終わりゆく平穏
新章突入ですここからは日常要素が減る……かも知れません。
エルとケトと共に部屋に戻るとベッドに座り込みケトに膝枕をしてやる。目的地に着くまではこうしてやるって言ってしまったしな。
「えぇと、お邪魔じゃないかい?」
俺の膝を枕にして寝ているケトを見てエルが申し訳なさそうに言う。
「いいさ、このまま話すことにしよう」
「う、ぅん」
「先ず最初にエルは何しにこれに乗ったんだ?見た感じ観光じゃなさそうだけど」
「うううん……」
いきなり踏み込みすぎた質問をしてしまったせいでエルは困ったように下を向いてうなり始めてしまった。
「まぁ、さっき知り合ったばっかの奴にこんな事言わないか」
「あっ、いや、ねぇ、君は戦争って嫌かい?」
「………あぁ、戦争は嫌いだよ。領地や物資を求めて争い合うのなんて馬鹿馬鹿しいと思うさ」
俺の発言に驚いたのか勢いよくバッとこちらを向いたが何を思ったのか顔を伏せてしまう。
「そうなんだ…君みたいな意見初めて聞いたよ」
「そうか?俺の故郷だと皆口を揃えて反対するぞ?」
「そうなんだ、いいね…君の故郷が羨ましいよ…私の国では戦争に出ることは誇りだって言うんだ」
顔は見えないがエルの声色はかなり落ち込んだような暗いものだった。
「国は国、エルはエルそれでいいと思う」
「でも」
「良いんだよ、他者に流されるより自分の意志で進んで行った方が絶対いい!」
「そう、なのかい?」
「自分が後悔しなければいい、自分がやりきったと思えればそれでいい。まぁ、俺には出来ないけどエルになら出来る気がする」
するとエルは何かを考える素振りをしてから申し訳なさそうにこちらを向くと
「なら、ルアン、お願いがあります。私と一緒に戦争を終わらせてくれませんか?」
面倒事が嫌だって言ったのに自分で面倒事呼んでどうすんだこれ…
「しょうがないな…乗りかかった船だ、付き合ってやるさ」
「お兄ぃ…じゃなかった。ルアン、マジで言ってやがるですか?」
「お、いつもの口調、まぁエルの頼みだし?俺の元々の目的だし。次いでだ次いで戦争なんて下らないことはさっさと終わらす」
「「元々の目的?」」
「そう、元々の目的。さぁ、エルさっさとその戦場に案内してくれよ?」
「い、いや、まだ飛行船だし…」
これから戦場に行くってのに少しワクワクしてしまっているのはバーサーカーが故か、それとも異世界人故か。
戦争を止めるついでに魔法を覚えまくってやろう。だができるだけ不殺でいかなければ、変に恨みを買われたくないしこれから世界をまとめてすべての種族が平和に暮らせるようにしようと言うのに自分が平和を壊しては元も子も無い。
「平和的に解決できればいいが大丈夫かな……」
その囁きは誰にも聞こえることなく消えていった。




