蒼の瞳と切り裂きジャック
不快だ実に不快だ。商品が逃げてしまったのだから当然である。しかも逃げた商品は人間ではなく猫人であった。猫人の奴隷は普通の人間よりも価値が倍ほど違うのだ。
「糞が!!見張り共は何をしていた!!貴様は無能か!!屑か!!塵以下か!!」
部屋中に憤怒の声が響き渡る
その憤怒を受ける側は死が目の前にある顔をしていた
事実この男を憤らせて生きているものなど例外を除いて一人もいない
「お、お許しください!!もう一度チャンスをくださ━」
肉を断ち切る不快な音と共に血なまぐさい臭いが漂ってくる
その男は首を落としただけではあきたらぬのか四肢をもぎハラワタをブチ撒け細切れにしていく
「足らぬわ!!屑を塵にしたところで足りるわけないわ!!おい貴様!!」
「は、はい!!」
「貴様は勤勉だな、いい機会を与えてやろう」
「はひっ!!」
「貴様には処刑する人間を選ばせてやる」
「は、えぇと…」
「早く連れてこい!!」
「わ、わかりました!!」
少年が死からまぬがれようと走る
その群青の瞳は怯えと恐怖の色で黒く塗りつぶされている
「す、すみません」
「あ?」
「ボ、ボスがお呼びですので」
「わーったよ」
この男は昇進出来るとでも思ったのか上機嫌で処刑台に向かった
「可哀想な人だな……」
少年は囁くと処刑台へと進む男の後を歩きだす
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「よく見るとお前の目って蒼いよな」
「猫人の子供は目が蒼いんだよ」
「そうなのか」
「この世界の常識マスター馬鹿」
「うん?また頭グリグリして欲しいのかな?」
「その破壊兵器はやめて、そろそろ頭が割れちゃう」
子猫と同じ理由なのかな?
『ルアンさん。私の事忘れてませんよね?』
『忘れるわけないでしょ会話に入ってきてくれないから話してないだけだよ』
『なら良かったです。ところでこれからどうするんですか?』
『とりあえずギルドにいる奴に話を聞いてこれからの計画を立てるかな』
「マスターこれからどうするの?」
「またか……とりあえずギルドの奴らに話を聞く」
「ギルドってなに?」
「家族みたいなものかな?」
「家族か……いいな。」
「君にも家族がいるんだろ?」
「僕の家族は物心つく前にいなくなっちゃったんだよ」
「じゃあ尚更奴隷にされている家族を助けないとな」
「うん!!」
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血の海と共に血なまぐさい臭いが部屋へと広がる
その血の海のど真ん中に立つ男はジャック=グランパルスと、呼ばれている。
この行いからついた二つ名は切り裂きジャック。
━━しかし、本当の名前は誰も知らないという。
「ボ、ボス……わ、私は何をすればいいでしょうか?」
「とにかく視界から消えてくれでないといくら勤勉なお前でも切り殺す」
「はわ、はい!!」
男は切り裂いた死体を弄ぶように手に取り壁へと投げつける故にこの部屋は壁も床も血に染まっている
「フフフ、フハハハハ!!まだだまだ足りんぞ!!まだ紅に染めたりぬ!!」
この男はバーサーカーであった。ただ遊びたいが故に人を殺す、ただ紅を見たいために人を殺す、ただ殺すため生きる。そのような男なのだ




