ネズミをきゅっとしてドカーン
しばらくの間物思いにふけているとドンという重々しい音と振動が伝わって来た。
「何事?!」
「マスター、おっきいネズミ……」
いや、待てもち付け……落ち着け。
状況を整理しよう、今アスは俺の後ろを指さしておっきいネズミと言った。そして俺の勘違いでなければ通常のミカドネズミの三倍の振動を起こしたネズミがいるはずだ。
壊れた電動の人形のような挙動で後ろを向くとそこには通常のミカドネズミの一回りどころか三つ四つ上のネズミが立っていた。
人とほぼ同じ大きさの歯にボウリング玉ほどある眼球、そしてその体はトラックと見間違えるほど大きなものだった。
「うわー、あんなでけぇのどっから来やがったんですかね」
「のんきなこと言ってる場合じゃないと思うよ、ルアン大丈夫?」
いやいやいや、大丈夫も何もこんな歯に噛まれたら致命傷だと思うんだけどぉ……
「マスター、そいつこのネズミたちのははおやだよ」
いや、今その情報いらんからァ!!
俺がアスにツッコミを入れるとママんネズミが飛びかかって来る。
「その巨体でこっち来んなあ?!」
その巨体のせいで見た目はそこまで怖くないネズミが恐ろしいものに見えてたまらない。
かといってネズミを倒すって言うのも気が引けるわけで……
どうするか、正当防衛だからね、ぶころがしちゃう?
でもこんな愛くるし…………くねぇな、成敗するか。
俺は見事な手のひら返しを決めると、腰に帯刀していた魂浄刀を抜き放ちすり抜けざまにネズミの腹部を切り裂く。
「Gyiiiii!!」
腹を切られた痛みに悶え母ネズミが叫ぶ。
しかし、魂浄刀では傷を作ることが出来ないため血が出てはいないが確実にダメージにはなっているはず。
「傷すら着いてねーですよ」
ストストッとナイフが突き刺さる音をたてながら母ネズミからナイフが生える。
しかし、母ネズミの体が大きくナイフがそこまで刺さっていない様子だ。
「Tyuiiiiii!!」
甲高く耳障りな声が鼓膜に響くと共に血走った目がこちらへ送られる。
「めっちゃ怒ってるよあのお母さん」
「んな事言ってる場合じゃねーですよ!!」
『大いなる者の手』
アスがそう唱えると地面から今までの岩の拳の一回り大きい手が現れ母ネズミを握り潰した。
「「あ……」」
「いえーいおわりー」
こうしてアスの手によりこのクエストはあっけなく終わりを迎えた。




