勇気ある者
「「グヴアアァァァァアア!!」」
多くの兵達がただ呆然と空を見上げていると九つの龍の頭達が一斉に咆哮し、大地を地震の如く震わせる。
「う、うわあああ!!」
「あ、ぁぁ……」
魔法陣から出ている龍の頭達の咆哮に先程まで勇敢に戦っていた兵士達は恐怖によって発狂し失禁し失神する、その様子はまさに混沌と言う言葉が似合うだろう。
しかし、そんな中恐怖などせず平然と行動している一団がいた。
「てめぇら、準備はいいな?」
「おーけー」
「やってやるです」
「大丈夫、です」
「「行きましょう、団長!!」」
アガナの掛け声に全員が気合いの入った返事をすると各々の得物を握り締め、視線を空の龍へと向ける。
━━カツン
その瞬間、杖を打ち鳴らす音が鈴の音のように凛と響き光の足場が次々と出来上がり龍の元へと続いて行った。
「おい!!クソ雑魚兵共!!てめぇら人同士でくだらん争いするぐらいならこいつを倒して同盟結んで平和に家族と暮らせや!!」
アガナのどう言っていいかわからない言葉に兵士達は困惑しながらも光の階段を自らの足で駆け上がって行く。
「皆の者!先程までの戦争など関係ない!!今は協力してあの龍を殲滅しようぞ!!」
転生者の軍と対立していた軍の指揮官が声高々に叫ぶとそれに続く様に周りの兵士が敵味方関係なく怒号と共に階段を駆け上がっていく。
「お前達!!あの龍すら恐れない前の勇者達に続けぇ!!」
「ははは、勇者って柄じゃねぇんだがな」
「勇気のある者って書いて勇者だから間違いでは無いね」
「まぁうち達が勇者ならご主人様は大英雄っすけどね」
後ろから聞こえてくる声にアガナ達は笑いながら目の前の龍を見据える。
「ったく、こちとら新人だっていんのにこんな危険な役目背負わせんじゃねーよ」
アガナはそう言うと頭を掻きむしり剣を抜刀し左右に一本ずつ持つと一つの首がアガナに向かって噛み付く。
その数瞬後その首は切り飛ばされ地上へと落ちていった。
「その無駄に多い首掻っ切ってやるよ」
二本の剣を振り抜いた姿勢でルアンと似たような笑いを浮かべながらアガナはセリフを吐き捨てる。




