ハーデス
『やぁ、ルアンちゃん、ファフニールちゃん。君達浮世でもっと正義執行したくない?』
赤と紫色の魂を模様とした死神のような外套を纏った男が二つの邪悪な存在へ語りかける。
しかし、その返事はなく邪悪な存在はただその男に常人なら発狂し糞尿を垂らしながら死ぬような殺気を送る。
『おやまぁ、こりゃあ歓迎されてないねぇ?せぇっかく人が復活させてやるってんのにこぉんな態度とわね』
男はわざとらしく肩を竦めやれやれと呆れたように言うとまばたきなど亀の走行と言わんばかりの速度で邪悪達の前へ瞬間(的に)移動し誰が言ったわけでもなく勝手に自己紹介を始める。
『お二人さぁん、君達には拒否権は無いからね、何しろ君たち死んじゃってるんだからね。そのことを踏まえて聞いて欲しいんだよねぇ?さて、ボンジュールお二人さん。我が名はハーデス冥界へようこそ、そしてオウ ルヴォワール』
ハーデスがそう口にした瞬間に二つの影は溶け、冥界からは消え去っていた。
『アテナちゃん、アテナちゃん、今地上にお二人さんを連れて行ったけどほんとにこれでいいのかい?』
『ええ、これで問題ありませんよ、あの二人の力はたかが知れてます。』
『そんなこと言えるの神の中でもアテナちゃんを除いて数人しかいないと思うよぉ?』
アテナからの素っ気ない返事にハーデスは鼻で笑うと地上に降り立った……ではなく、這い上がった二人を監視する事にした。
〜〜〜
天空都市の事件から数ヶ月経った、まずアガナの傭兵団が設立されネスが傭兵団に入るためにパーティーを抜け、更にその傭兵団はここいらでは少し有名になってきていた。
他にはイガラシ、イカズチが里帰りするために俺たちのパーティーから抜けた事、アウルは何かやることがあると言ってどこかへ行ってしまった事などだ。
「ちょっと寂しい感じになったな」
「そうですか?」
「ごめん、前言撤回。みんなどいてくれ」
「「嫌」」
「デスヨネーー」
今俺は市長に貰った竜車(と勝手に呼んでいるだけだか)の中の寝室で一人寝ていたのだが朝起きるとやはりこの状態になっていた。
「マスター、ん」
おっと、まず最初にコンタクトしてきたのはアスだ迷わず真っ先に頬にキスを求めてくるあたり歪まないな。
「ルアン、ちょっと目瞑ってて」
今度はファルか、ちょっと恥ずかしそうにしてるところがまた良いところなんだよね。
「はいはいわか…………?!」
……てっきりファルの事だから恥ずかしいから頬にして来ると思ったがまさか普通にキスをしてくるとは思わなかった。
「ふへへ、驚いた?」
少し寝ぼけた顔に天使の笑みを浮かべるファルはもうそれはそれは尊くて心臓の弱い方ならすぐ救急搬送されるくらいのものだ。
「あー、ファルずるーい」
「まてアス落ち着けおい?!」
今日の朝は美少女二人からのキスで始まって気分が良い……のかな?




