ゴオルの墓
ルアン その言葉だけが頭の中に残っている唯一の物だった。
ルアンとは一体何なのか、それすらも分からない中。その男はただひたすらに根拠の無い直感で体を動かしルアンを探す。
ボロボロの鎧と体、呻き声を上げながらズルズルと動く姿はまさにゾンビその物だった。
「ル…………アン、ど…こ…………だ」
必死に捻り出した声もこの荒野の前では無情に空気へ溶けていくだけだった。
しかし無情に消えた声は無駄にはならなかった。
男が声を出した次の瞬間に地面が盛り上がり、爆破した。その中からは有に2キロを超えた巨大な何かが現れた。
その巨大な何かは天高く飛び上がると水しぶきでは無く砂しぶきを巻き上げながらまた地中へと潜っていった。
その間男はその巨大な何かに乗っていたため吹き飛ばされた、だが今まで探しても見えなかった建造物を見つけることが出来た。それは屋根が全てエメラルドグリーンに染っている街だった。
それを見た時、男の中で何かがハマる音がした。
「戻ら……ねぇと……」
その男はエメラルドグリーンの街を見た事で断片的にだが記憶が戻ってきたのだ。
「ルアン……みんな…………」
男は一人の青年を思い浮かべその街の人々を思い浮かべ帰るべき場所へ帰るために歩き続ける。
〜〜〜
星達が瞬き、草木も眠った真夜中に一人の青年が墓地に立っていた。
「ゴオルさん、あれから何ヶ月立ったんですかね。この前オル・グラドに聞いたんですが俺達があそこまで追い込めたのはゴオルさん達の戦いで技を打ち尽くしたかららしいですよ。我がもっと若ければ滝のようにブレスを吐いて消し炭だわ、なんて言ってましたからね」
青年は誰かの墓へ向かい楽しそうに話す、しかし笑い声も相槌の言葉も帰っては来なかった。
「結果的にですけどあなたに救われた命、人の為に使っていきたいと思いますよ」
ルアンは遺体も何も入っていない名前の書かれた石の前で冥福を祈りその場を後にした。




