最強生物と下等生物
異世界転移2日目
朝起きると辺りには濃い霧が発生していた。
そのせいで俺の体には複数の水の粒が付き、体がかなり冷えていた。
「うぅっさびぃ」
流石にこのままいると凍え死にそうと思ったので森の出口を探しひたすらに歩くことにした。
しかし、日がある程度上がってもなお俺は森の中をさまよっていた。
「あれ?ここさっきも来なかったか?」
俺は知らず知らずに独り言を初めていた。
はぁ、いつになったら村か街に着くのか…
先程の広場付近にはモンスター(スライム)が出ていたが何故かここら辺はやけに静かだ。
ここに来る途中に何かが走ったのであろう獣道やスライムを見つけたがこの辺りはモンスターどころか動物の気配すら感じられない所だった。
さっきの広場と同じような安全地帯なのだろうか?
そんな事を考えていると森が開け━━
━━前方に黒く大きな物体が現れた。
んだこれ、真っ黒な塊があるな……布みたいなものに光を反射しないマットブラック…………!?
いや、まさかこんな所にいるわけないよねぇ、まさかぁドラゴンじゃあないよね?
目の前の生物を認めたくない俺はただひたすらに否定し現実から逃げる。
あの異世界最強(自分の中では)の存在がこんな森にいるはず無いよね?
まだこちらには気付いていないみたいだなこのまま引き返して早くこの森からで━━
━━『オヌシ…この世界のものではないの?』
オウシ〇ト!?
「だ、誰だ?!」
不意に聞こえた声に目の前のドラゴンを忘れ声を荒らげて叫んでしまった。
『ほぉ下等生物がわたっ………わしに対し誰だとな?』
その言葉と同時に目の前のドラゴンが起き上がった。
その体は光すら飲み込むような黒い鱗に覆われており、体は羽を広げれば台風のような暴風を起こし、体格はは一般的な一軒家と比べてもおとりはしない、その口は俺なぞ一呑みできるほどの大きさを持ち、歯は一つ一つが鍛え抜かれた剣のように鋭く、見るのもを恐怖で飲み込む姿であった。
しかし、その強く鋭い翡翠色の目は俺の心を引き留める。
「もしかしてこの声の正体ってドラゴン……さん?」
『そうで………ゴホン、左様この下等生物がよくこのような口を聞けるわ』
「スミマセン!スミマセン!スミマセンでしたぁぁぁぁぁぁ!!」
今まで聞こえてきていた声が目の前にいるドラゴンのものだと分かった俺は瞬時に土下座をする。
『ふ…ふはははは!正体がわかってこうまで態度を変えて謝ってきたのはオヌシが初めてじゃ。最後にこのような人間に会えて良かったかもしれない、で……かのう』
「えっと?さっ…最後とは?」
『わしの腹を見ればわかるじゃろ 人間ごときにやられたわ』
そう言われ顔をガバッと上げドラゴンの腹を見ると肉が裂け骨が見えていたしかも、はらわたが見え隠れしており、今にも溢れ出さんとばかりになっている。
「そ……それで?俺はどうなるんだ?腹いせに喰うか?」
俺は不思議とその言葉を平然と述べた、もうこいつにあっていた時からこうなる事は心の奥底では覚悟していたのかもしれない。
しかし、覚悟していただけに帰ってきた返事には戸惑いを覚えた。
『食べる?いや、とんでもないです………ごっほん、オヌシなど食べる訳なかろう。しかし、本当にオヌシは面白いのう?どうせわしもオヌシも死にたくはない、ならばオヌシがわしを取り込んでくれ。もし適正があればわしはオヌシの中で生き続けることができる』
「それって俺の心の中に忘れないかぎり生き続けてるよ的な奴ですか?」
ドラゴンの言葉に俺は六割方本気でそう言う。
『違うわ!!オヌシに入り二つ目の意識として生きるのじゃ! まぁ良い、目を瞑っておれ』
「わ、わかりました」
ドラゴンの言った通りに目を瞑っていると何かが胸の中に入り熱くなるのを感じた。
そして、俺がその後目を開けるとドラゴンは消え去っていた。
本当に俺の中に入って行ったのか。