さようなら住み慣れた街
ロキが侵入して来た翌日、俺達は暫く過ごしていた街を離れる事にした。
「全員いるか?誰かふらっと街に行ってないな?」
「もんだいない」
「1.2.3.4…………よし、全員いるな、それじゃあ全員中に入っとけよ?ファル最初はよろしくな」
「うん!」
全員が中へ入り扉を閉めたのを確認するとファルに合図を出す。
その合図に合わせてファルが羽ばたき初め竜車がどんどん浮かんでいく。
「よーし、瞬発だ!!」
「おー!!」
元気な声と共にファルが羽ばたく程にエメラルドグリーンの街がどんどんと離れて行く。
思えばこの街には色々とお世話になったな。
初めて元日本人にあったり詐欺師認定されたり、後はアガナ達と再会したりゴオルさんとも再会と…………終いには神様と知り合いになって試練まで出されたからな。
住み慣れてきた街を離れるのは惜しく思うがロキに対抗する為の足掛かりなり何なりを見つけないとあいつが本気でこちらを潰しにかかってきた時にどうする事も出来ないんじゃだめだ。
「ルアン、どうしたの?黙り込んじゃって」
「将来どうなるか心配してるんだよ」
「まだ進路決まってないの?」
「いや冒険者という職に就いとるわ!!」
「へ?なんの話しをしてるの?」
なんの話しって…………あっ、そっちの進路か!
「いや、何でもない。取り敢えずこのまま行ってみようか」
「そうだね」
苦笑いを浮かべつつファルへ返すと再度思考に戻る。
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「ねぇフィル、ひま」
「いやぁ、そんな事言われてもあそこでプルプルしてるケトさん以外面白いものないっすよ?」
「わわわ私を面白い認定しやがるんじゃないです!!うひゃぁ?!また揺れた!!」
「ねっ?面白いっすよね?」
「ななじゅってん」
アスはサムズアップをしながら少しだけ口角を上げる。
「み、皆さん。おやつ、ありますよ?」
「「おお!!」」
「アウルさんもどう、ですか?」
「むっ、我輩は後で貰うのだ、先に食べていていいぞ」
「分かりました、皆さん、アウルさんの分を残しておいてあげて下さい」
メアの言う事に元気翌日返事をした三人━内一名は匂いに釣られてやってきた嫉妬さん━がおやつを食べ始める。
こうして見ると随分と不思議なものなのだ、全員が全員違う種族でこうして一緒に仲良くおやつを食べるなど王都の聖女ですら考えられない事なのだ。
この状況は軽い奇跡のような物だと言える程の物、やはりあの男は特殊な何かを持っておるのだろうな。




