ラスボス
━━バタッ
背後で何かが倒れる音が聞こえ無意識の内に後ろを振り向く、するとそこには倒れているファルの姿があった。
「ファ━」
「ルアンちゃん?今は前を向いてないとダメだよ」
「だけど」
「とにかくあいつの攻撃をファルちゃんに当たらないように守りつつ倒すんだよ」
俺がファルの方を向いているとハデスが今までにない程真剣な表情で静かに言うと振り下ろされた拳を手で受け、左側に流すと同時に手の甲へ向け回し蹴りを入れる。
「わかった、ファルが心配だからさっさと倒すぞ」
「言われなくてもそのつもりだよ」
俺の声にハデスは口の端をニッと吊り上げると先程振り下ろされた腕を伝い邪竜神の顔まで一秒かからない程の速度でたどり着き、その瞬間邪竜神の顔が打ち上げられる。
回転をかけながら宙を舞う邪竜神の顔をハデスは両手でがっしりと掴むと下にある胴体に向けダンクシュートをするかのように叩き付けた。
正直さっきメフィストフェレスが言っていた五分五分ってのは俺とアイツが一対一で戦った時のものだったのだろう、現状この面子であんな奴に負ける要素など一つも無い。
「俺、要らなくね?」
現状を見てそんな結論に至った俺は急いで倒れ伏しているファルの元へと駆け付ける。
「大丈夫か?」
「…………」
ファルに声を掛けるもファルは生気を喪っており、温度のあるだけの人形の様になんの反応も示さないでいた。
「ハデス!!創造神様見てなかったの?!」
「あちゃぁ、これはまずい」
俺がファルに何度も呼びかけていると背後からメフィストフェレスとハデスの怒号が聞こえてくる。
「ルアンちゃん、ちょいと失礼するよ」
「おい待て!!」
一瞬のうちにハデスは俺の背後に着くとファルを振り払い俺を抱えファルから離れて行く。
「何してんだお前!!」
「流石にラスボスの所に主人公を置いておけないよ」
「ラスボス?ファルが?何言ってんだよ、ラスボスはあの神もどきだろ?」
「それがアテナちゃんの読みが外れてたっぽいんだよね、ファルちゃんこそがこの世界リセットの鍵。そして今外の世界でそのリセットボタンが押されちゃったっぽい」




