対価と条件
「やぁ?よく来たね?ルアン君」
その声はどこかで聞き覚えがあるような、それでいて無性に虐めたくなるような声をしていた。
その容姿は夕日よりも赤く輝いた瞳におろした鮮血のように怪しく赤い髪、更にその背中には小さく黒い羽らしきものが見える。
初めて見るはずの魔王とは前に何回かあっているような気がするが今は関係ない。
「おたくの馬鹿猫のせいでうちの娘が怪我したんですけどどう責任とってくれるんですか?」
「馬鹿猫?」
「おたくのライオンと山羊をくっつけた猫ですよ」
「ああ、それならそこの奴らの仕業だよ」
俺はそれを聞いた瞬間に迫るようにズカズカと歩くのではなくまるで散歩をしているようなゆったりとした足取りで近づいてゆく。
「で?君達が原因って言ってるけど?」
「よ、寄るな人間が━━」
生意気なクズの顔を掴みその腹に刀を突き立てる。
するとそのクズはなんとか逃れようと暴れるが、魂浄刀が刺さった状態で無駄に動くためみるみるうちに元気がなくなっていく。
「さて?罪を償ってもらおうか?」
俺は腕をドラゴンのものへと変えるとファルがやられたことをそっくりそのまま返してやった。
「ぐぅあぁぁ!!」
「痛いだろう?俺はやられたらやり返さないと気が済まないからな、仲間がやられた分きっちり返させてもらったぞ?で、こいつどうすんのさ魔王さん?」
「どうもする気は無いよ?同じ人族を襲わせようとしたんだし自業自得でしょう」
同じ人族?つまり魔族はあの第四勢力の中ではこちらの仲間というわけなのか。
「だが」
「だが?」
「あの人型の魔物に関しては知らない」
「つまり第四勢力のうちの魔がこの戦争に乗じて人勢力を落とそうと考えていた、と?」
「ご明察、流石は未来の英雄ルアン君。話が早くて助かるよ」
そりゃどうも、と返すと転がっているクズを蹴飛ばすとキュアをかけ放置する。
「で、何が言いたいんだ?」
「手短に言うと協力し欲しいって事だよ」
「ほう?対価は?」
「この子で」
そういって魔王は先程の口下手メイドを差し出してくる。
「え……あの、えぇっと……サ、サタンン……」
「よし、請け負った」
「即答?!」
「別に何を貰おうと貰うまいと鉄拳制裁加えなきゃいけないからな」
「な、なるほどね。あ、でもこの子は君に連れて行かせるよ?」
「あ、本気なのね」
その時メイドちゃんからジト目で見られた気がした。




