口下手メイド
長く静寂に支配された廊下をただただ歩いていると廊下の暗がりから一つの人影がこちらへと向かって歩いてくるのが見えてくる。
その人影が近ずくにつれその姿が鮮明になっていく。白と黒のフリフリとしたシルエットに頭にはちょこんと何かが乗っており、あと数十歩のところまで迫ると前髪で両目が隠れていることや白黒の服がメイド服であることがやっとわかった。
「フィル、警戒しとけ」
「グォ」
こちらがメイドに警戒していると彼女は口を開けパクパクとさせている。
「……るじ………お…び、です…」
「いや、声が小さすぎてなんにも伝わってないから、話すならもう少し大きな声出してくれ」
「あ、るじ……および、です…」
「よ、よし、よく頑張った、伝わったから案内お願い…」
「り……かい、…す」
うーん、このメイド大丈夫かなぁ?こんな奴にまごまごしてたら他の奴が来たらもっと伝わらないんじゃ……。いやいや、なんでこのメイドの心配をしているのだろうか、俺がするべきなのは魔王を懲らしめてファルの呪いを解かせる事なのに。
しばりく口下手メイドについて行くと目の前に階段が現れそれをフィルと口下手メイドと共に登っていく。
「こ………ある…が…ます、です」
「お、おう……お疲れ様…」
お疲れ様ってなんだよお疲れ様って……自分で言っといてなんだが阿保なのか?俺は阿保なのか?……取り敢えず開けるか。
口下手メイドに案内された扉を開けるとそこには見知ったような顔があった。
「やぁ?よく来たね?初めましてルアン君」




