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短編(超短編)

Year's end Song

作者: 芝田 弦也

校内スピーカーから流れてくる、馴染みのない音楽。

いつもは友人との対談に夢中で音に注意を払ったことはない。

けど、今日は特にする事がない。

目の前の席の主はまだ姿を現さず、ぽっかり空いた侭だから。


意識したくなくても自然と音に意識が傾く。

静まり返る教室に響く中性的な声。

女性のように甘くちょっと艶やかでそして柔らかい感じ。

音は…結構好みの音だ。


機能美だけを追求したデザインも音質も考量されてない、四角いだけの筐体。

突出した部分は排他され、ただ音を鳴らすだけに存在してる。

なのに、この音楽を鳴らしている今は音を奏でる為に設置されている様に思える。


朝の限られた時間に限られた人だけに行われる音楽会。

放送室に入っている誰かが、誰かに向けて発信している。

自慢の一枚を布教しようとしているのか、若しくは唯の自己満足か、それとも他の何か?

いや、なんでも構わない。


一つ判った事は、自分はこの曲の虜になったって事だ。

スピーカー横で時を刻む時計を見やれば時刻は8時になる3分前。 


音楽を鳴らす為に朝っぱらから学校に来る暇人はどんな奴だ。

自分を此所まで掻立てるなんて、よっぽどだ。

好奇心と興味がないまぜになり、心が奮い立つ。

軽やかに席を立ち教室を後にする。

目的はただ一つ、放送室に居る誰かに会う為に。


内から溢れ出る興奮が足を速めさせる。

この曲が流れ終わる前に、なんとしても辿り着きたい。

冷たい空気が漂う廊下に響き渡る、温かいサウンド。

季節は一巡して冬から春へと移り変わりいく。


窓から見える樹木は小さな蕾を膨らましている。

春の訪れはもう其処まで近づいている。

知らず知らずの内に小走りになって、廊下に反響する己の足音。

後もう少し。

後もう少しで辿り着く、温もりを運んでくれる場所へと。

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