豚みたいな顔の、ブスだけど満足しているはずよ
バイト先の飲食店のバックヤードに着くと、
パートのおばさんが声をかけてきた。
「あら、今日はお昼の勤務なの?」
「そうですね。11時30分から17時までです。」
「そうなんだー、夜のことが多いのにね。あなたと一緒だったら楽しいわ。
それじゃあ今日もよろしくね。」
そう声をかけたパートのおばさんの顔は、
目が細く鼻が上向き、かつ中年太りもあり、
ぱっと見ると、豚のような顔と体型をしている。ただし、にこやかな感じの豚顔だ。
豚顔でも醜さは感じられず、
天真爛漫に人生を楽しんでいるように見える。
もちろん、子どもが2人いて素敵な旦那さんがいてというのも影響しているんだろうけどさ。
憧れだなあ。
私もあんな風になれるのかしら、あの人みたいな将来が目標よね。
更衣室の鏡でピン止めなど身だしなみをチェック。
私みたいなブスはホールに出させてもらえないから、
気を使ってもあまり意味のないことかもしれないけど、
でもこれが乙女の身だしなみよ!!
最後にマスクをつける。
マスクをつけないと、キッチンの周りに視覚的に迷惑がかかるからね。
豚のような顔なだけならまだしも、私の鼻の穴は丸見えで突き出てるから、
ふとした瞬間に鼻の中の汚いものが見えたら、周りがげんなりするじゃない。
ようし今日もマスクをつけて戦闘準備完了!!
出勤前の社員さんとのミーティングに向かう途中で、
また、変な声が聴こえてくる。
「君は、こんな豚みたいな顔したブスじゃなかったんだよ。
本当は男で、ブスではなくフツメンだったんだよ。
なあ君も普通の顔に戻りたいだろう!?」
「どうしたの! 大丈夫?」
さきほどのパートおばさんの声で我にかえる。
どうやら幻聴を聴いて、そのまま止まって瞑想していたようだ。
「調子でも悪いの?」
そう心配してくれているおばさんの豚顔が・・・・可愛い。
私もこんな可愛い豚顔になりたいわね。
しかし、あんな幻聴が聴こえるなんてとうとう私もマズいのかしら。
可愛い子とあからさまに差をつけられて、
自分がブスなことで損をしているのが分かり、
かつ気分の落ち込みが激しい時には、
「もう少し目が大きかったら、もう少し鼻が高かったら、
もう少し可愛かったら、
人生違っていたのにー。
あー神様がいたら私を可愛くしてください。」
とは唱える夜もあったけどさ、
でも、だからって、今の顔でも十分満足しているのよ。
豚みたいな顔したブスだけど、
家族だったりパートのおばさんだったりと素敵な豚顔の人に囲まれて楽しく過ごせているわ。
豚顔だからアナウンサーとかアイドルとかになれないのは分かっているけど、
でもそれても満ち足りた生活を送れているわ。
それなのに・・・私の深層心理なのかしらね。
実は、この豚顔をすごく嫌っているのかしら・・・私は。
なーんて考えるのをやめましょう。
さあて、これから昼食のピークという名の戦場よ。
土曜昼の店内は客であふれ、
幻聴のことを振り返る余裕もないほど、私はキッチンで忙しく動き回っていた。
基本的に作者自身も顔で差別されるような世界は、無ければいいのになと思っています。
とはいえ現実には一般的な基準で美しい人、可愛い人がアナウンサーやアイドルなどになり、
そうではない顔の人たち、いわゆるブスの人たちは最初からその選択肢がありません。
ま、アナウンサーやアイドルは大衆に注目される必要があるので、当たり前のことですけどね。
という文章を書いている作者にここで突っ込みが入ると思います。
「え、作者自身も面食いでしょ!?
だって豚顔が好きなブス専なんだよね。
それって一般的な基準とは違うにしても、
要は、顔で選んでいるわけじゃん。」
ごもっともです(笑)
やばい、何を言いたいのか分からない後書きになってきています(笑)
とにかく(?)、豚顔だからってブスだからってお先真っ暗闇にならないケースもあるはずです。
にも関わらず、
容姿を理由として病んでしまう人がどうしても出てきてしまっているのが今の世界だと思います。
[戦争や飢えのさなかで苦しんでいる人たちはそんなことを考える暇もない。
要は、容姿で悩めるなんて幸せな証拠だろ。]
という論もあるでしょうが、ここではそういったことは重要視していません。
戻りますが、
そんな人たちが出ないよう、
誰も容姿のことでは病まないような世界を望みます。
よう分からん後書きでしょうが、以上です。