愛らしき者達
ファルとアウルと共に食堂へ向かうとそこにはアスやイガラシ達が既に座っておりテーブルには何かの料理があった。
その何かには見覚えがあった、前に食べた━主にファルが━記憶がある。
「そろそろ勘弁してくれませんかね、というかこいつら可愛いから食いたくないんだよなぁ…」
それはあの愛らしき者達の唐揚げであった。
「この世界の人間どもはなんてことをするんだろう」
「何か言いました?」
「いや、俺はこの唐揚げいらないわ…」
「じゃあ食べちゃうよ?」
「いいよいいよ、俺コレを食べたら心が廃れる気がするから」
「「「?」」」
その時間俺は唐揚げを食べている彼女達を見て複雑な気持ちになっていたのだった。
〜〜〜
夕御飯を食べ終わった俺達は各々の部屋へ戻り明日の準備を済ますことになった。
と言っても準備などする必要も無い俺は魔法を操る練習をしていた、今回は幻影魔法を使って前の世界のものをどれだけ緻密に作り出せるかというものだ。
━コンコン
俺が幻影魔法を使ってアウルにあちらの世界の道具を見せていると不意に窓からノックが聞こえた。
そこで窓を覗き込んでみるとそこにはイガラシがいた。
「ルアン、ちょっと付き合ってくれよ」
「ん、どした?」
「意外と冷静だな……これから街を散歩しようと思うんだけど、来る?」
「いいぞ?アウル、この続きは帰ってからな」
「もう少し見てみたかったのだ……まぁよい、後で必ず見せるのだ」
「はいよ、それじゃ行ってくる」
「こっちの方が早いよ?」
部屋から出ようとドアへと向かうとイガラシが俺の事を引き込み窓から飛び降りる。
「うわあああああ?!」
「いやっほー!!」
ゾーンという物を知っているだろうか、ゾーンそれは命の危機を感じた時などにおきる時間がゆっくりと進む感覚である。そして俺は今それを実感している、ほんの数秒のはずの落下時間が何分もかけて落ちていくように感じる。
そして、それが終わった時俺の顔からは血の気がひいていたであろう。
「あれ?大丈夫?だ、大丈夫だよね?!すっごい顔色だけど!!」
「誰のせいだと思ってんだよ………」
「いや、でもさ?流石に君がこの程度でこうなるとは思わなかったからさ?」
「俺はついこの間までそこら辺にいるようなひ弱だったんだかんな?!それでいきなり掴まれてフリーフォールされたらこうなるわ!」
「いやいや、君みたいなやつがついこの間までそこら辺にいるような一般人だって話全然説得力無いよ?」
実際にそうなんだが、確かに信じ難いよな。いきなり力を手に入れてこんな事になってるなんて、前の世界にいたら確実に病院送りだね。
「さて、そろそろ散歩行きますか」
「へいへい」




