再戦 オル・グラド③
「くはははっ!!この姿も久しいのぅ、あの忌々しい術をくらってからはドラゴンから帰られなかったからの」
白い煙の中から数秒前まで脳内に響いていた声が鼓膜を直接揺らし聞こえてくる。
「お、お前……」
徐々に煙が納まっていき、今のオル・グラドの輪郭がはっきりとしてくる。
それは先程のとてつもなく大きい、それでこそ山というのが相応しいほどの巨体のドラゴンだった。
しかし、今アガナの目に写っているのは決して山などとはいえぬとても矮小なシルエットであり、アガナは愚かサツキよりも小さい。
「煙が邪魔じゃの、ふっ!!」
オルグラドがケーキに立てられたロウソクの火を消すように軽く息を吹くと煙が一瞬で吹き飛び立っていられないほどの暴風が吹き荒れる。
「うっぐぁ!?」
「うわわわわ!!」
「飛ばされる?!」
「馬鹿、猫共!しっかり捕まっとけ!!」
剣を地面に突き立てたアガナは吹き飛ばされそうになっているネス達の手を掴み、吹き飛ばされないようしっかりと立ち五里霧中の中から現れた一人の老人を睨む。
「さて、この姿の我は……ちと強いぞ?」
「んなもん分かり切ってるわジジイが、さっさとかかってこいお前を倒さないとこの試練は終わらねぇんだからよ!!」
アガナの露骨な挑発にニヤニヤとオル・グラドが笑い、一瞬にしてその場から消える。
「上!!」
「おう!!」
━━ガギンッ
【第六感】でオル・グラドの場所を予測したサツキの声にアガナが手に持った剣を下段から頭上へ向かって振り抜くと大きな反動が返ってきた。
「ほう、そこの小娘、やるではないか」
アガナの一撃に弾かれクルクルと回りながら着地したオル・グラドはサツキの方を向き値踏みをするような眼差しそう言葉を漏らす。
「よそ見しやがって余裕だな!!」
それを好機と見たアガナはその背後に吹き飛ぶように間合いをつめ横に一閃する━━
━━しかし、それは腕だけをドラゴンの物にしたオル・グラドによって止められていた。
「たわけ、わっぱ。貴公にもあの青年のように我は敬意を評して居るのだ。そんな相手から我が意識を逸らすとでも思ったか?」
━━バギン
アガナの【切り裂きジャック】を受けた剣と言えども先程の光線とオル・グラドのスキル【破壊者】によって耐久力がなくなり無残にも粉々に砕け散った。
「これで丸腰になったの、では…………貴公の負けじゃ」
数瞬後音を置き去りにしたオル・グラドの回し蹴りでアガナの首が吹き飛び血の噴水と化した。




