バ火力アウル
「ルス、散らばってったヤツらは今どんな状況だ?」
迫り来る兵士を剣を振るう風圧や兵士の足をつかみ他の兵士達に投げつけるなどをし、転生者?の元へと一直線に向かいながらアガナが問掛ける。
「今イカズチの所はさっきまで戦ってた男と手を組んで出てきたデブを倒して歩いてて、ケトさんとフィルさんは乱入して来た男を半殺しにして放置してたよ」
ケトとフィルが男を半殺しにし放置していると聞いたアガナを含めその場の全員が苦笑いを浮かべる。
「ケトは優しいのか残酷なのか分からないのだ」
「半殺し状態で放置は……し、死んだも同然だと思います……」
「べつにどうでもいいんじゃない?」
アウルとメアがポツリとケト達の行動に関して口にするとそれにアスがばっさりと切り捨てるように一言吐き捨てた。
「お前…………」
「最近みんなマスターの影響で甘くなり過ぎ、こういう所ではそういう甘いヤツが必ず死ぬ。だからここでは甘さを捨てて」
アガナの困惑気味の声に知的モードに戻ったアスはピシャリと言い切ると指先程の石の塊を作りどんどんと兵士達の眉間目がけて射ち放っている。
「みんな、二人強いのくる」
「お、おう!!」
「先手必勝なのだ!!」
完全にスイッチが入っているアスが警告するとアガナは困惑しつつきちんと得物を構え、アウルは魔法の詠唱を始める。
「3.2.1……コンタクト!!」
「【悪夢の獄炎】!!」
アスの号令と敵位置を知らせるサインにより飛び出してきた一人の老人に近くにいるだけで溶かされそうな熱量の炎が直撃する。
「名前の通り悪夢みたいな炎だね」
「まぁくらった側は悪夢でしかないのだ、いやむしろこれだけの熱量ゆえ何も感じないで終われるかもしれないのだ」
「【埋葬の獄炎】それで良くない?」
「葬儀屋みたいで嫌なのだ」
アガナを始め周りにいる全ての人間がその膨大な熱量にうなされている中、術者であるアウルとゴーレムであるアスは呑気にお喋りをしていた。
「周りつらそうなのだ」
「確かに…………アウル、おしゃべりの時間じゃなくなったみたい」
「こんな中でも近付いてきてる奴がいるのだ」
「あ、アウル、急いでみんなを回復して」
「あぁ、これは人間には耐えられないの忘れてたのだ!!皮膚が焼けてきてしまっているのだ!!」
「あぁー、これは喋れないか……」
口を開けた瞬間喉を焼き切られることを悟っていたアガナは周りの全員に口を開けないように指示し待っていたのだ。
「とりあえずアウルは回復で、私は壁でも作っておく」
「分かったのだ」
二人で巻き込んでしまった全員を助けるとそのまま話し合いに入っていった。
「アス、現状説明をするのだ」
「ん、周りの兵士はアウルのやつで全滅。のはずなんだけど一人だけ生き残ってるのがいる」
「ゲホッゴホッ、生き残ってるってのはお前らみたいなバケモンがいるってことか?」
「もしくは炎系を完全に無効化する術を持ってるやつなのだ」
━━ピシッ
まだ見ぬ敵に思考を割いているとアスの作った土魔法のドームが悲鳴をあげ始めた。
「むっ、多分噂をしたら来た」
「それじゃあ反対側から抜けてそのバケモンに挨拶でもかますか!」




