妹であり捕食者
広場から出発して昨日仕掛けた罠の場所に着いたが待っていたのは罠にかかった鳥人間ではなく何者かによって解かれた後のただの蔦であった。
「どういうことだ?」
「罠が解かれてますね………」
「他にこのクエストを受けている野郎が妨害しやがったなんて可能性はないです?」
「それなら罠にかけたまま連れ去った方が楽なはずだし、自分で解くなんて情報聞いたこともないよ」
「可能性としてはクエストに関係なく罠にかかっている奴が可哀想で蔦を解いてやったか」
昨日の一件に関しては俺が解いてやったがここは昨日の一件には関係ない。
つまり俺以外に罠から助けてやっている奴がいるということだ。
うーむ、これは困ったな。これじゃあクエストクリアできんぞね?
「ファル、鼻は良い方か?」
「はい!ルアンさんの匂いならさっきの街にいても分かりますよ!!」
「今回はこの逃がした本人を見つけてほしいんだが」
「はい!朝飯前ですよ!」
「いまは12こくすぎてるからおひるごはんだよ〜」
「そういう事じゃなくてだな」
「はっ、うっかりしてました!!」
「朝飯前の意味わかってないなこいつら……」
そういえばさっきの12刻って、あっちの世界の12時を指すものなのか?これはシファーに頼んで教えてもらう事にするか。
「では、追跡開始です!」
ファルは元気よく言うとスンスンと鼻を動かして辺りを嗅ぎ回っている。
「こっちです」
「よし、行ってみるか」
ファルを先頭に最近できたであろう道を進んでゆく。
「人一人通れるくらいの道だな」
「やっぱり獲物を奪いやがった野郎がいるんじゃないです?」
「可能性としては有り得る、でも俺にはそんなふうには見えないな、助けたくて助けているんじゃないのか?」
実際自分もそうだったしな。そういやあいつまた罠に引っかかったりしてないよな………ほかの魔物に食われたりしてないよな?
「マスターかおいろわるいよ?」
「顔色が悪いのは生まれつきだよ〜」
「そうなんだ〜マスターはうまれたときからあんでっとー」
「そうだよ〜生まれた時からアンデットなわけなかろうが!」
まぁこれはこれでアスなりに気遣ってくれてのことなんだろうな。
「ん?ちょっぷもぐりぐりもとんでこない?もしかしてマスターみとめた?」
前言撤回、お望み通りチョップをお見舞してやろうではないか!
━━コツン、コツンコツンコツンコツンコツンコツン
「ちょっと、マスター、やめ、やめて、いたくなってきた、どんどんつよくするのやめて」
アスとそんなやり取りをしていると先頭のファルがくるりと振り返って━━
━━ペロッ
何故か手をひと舐めしてきた。本人は顔にしたかったのか少し背伸びしたが届かなくて諦めたようだ。
「ルアンさんに唾つけときました」
「ファル、その意味わかってるの?」
「ほかの人に取られないように唾を付けるんじゃないんですか?」
oh......
「それ、誰に聞いた」
「シファーさんです」
「ファル、実際に唾は付けなくていいんだよ……」
「あ、ぇ?は、はい」
シファーにも少しお仕置きが必要みたいだね?
ファルに変なこと吹き込んだんだからしょうがないよね♪
「はいはい、妹よ早く犯人の元へ連れて行ってくれ」
「はい!……って妹?!」
あたふたする妹を無視してメイド長もどきと情報屋(笑)にもし犯人が敵対した時について話し合うことにする。
「ケト、イガラシ。もしも犯人が敵対する様なら即座に抹殺してくれ。ケトはさっき見せた魔法を相手に放て。イガラシは俊敏さを生かして殺しにかかってくれ。俺が命令するまで行動に移すなよ?」
犯人がただのチキンランナー愛好家だったら殺す必要も無いしな。うん、もしあるなら入ってみようかな?昨日の一件で言葉が通じることがわかったからな、機会があれば買ってみてるか。
あっ駄目じゃんファルいるじゃん。




