犯人と傲り
目的地に着くとそこにはアホずらをした━━元々アホみたいな顔してるが━━ある生き物達がこちらを見て呆然としている。
「そのチョーカー、やっぱりお前か」
「クエァ?」
「あぁ、すまん、もう少し喋っててくれその言葉覚えるから」
「ク……え…る?」
「そうそう、だからもう少し喋っててくれ」
「き…える?」
「聞こえてきた」
「言ってること聞こえる?」
「よし、完璧だな!覚えた」
「本当に?嘘じゃない?人間はだいたい嘘つき」
「おいおい、言ってやんなよ。まぁ事実だけれども」
「話せてる?」
俺が言葉を正確に受け止めそれに対して返すと小首を傾げてこちらを見て来る。
この世界に来てから少ししか経ってないけどこの短い期間で俺の感覚が狂ったのかな、可愛いと思えるようになってしまった。
今この世界で一番愛らしいものは?と聞かれたらファルを除いたら一番に出てくるほど愛らしく見えてきた。
「こりゃとうとう末期だな」
「末期?」
「いや、何でもない。それと、こんなに仲間集めて何しようってんだ?」
「旅………安全な場所を見つけるために旅に出る」
「安全な場所を見つけるために危険な旅に出るってとんだ旅だな」
「みんな、狩られるのは怖い、死ぬのは怖いだから旅に出る」
「そりゃそうだよな、頑張って強く生きろよ!」
「うん」
━━ガサガサ
突然草むらが揺れ俺とチキン達は警戒態勢に入る。
「お前らは早急にこの森から出て安全な場所を見つけに行けよ、ここは俺に任せとけ」
「ありがとう、また会おう」
「あぁ、また会おうな」
変に留まるなんて言い出さなくてよかった、そん時はあいつらみんな死んでただろうからな。
どうせファルだろうし、他のやつでも俺TUEEEE状態だし大丈夫━
━━なんかじゃありませんでしたすみません許してください
誰だよ俺TUEEEE言ったやつ!!出てこい!!
現在俺はフルムーンウルフの手によって若干ボコボコにされている。
何がTUEEEEだよ!普通にボッコボコにされかけてんじゃねぇか俺!
そんな雑念を抑えられない状態でフルムーンウルフが脚のバネを弾けさせ俺目掛けて飛び込んで来る。
それを雑念だらけの俺が避けきれるはずもなく肩に鋭い爪が刺さり勢いに負け肩から後ろに倒れる。
「ぐっぅあ………これはまずい」
その弱った様子にフルムーンウルフはニタリと口を歪ませると血肉をよこせと言わんばかりにジリジリと迫り、俺の反応を楽しんでいるようにも見えた。
これはまずい、かなりの危機的状況だ
どうする?スルースキル?いや、意味が無いそのままバクりと行かれる。幻影魔法………は匂いに敏感な狼には効くとは思えない。
狂化なんてしたら暴れて動けなくなったところを喰われそうだ………どうすればいい!?
━━バキ
折れた。思考の海に溺れている間あいつは俺の目の前まで迫り今俺の腕を腕を振り下ろす事で折った。
「〜〜〜ッ?!」
痛みのあまり声が出ず、悶絶する。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
「この、クソ犬が!!」
痛みにより正常な判断ができなくなり折れた腕以外で攻撃を繰り返す。
奴の顔目掛けて蹴りを放ち避けらたと分かれば一歩踏み込み拳を振り抜きその勢いに任せて回し蹴りをかます。
しかし腕が折れていない状態でもまともに当てられなかったのに当てられるはずもなく全て躱される。
「グハハハ、アホがそんな攻撃が当たるわけなかろ……う………なんだ、これは」
クソ犬が驚くのも無理ない、今まで全ての攻撃を躱しかすり傷一つ受けていないというのにいきなり激しいなにかに刺された痛みが走ったのだから。
俺はフルムーンウルフに嗤いかけると、次空間魔法によりあの木々を薙ぎ払ったナイフを呼び出し串刺しにする。
しかしそこで俺は意識を手放してしまった。




