記憶喪失の男
久々のゴオルさんです
ルアン…………誰だ?俺の名前は何だ?
頭の中でルアンという名前と自分が何者なのかという疑問が渦を巻く。
「ここは、何処なんだ?」
「どうしたの?おじちゃん迷子?」
「迷子?あぁ、多分そうだ」
「かっこ悪ーい、ここはシーマーバって言う街だよ?」
「…………知らない名前だ」
目が覚めた場所から数ヶ月、ひたすらに歩き続け辿り着いたが朧気な記憶の中にこの街の事は一片たりとも存在していなかった。
「ここは目的の街ではないのか……」
「おじちゃんどうしたの?」
「いや、何でもない。この街に用はないんだ」
「でもお外は暗いよ、危ないよ」
子供に言われ空を見ると日が既に赤く燃え始めていた。
「……そうだな、何処か泊まれる所はないか?」
「それならこっちだよ!」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに子供は腕を引っ張り街中を駆けていく。
「おじちゃん、着いたよ!」
「お、おう……」
そう言われ視線を上げていくと人気のない裏路地に少々存在感のある建物だった。
「ここは宿屋…………でいいのか?」
「そうだよ、さぁ入ろっか!」
そして子供になされるがままその建物へと足を踏み入れると自分の中の何かが警報を鳴らした。
「おじちゃん、馬鹿だね!!やっちまいな!!」
顔を醜く吊り上げた子供が叫ぶと両脇天井から両手に短剣を持った男達が襲いかかって来た。
「こりゃいい獲物だ!!」
「死ねやあぁぁ!!」
その襲撃にいち早く気付いていた男は天井の男に自分の外套を投げつけ左の男に腹へ拳をお見舞し右の男の顔面へ蹴りを入れる。
「ぐおぶっぅ……」
「あぎゃっ?!」
「こいつで終いか」
「あ、あぁ?!ま、待ってくれごあうぇ?!」
襲って来た男達を全滅させると目の前で口角を吊り上げて不敵な笑みをこぼしていた子供が苦笑いへと変わっていく。
「俺は老若男女敵対するなら容赦はしないんでな、済まないが痛い目を見てもらうぞガキ」
「え、いやっ、ただ利用されてただけでっ……」
次の瞬間男は手刀で前から子供の肩を壊さない程度の威力で叩き意識を刈り取った。
「…………ちっ、今何か思い出せそうだったんだか……まぁいい、次の街へ行こう」
男はそう呟くとその街を足早に出て行った。
その後ボコボコにされた子供と男達は改心して真っ当な仕事に就いたと言う。




