斬り傷
ゴーレム達を一時的に戦闘不能にし一息ついていたアガナ達の上空から何かが羽ばたく音が聞こえる。
アガナ達はその音に一瞬警戒するもそれと共に聞こえてくる子供の声に警戒を緩めゴーレムに注意しつつゆっくり降りてくるフィル達を見守る。
「この様子だとまだ術者は倒せてないみたいだな」
「アガナ!!ルスが!!」
アガナが独り言のように呟いているとフィルの上に乗っていたネスが目に見えて狼狽え泣いていた。
その様子にただ事ではないことを感じとったアガナはサツキや他の回復出来る傭兵メンバーを呼び出す。
「お前らの中で一番回復魔法が得意な奴は誰だ?」
「は、はい!」
アガナの質問に一人の少年が手をピシッと伸ばし挙手をする。
「よし、なら今すぐ回復を」
「駄目」
「なんでだ!」
一刻も早くルスを救いたいアガナは直ぐにルスを回復させようとするがそれをアスが止めた。
「今ルスは爆破のせいで異物が刺さったりしてる、だからそれを取り除いてから出ないと後が辛い」
いつもとは違い知的なアスに少し困惑しつつその内容に納得したアガナは起き上がりそうなゴーレムを細切れにする、その後痛みに耐えているルスの元へ近付き真剣な眼差しでアスを見る。
「どうすればいい、出来るだけ早く安全に助けたい」
「早く救うには彼女を痛め付けることになるけどそれでもやる?」
「あぁ、仕方ない。それで嫌われようと何だろうと俺は助ける」
アスの言葉にアガナは迷い無く即答する。
「それならいい、ルスの足を斬って」
「…………は!?」
「これが一番早い、そして異物が残ってしまう危険性も無い」
「他のほ」
「他の方法は遅いし異物が残る可能性もある、何よりも長時間痛みを与え続ける訳だからやられてる側的に斬られるより辛い」
アスの言葉にアガナは数秒沈黙し━━
━━覚悟を決めた。
「分かった、やってやろうじゃないか。斬ったら直ぐに回復をしろ」
アガナはそれだけ言うとアスから熱を帯びた剣を受け取り、ルスのすぐ横に着く。
「すまん、後でいくらでも俺を恨め」
アガナはルスにそう言うと振り上げていた剣をルスの痛々しい足に振り下ろした。
「あ、ぁぁ……」
もう既に痛みに蝕まれていたルスは今にも消え入りそうな声で痛みに悲鳴をあげる。
「早く回復しろ!」
「はい!!」
アガナは飛び散る血と肉に怯んでいた少年を一喝しルスの回復をさせるとルスの隣に座り込み頭に手を当てる。
「頑張れ、死んだら許さねぇぞ」
ルスの薄れゆく意識の中でアガナが小さく一言耳元で囁いた。




