降ってきたようだ。こいつら俺をなんだと思ってんだ。

俺は必死に自分の意識を手放さないように集中した。こんなところで気絶なんてしたらいい笑いものだ。

衝撃の余韻で体が軋む中、今度は蒸気で悪くなった視界を再び魔法でクリアにした。


自分の魔法を打ち消されたのが予想外だったのかそれとも状況がわからず固まっているのかわからないが、炎を打ち込んできた相手は呆然とつっ立っているだけだった。


寝そべったまま、すかさず俺は銃を構え、指を絞る。


ぱんっという軽い音が響いた後、手から肘、そして肩にかけて小さな衝撃を感じ、そして相手の服に緑色の塗料を塗りつけた。


俺の発砲に続いて、右側でも何発か銃声が聞こえ、顔を向けると、先ほど逃げた二人の背中は俺が撃った相手と同じく緑色に染まっていた。


ああ、なんとか仕留められたんだなと思った時、視界が徐々に暗くなってきたことに気が付いた。


ああ、まずいなこれは。後で、バカにされちまうな。今度は俺の意志では止められそうにない。


 まあ、いいか。今日は……そういう日……だったのさ……。


 そして俺の視界は真っ黒に塗りつぶされ、意識を失った。

初登校

緊張するなぁ

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