本戦一回戦②
これは、まずい。
楓は今置かれている状況に焦りを感じ始めていた。
物理攻撃は硬い甲羅に弾かれ、かと言って魔法を使ってもあの盾の前では全く持って効果を発揮しない。そんな状況下にあったら殆どの者が焦り、考えその鉄壁の前に成す術もなく倒される事だろう。
「どうしたのだ?早く次の手を打たねばわしから仕掛けさせてもらうぞ?」
「ふぅ…………良いよ」
「ではいかせてもらおう━━せい!!」
タートールは攻撃宣言をすると共に渾身の正拳突きを放つ。するとその正拳突きによって発生した砲弾の様な圧縮された空気が楓目掛けその猛威を振るう━━
━━はずだったのだがその空気弾を楓は剣を巧みに使い水流のよつにそれを包み込み一回転すると同時にタートールへと空気弾を打ち返す。
流石のタートールも自分が放った攻撃を返されるとは夢にも思わず腹部へと命中し、甲羅に無数のヒビが入ることになった。
「よし!」
「ぐっ、まさか、自分の技を自分で食らう日が来ようとは……」
「考えたかいがあったね、自分の攻撃がダメなら相手の攻撃当てちゃえーって」
それは果たして考えるに数えていいのだろうか、とタートールは苦笑いをしつつ楓に対しての評価を二段階上げた。
この娘、下手したら将来わしを任したあやつにさえ勝ってしまうのではないか?
タートールはそう考えると目の前に立つ少女に一抹の恐怖と背筋が凍るような感覚に襲われる。
この娘、本気で行かねば食われるの。
次の瞬間タートールは『重力魔法』を使い重力を自分から楓に向かって引き付けられるようにして使い、更に自身の力を合わせるにより瞬きの間に楓の目の前まで迫る。そして振り上げた拳を上から下へと向かう重力へ切り替え先程とは比べ物にならない速さの拳骨が楓に向かって振り下ろされる━━
━━しかし楓はそれを上へ高く飛び上がる事で避け、腕を振り下ろした状態のままでいるタートールの頭へと魔法で作った擬似的な足場を下から蹴り自由落下に運動エネルギーを加えた踵落としを一撃入れる。
流石のタートールもそれは耐え切ることが出来ず顔を地面に埋める結果となった。
[お、おっと!?カエデ選手タートール選手に強烈な一撃を決めたー!?これにはタートール選手もお手上げか!?]
「そんなわけないじゃろうて」
司会さんの実況にタートールは静かにそう答えると首をゴキリゴキリと鳴らしニタッと笑うと「老骨のわしと言えどまだまだ童になど負けんわ!!城壁のタートールいざ参る!!」
その宣言に楓も笑うと「私だって負けません!この聖剣にかけて!!」




