表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/330

黒い子猫

「アス、これから姉御の店に行くぞ」

「マスター」


アスがクイクイと裾を引っ張り指をさしている

俺はその方向に目を向けるとそこには防具屋があった


「マスター防具は大事」

「そうだな」


どこかのイー●ックみたいになりたくないからな。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「いらっしゃいませ」

「この金で買える一番いいのを頼む」


金貨五枚を物静かな店員に渡すとそう言い放った


「わかったよ」


数分後店員が戻ってきた。その手に持っていたのは鎧ではなく部分的に守ってくれる防具と外套を持ってきた


「金貨五枚ならこんくらいだね」

「じゃあこれを買うよ」

「確認はしないの?」

「素人が変に選ぶと色々と痛い目を見そうだからな」

「騙していたらどうする気なの?」

「そういう事言うのは騙す気どころか心配してくれているんだろ?なら安心だ」

「へ、変な人」

「よく言われるよ」


店員が持ってきてくれたのは部分的にしか守れないが動きやすく、そしてかなりの強度を兼ね揃えていた、外套に関しては気配を察知されにくい効果付きだ


「あの店員いい人だったな」

「マスター名前聞いておけば良かったんじゃないの?」

「やっちまったな。あんなにいい人この世界に大量にいる訳じゃなさそうだしな…」


店員の名前を聞かなかったことに少し後悔しながら姉御の店へと歩いていく


大通りを歩いているとみかんや林檎など地球にあった食べ物がチラホラと見られた

更にこの世界には米があるらしい。これは日本人としてはなんとも喜ばしいことだ


「あれはなんだ?」

「なんだい兄ちゃん奴隷に興味でもあんのかい?」

「奴隷だって?」

「あぁ、あの奴隷達は家族に売られたり、奴隷商人達がさらってきたりされた奴らさ」


この世界には人権はないのか?!


『この世界には人権なんて甘いものはありませんよ』


ほぅ上等だ人を人として扱わないで商品として扱ってんのか。


俺はこの時、密かにこの奴隷商人達をぶちのめし奴隷達を助け出すと心に決めた


「マスター、行こ?」

「お、おう……そうだな」


今は仕方なく姉御の店に行くことを優先した



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「姉御いるか?」


物静かな室内には俺の声がただ掻き消えていくだけだった。


「姉御なら今留守です」

「そうか、ならいい……ってうわぁ!!」

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。………俺と同類がこの世界にもいるとはな…………」


まさかこの世界にも空気人間がいるとは思いもしなかった。

さて、どうしたものか。

姉御がいないとなるとここにいる意味もこれからすることも無い


「さっきの大通りに戻るか」

「了解マスター」


先ほどのように露店の商品を見ながら歩いていると裏路地から何かが飛んできた


「ぐぼァ!!」

「わわわわ!!」


何が飛んできたのか確認するとそこには黒い猫……ではなく黒い猫人が自分に乗っていた


「ごごごごめんなさい急いで逃げないといけないので!!」


とっさに起き上がり逃げようとする黒い猫人を捕まえさっき買った外套を被せる


「え?何を」

「おい!!お前!!」


その声を聞いた瞬間黒い猫人が跳ね上がる


ふむ、こいつらが追手か


「黒猫人を見なかったか!?」

「あぁ、それならあっちに行きましたよ」

「わかった、ありがとよ」

「いえいえ」


嘘をついてるのにお礼を言われる筋合いは無いですよ馬鹿が


「行ったな」

「あわ、あの」

「マスターやっさしー……え?マスター?痛いやめて痛い」


アスには空気を読むスキルを覚えさせる必要があるようだな。


「どうしたんだ?」

「え?あ、うん助けてくれてありがとう!!」

「あいつらよりももっと酷いことしてやるぞ?」

「はっ、え?」

「嘘嘘、何もしないよ。ところでどうして追われていたの?」

「僕、いつもみたいに皆と村で遊んでいたら知らない人がいいものをくれるって言ってたからついて行ったの。そしたらいきなり知らない人にここに連れてこられたの」


なんで俺の周りには少し抜けた子しか来ないのだろうか……俺が抜けたやつだからなのか?類は友を呼ぶってか?畜生。


「君はどうしたいの?」

「僕、村に帰りたい」

「じゃあ姉御もいないしこの子を送り届けるか」

「さんせーい」

「村は何処にあるの?」

「わからない」

「村の名前は」

「わからない」

「君の名前は?」

「そんなのないよ…」


子猫は質問する度に涙目になっていく


おい!!この状況、犬のおまわりさんなら一緒に泣いてるところだぞ?!


「あ!一つやりたい事がある」

「何をしたいの?」


うーん、この人顔がピクピクしてるけど大丈夫なのかなぁ?

わかった!!痒いのを我慢してるんだ!!なら早くやりたい事を言って顔を掻かせてあげよう。


心に汚れを持たない子猫は相手がイライラしていることも知らずに無邪気に話を続ける


「奴隷にされている家族を助けたい」

「ファ?」

「どうしたの?顔がさっき以上に死んでるよ?」

「うるせぇ!!」

「マスター子供相手に怒ってるー」

「もうやだこの子達」


いきなり奴隷奪還作戦って。モブの俺にやらせんなゴルァァ!!


この男の叫びなど子猫に聞こえるはずもなかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ