冷やし中華始めました
シファーの案で海に行く事になった俺達は水着を確保する為に街の店を見て回っていた。
「それにしても、水着を売っている店少ないな…………」
「水着は特殊なうえに今は夏後半になりますからね」
「ルアンいがいだれもいないならべつにぜんらでもわっぷ?!」
「おまえは何を言っているんだ」
大問題発言を口にしたアスのデコをペチンといういい音を立てるように平手打ちする。
「やだ、だいたん」
「なーにがやだ、だいたんだ」
やれやれ、と肩を竦めアスを無視すると歩みを進めていく。
しばらく街を散策していると一つの店が目に止まった。
その店は看板に何故か冷やし中華始めましたと書かれていた。
あの店、絶対に冷やし中華始めるような店じゃねぇだろ…………。
その店は店頭に置いてある武器と防具からして飲食店では無いことは明白だった。
「あそこ入ってみるか」
どうしても冷やし中華始めましたの看板が気になるため俺はみんなを置いてその店に入る事にした。
「冷やし中華一つ!!」
「うぇあぁあ?!」
俺の唐突な冷やし中華コールに店に一人でいた定員が変な声を出し驚いていた。
「い、いらっしゃいま………せ?今日はなんの御用で?」
「看板に冷やし中華始めましたって書いてあったので」
「へ?何ですかそれ?」
どうやらこの店員さんは看板に書いてある意味を知らないみたいだな。
「店長さんってどこにいますか?」
「えっ、えっとー私……です」
あーなるほどね、ならあれは店員が━━
「私一人で経営してますので」
この店に日本人はいなかった。
まぁいい、どうせ見て回っているだけじゃ水着を売っている店なんて分からないしこの人に水着を売っている店を教えてもらうとするか。
「それは大変ですね……」
「はい、でも楽しいので続けられるんですよ」
「あ、そうだ。ここら辺で水着を売っている店を知りませんか?」
俺がそう聞くと店長さんはハッと口から漏らすと急いで店の奥へと走って行ってしまった。
あー、やっぱり店に入っておいてこんなこと聞くんじゃなかったな。そりゃあお客さんだと思ってた人が別のもの売ってるところを教えろなんて言ったらなぁ。
「これですかっ?!」
大急ぎで戻って来た店長の手にはしっかりと水着が握られていた。




