踏んだり蹴ったりアガナさん
「ぐっ、んだここ…………」
確か龍共の頭を吹き飛ばしていたら一匹が俺の前まで来ていて…………
アガナはそこまで思い出すとはっと立ち上がり辺りを見回す。
すると辺りはピンクの混じった赤いぶよぶよとした物で覆われているのに気がついた。
「ははっ、まさか……な」
その時アガナの頭には一つの結論が出ていた。
「はぁ、俺は食われたのか」
━━ベチャッ
アガナが堪らず顔に手を当てると粘着質な液体が気持ちの悪い音を立て一緒に顔に付いた。
「うぐぇっ、気持ち悪ぃ」
粘着質な液体が付いた顔を服の袖で拭くと剣を振りかざそうとし、そこで今度は両方の剣がない事に気が付いた。
「最悪だな」
思わず癖で頭を掻きむしりそうになったが既の所で手の状況を思い出し触るのを止め、手頃な剣が飲み込まれていないか奥へと進む事にした。
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「ちっ、これもダメか」
歩き出してからしばらくの時間が経ったがこの体内から脱出する手立てがまだ見つかっていない。
見つかったのは酸によって溶かされた剣とペッキリと折れた使えそうもない剣だけだった。
「クソ、これはこのままここで消化されるか他の奴らがこいつを殺して腹を割いて助け出してくれるか待つしかないか」
為す術がないアガナは下唇を噛みながらぶよぶよとしたものをあるき続ける。
すると急に辺り一面が激しく動き出しアガナの立っていた場所より少し後ろから一気に直角に曲がりアガナは耐える事も出来ず吹き飛ばされた。
「ぐっぅ」
幸いな事に吹き飛ばされたものの飛ばされた先がぶよぶよとしたものだったので怪我などは一切しなかったが、身体中に粘着質な液体が付着することとなった。
「……お…ぁあた……ない…ぁ」
あいつの声が聞こえる?
吹き飛ばされぶよぶよとした肉の壁にべったりとくっついている時外からルアンの声が聞こえてきたのだ。
あいつロキを倒してこっちに来たのか?
ルアンの声に気を取られていると何かに足の小指がぶつかり、戦闘を重ね強くなっていたアガナだが流石に痛く膝を付き足に手を当てる。
「うぐっぅ、今日は踏んだり蹴ったりじゃねぇか」
膝を付いた状態で自分に当たったものを見上げると━━
━━黄金に輝く美しい剣が刺さっていた。




