昼休憩
試合が終了しそれぞれが試合場から出ていきお昼休憩に入っている現在、俺は軍服君と共に昼食をとっていた。
「んで、何で一緒なんだ?」
「い、いやぁ、それは……こ、好敵手がどんな人間なのか知るためだ!」
軍服君もといヤマトはそう言うと腕を組み口をへの字にしながら胸を張り、チラチラとこちらを見て反応を伺っている。
うん、こいつ決して悪い奴では無いな、なんかこいつ嘘とか人を騙すのとか苦手そう。さっきの事件があったから簡単に受け入れる訳にはいかないがヤマトなら多少なりとも信用しても良さそうだ。
「ヤマトだよな、Dブロックの選手達が消えたことについて何か知ってることはあるか?」
「な、ないぞ?!」
「本当か?嘘だったらお前の事好敵手と認めないぞ?」
「いや、それは困る。話すから待って!」
余程宿敵が欲しいのか俺の発言に強く反応するヤマト。
「これはCブロックのスルマーネとラインハルトとの戦いが始まったぐらいの話なんだが、厠に行こうと歩いていた時にDブロックの待機室前を通ったんだ。すると中から笑い声と暴れ回る音、更に肉が引き裂かれる音や悲鳴まで聞こえてきたんだ。それを聞いて僕は……………………いや、何でもない」
って事はヤマトがトイレに向かって歩いている時には既に事件が起こっていたのか。それとヤマトが顔を赤くして股を抑えていることには誰も触れまい。
「つまりアレっすね、ヤマトさんはその悲鳴やらを聞いておもんぐぐぅう?!」
「フィルちゃん?せっかく俺やファルが触れずにスルーしてあげようとしてる中余計な事を言うんじゃありません」
「んんん!ぷはっ、は、はいっす」
フィルが軽く落ち込んでるのをスルーしヤマトとの会話を続ける。
「この話は置いておくとして、ヤマトは日本から来たのか?」
「ん、日本?何のことだい?」
日本を知らない?って事はヤマトは日本人じゃないのか?
「もしかして大日本帝国の事かい?」
「ん、あぁその事だ」
「ならそうだ、僕は大日本帝国から来たんだよ。もしかして君もかい?」
大日本帝国って事は戦争の頃だろ?うーん、なんて言ったらいいのやら。
「そうだけど、正確にはヤマトのいた時代より70年80年ぐらい後の日本から来たんだ」
「なるほど、未来からか!じゃあ戦争は、戦争はどうなったの?」
あー、ヤマトの視線が痛い。日本負けちゃったよって言いづらい…………。
「いや、えーと…………日本は負けたんだ」
「え?」
俺の一言でヤマトは目の光を失い、乾いた笑いを発する。
「は、ははは、嘘……だよね?」
「本当だ、日本は強かったが相手の国々はその上をいった」
「そんな、帝国が負けるなんて…………」
「………………」
クソ、嫌な空気になっちまったな……。
「ごめん、変な事を聞いて空気悪くしてしまって」
「大丈夫だ、ヤマトは悪くないさ」
「なぁ、戦争について詳しく教えてくれないか?」
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「ありがとう、帝国、いや日本が外国から認められているみたいで良かったよ」
俺の知っている事を全て話し終わった時ヤマトの顔は憑き物が取れたようにスッキリとしていた。
「まぁあれだ、負けから得られるものも大きかったんだろうな…………っそうだ、これからが本番なんだ。本戦頑張ろうな?」
「あ、ああ!」
なんと言っていいかわからなくなり少し強引に話を変え互いに勝ち上がれる事を祈って握手を交わす。
ヤマトと当たるまで負ける訳にはいかないかなー




