騙されていた転生者
ルアンが邪龍神と対峙すると同時刻、転生者組のいる戦場の空に一つの大きな魔法陣がありそこから下半身が出ていた。
「なんだありゃ、何か巨人みたいなのが出てきたと思えば魔法陣の中に吸い込まれて下半身だけ出してピタリと動かなくなったり」
ルスの治療が終わり一命を取りとめた事により少し余裕の戻ったアガナ一行は急に現れたそれに視線を釘付けにされていいた。
そんな中
「あ、あぁ……最悪、しかもいつもより早い」
アスだけはあれが何か分かっているようだった。
そして、そのアスの戦慄にアガナは何かを感じ取り即座にここにいる全員に武器を取るよう指示を出す。
「今回は誰が死んでしまうの?」
か細く頼りない声でアスはそう呟いた。
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少し時を遡る事魔王召喚時
おかしい、アテナ様からの連絡もなければこちらからの呼びかけにも応じない。
折角全身全霊をもって世界を浄化する存在を召喚したと言うのに。
「お前達、引け!!我々の目的は完遂された!!あの召喚されしものを見よ!!あれこそ世界を浄化する神である!!」
声を拡大する装置を使いそう叫ぶと我が軍の兵士達は雄叫びを上げ喜び始める。
その異様な様子にその軍と戦っている他の勢力の兵士達は困惑し武器を持つ手を止めてしまっている。
「ついに、ついに我々の行いが報われる時が来たのだ!!………………は?」
彼らがロキに騙され神ではなく魔王が復活した事を知らずに喜んでいると突如として魔王の頭上から魔法陣が現れる。
それが徐々に魔王の身体を飲み込んでいく。
その様子に転生者を含め転生者に付いていた軍は目に見えて狼狽えていた。
「な、何が起きているんだ!!」
転生者は現状を理解しきれず辺りを見回し焦っていると、天から一切れの紙が降ってきた。
やぁやぁ、アホで間抜けな転生者くん、君は騙されてたんだよ?私はアテナではなくロキだ、因みに君が異世界から入ってきた時に会ったのは本物のアテナだよ?でも二回目からはロキちゃんなんだなぁ?ここまで読めばもうわかるだろぅ?あっ、そうだ!!言っとくけど君が手伝ってくれた召喚の件だけどあれ魔王つってこの世界を消し去ってくれるやつだから、ははは !!残念だったね!!では終末を迎えて別の世界があるならまた会おう、馬鹿なガキンチョ君。
それを読んだ事によりやっと現状を理解出来た転生者は額に青筋を浮かべると、声をカクダイする装置を力の限り握り━━
「戦場にいるヤツら!!あの巨人は魔王だ!!これだけいえば分かるだろう!!これは提案だ!!ここにいる全ての兵士であの巨人を打ち倒すんだ!!」
頭に血が上った転生者の怒鳴り声に戦場の誰もが声のする方向と突如現れた巨人(既に下半身のみ)を見ていた。
「何を言っている!どうせ嘘なのだろう!!」
「黙れ雑魚が!!私はアテナ様にお告げをいただき行動していた!!しかしそいつはロキと名乗る別物だった!!貴様らも神話に関する書物の一つや二つ読んだことがあるなら分かるだろう!!」
転生者のその一言に戦場の殆どの兵士が頷いた。
「なら話は早い、あれは神話に出る魔王だ!!」
転生者がそう叫んだ瞬間魔法陣から出ていた下半身が形を変え九つの龍の頭へと変わっていった。
その様子に戦場は戦慄に包まれた。




