両手に花?
予定を決めた俺達は一旦宿屋に戻り一休みしてから翌朝この街を出ることになった。
「明日は早いですからね早く寝ますよ」
「ねようねよう」
「一つ質問いいか?」
「何ですか?」
「どうしたの?」
俺の言葉に横にいる二人が顔を近づけて俺の方を向く。
「何故私は一つのベッドで二人に挟まれて寝るのでしょうか」
「いいじゃないですかベッド足りないですし」
「もう一つあるんだからそっちにファルとアスで寝りゃあいいじゃねーか!!」
「駄目ですか…」
「だぁ!目を潤ませてこっちを見るなぁ!」
「だってぇ…」
「マスター………」
「はぁ、わかったよわかりましたよ一緒に寝ればいいのね」
その言葉を聞いた瞬間ファルが顔をパァっという効果音が似合いそうな程に明るくさせる。
仰向けに寝ると右にアス左にファルと両手に花状態である。
「ルアンさんこっち向いてくださいよ〜」
「近い近い!!こういうのに耐性ないから!!メンタル的にキツいから!!」
俺の気持ちなど他所にファルが腕に抱き付き、けして大きくはないが小さくもない胸を腕に密着させる。ファルさん積極的過ぎる、本当に身が持たないから控えて欲しいものだ。
「ずるーいじゃあこっちもー」
ファルに続きアスまでも腕に抱きついてくる、こっちは本当にないに等しい。
二人に抱きつかれ精神的に参った俺は考えることをやめた。
いつの間に寝てしまったのか俺はまたあの部屋にいた
『ハーレムだねぇクスクス』
「人の気持ちを知らないで良く言えるな」
『嬉しいんじゃないの〜?』
「嬉しいことは嬉しいが、勘弁して欲しいな」
ベルフェゴールがニヤニヤしながらこちらへ向かってくる。嫌な予感しかしないためベルフェゴールから距離を取ろうとした瞬間飛び込んで来た。
それを予測していた俺は某映画のように体を後ろに倒し避ける。
見事に避けられたベルフェゴールは後ろをゴロゴロと転がっていき、恨めしげな視線を送ってくる。
『酷いなぁ嬉しいって言ってたから抱きついてやろうと思ったのに』
「結構だ!!」
『いけずぅ』
「ふざけんな、夢の中でまでそんな状態になってたまるか」
『まぁいっかそろそろ朝だよ、おっはよーございまーす』
〜〜〜
「ルアンさん起きて下さいそろそろ出ますよー」
「マスターあさーおきないとマスターの分のあさごはんもらう」
「んうぅ……誰のせいで寝れないと思ってるんだよ全く……」
微睡みの中朝食をとり街の入口まで歩いて行く。
そこにはサツキとアガナが待っていた。
「遅いわよー」
「お前が早すぎるだけだ」
「あら、元悪人さん?いい加減な事言うじゃない」
「テメェ言ってくれんな」
「本当の事言っただけじゃない」
「はいはい仲睦まじい夫婦喧嘩は止めましょうねー」
「「誰がこんな奴と!!」」
「息ピッタリだね、さっさと行こうか」
ギャーギャーやかましい二人を置いてファルがドラゴンに変身する。すると、周りの光を塗り潰す様な闇と嵐のような暴風の中心にファル本来の姿が現れる。
「お…おい、その娘ドラゴンだったのか……」
「嘘でしょ……」
夫婦喧嘩をしていた二人はボソリと驚きの声をあげ、ネスとルスは目を見開いて驚いている。
「いちいち説明めんどくさいからさっさと行くよ」
全員をぱぱっと乗せファルに飛んでもらう。
「ファル大丈夫か?流石に無理があったか?」
「大丈夫です、私力持ちなので」
「ファルは頑張り屋だな偉いぞ」
「やったー♪」
ファルを褒めると嬉しそうに羽ばたく。
「ところでファルはどの方角に行くかわかってるの?」
「あ、だだだ大丈夫です、ケット・シー公国ですよね?」
「ケット・シー領な」
「わ、分かってますとも!!じ、ジョークです」
やれやれ先が思いやられる。




