本戦一回戦③
またもや睨み合いが始まり、先程と同じような状態が続く。
「見せるなら決勝戦とかで見せたかったけど仕方ないよね」
[おっと!!カエデ選手なにか秘策があるというのか?!]
司会さんが熱の篭った実況をしていると楓の持つ剣が突如と優しい光を放ち始めた。
「じんりき放出、聖剣グラム擬似解放!!」
楓が聖剣を掲げた瞬間聖剣グラムと呼ばれた剣から激しい光と風が放たれ、闘技場全体が聖剣グラムの力によって大きく揺れた。
「聖剣グラムだと?!」
タートールはその剣から放たれる力と威圧感に本物だと容易に分かった。
「さぁ、おじさん。こっからだよ?」
「聖剣使いに手合わせ願えるなぞここ数百年間生きておるが初めてぞ、やはり長生きはするもんよな」
そのセリフと共に口を大きく吊り上げたタートールはただ目前と黙って構えた。
それにシンクロするように楓もグラムを顔の横まで持って来てグラムの切っ先をタートールの喉元へ向けながら構える。
勝負は一瞬、この一撃で全て決まる。
楓は全魔力を、タートールは全身の余った力を全て刹那の中にある勝利の蜘蛛の糸を手繰り寄せる為に使い切ろうとしていた。
試合場には風の吹き付ける音と観客達の固唾を飲む音だけが流れる。
━━キンッ
そんな中観客の一人の落とした銀貨の音が観客席と試合場に響く。
そして、それを合図に見合っていた二人は一瞬で相手が先程たっていた場所まで通り過ぎ━━
━━「コフッ」
拳により内蔵の六割が潰れた楓は口から大量の血を吐き出し膝を着く。
[おっと!!カエデ選手血を吐いた!!これは大丈夫なのか?!救護班すぐ出れるよう用意しといて。そして、カエデ選手を打ち負か━━]
司会さんが言い切る前にタートールは地に倒れ付し「降参だ」そう、言った。
[お、おっっとおぉ?!タートール選手が降参ということは勝者はカエデ選手ーー!!]
「タートールおじさん、大丈夫ですか?」
「ふ、大丈夫だ、それにしてもこの甲羅にこんなにも大きな傷を作ったのはカエデ、主を含めて二人しかおらん。」
タートールは楓の作った腹部の肉にまで到達し血がドロドロと出てき始めた大きな傷を見せ笑いながら言った。
「そろそろ勝ち進むことすら出来なくなる歳か、カエデと言ったなこれからも精進して聖剣解放せんでもわしにこのくらいの傷を作れる程にはなる事だな」
「ふふふ、頑張りますね!!」
二人は救護班に回復されながら笑い合うと固い握手を交わす。
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うわぁ、あの二人あんな状態で笑ってるよ…………
モニターで見ていた俺は何かを話していることは口の動きで分かるが…………内容が分からず更にあんな腹に大きいサイズの切られた傷に多分内臓をやられたのか口から大量の血反吐吐いてるヤツらが笑ってると気味が悪い。
『なんか楽しそう』
うちの子も戦闘狂側の子か?!
『違う、こんにはわかる、あの楽しそうな念。狂ってる楽しいとは違う』
そうなのか、こんが言うならそうなんだろうな。
でも、あの二人とは手合わせしたくないな……ぜってぇ俺ボコされる。
『こんがついてる、防御力も聖剣のパワーも斬り捨てる』
うちの子が頼もしすぎるんだが。




