予選Eブロック①
静まり返った試合場に両足を地にしっかりとつけ深呼吸をする。するとドクンドクンといつもより早く強い鼓動が聞こえてくる。
━━フゥッ
自分を落ち着かせるために一息吐きこんの鞘に手を置き、こんの鍔に親指を当てる。
[さぁ、今回はどんな激闘が見られるのでしょうか!!予選Eブロックスタートだぁぁぁ!!]
開戦のゴングが鳴り響き周りがいっせいに動き出す中俺はこんを抜刀せず納刀した状態で握りただ突っ立っていた。
わかる人にはわかるだろう、俺が何をしたいのか。
「何突っ立ってんだてめぇ?!」
その姿に隙だらけと見た男が剣を振り上げ切りかかってくるが
「シッ!」
息を一気に吹き出しこんを一気に抜刀し男を横一文字に切り裂く。………………とは言ったもののこんは優秀なので精神体にのみダメージを与え上手く男を気絶させる。
『こんと主の領域にあんな風に入ってくるのは馬鹿』
「はは、まぁ馬鹿って言うか無謀だよね」
『主、こんを後ろに突き出して』
「はいよ!」
こんの指示に従い降り抜いた姿勢から逆手に持ち自分の脇腹のそばを通し後ろにいる選手に突き立てる。
「ぐっ、後ろに目でもあるのかよ……」
残念だったな、俺は後ろではなくこんを通して全方向を警戒できるのだよ。
ここで体力をあまり使いたくないため極力動かない。
『右に一人左後ろに一人左に一人の順番で近づいて来てる』
こんに従い後ろに回していたこんを持ち方を変え右に振りかぶり切った相手を左後ろの選手に投げ左にいた選手に膝枕拳を繰り出す━━
━━しかし流石に露骨な攻撃だったので膝枕拳は回避され重力系の魔法か何かを使われそのまま宙に浮いた状態になる。
「ありゃ、やばそう」
空中に浮いたこの状態に冷や汗がダラダラと流れるのを感じる。
「アイツを潰せ!!今がチャンスだ!!」
「くっそがああああああああ!!」
その言葉に周りのヤツは一人でも人数を減らそうと俺の元へと殺到し、それを俺はなんとか全て斬り伏せていた。
『主、なんか楽しそう』
そうか?まぁ意外とこの戦い方ちょっと楽しくなってきたんだよな。
こんと会話をしながら風魔法の射出の反動で相手の方向へ向きそのまま切り伏せていく。
ちょっとやってみたい事が出来たな、よしやるか。
腕を突き出しそこから高威力の風魔法を使用しコマのように回りながら周りの選手をなぎ倒していく。
『主、これ凄い!』
こんがキラキラとした念を送ってくるが……
俺はもう三半規管が限界…………。
頭から風魔法を射出し地面に着陸するとそのままマーライオンへと変身しそこをシンガポールへ染め上げる。
[お、おっと…………ルアン選手、なんと25人抜きをするも吐いてしまった!!ちょっとあの人大丈夫?]
司会さんにまで心配されちゃったてへっ…………うっぷっ
状態異常を治す魔法で何とかなるかな…………
「『キュアー』……うぅ、治った」
キュアーで酔いを治すとすぐさま立ち上がりこんを構える。
「第二ラウンドと行きましょうか?」
その時観客席からは不気味なものを見ている視線が送られてきた気がした。




