反英雄と邪竜と空気人間
失っていた意識が徐々に戻り、先程シファーに叩かれた頭部がガンガンと痛む中目が覚めた。
目を開けてまず見た風景はファルのベッドの前ではなく真っ赤に燃え盛る街の姿だった。
「…………は?」
突然の事に呆気に取られているとそこかしこから悲鳴やら何かが壊れる音やらが響いてくる。
それを聞いて我に返った俺は逃げ遅れた人達を助けるために行動を開始する。
先ずは近くの人から助けて行くか、悲鳴は━━━あっちの方からか。
俺は悲鳴の聞こえてきた方向に向かって風の加護を付けた状態で跳躍するとこの惨状の元凶を見た、いや見てしまった。
遠目でもわかるほどの圧倒的な巨体、炎の光を浴びてもなお反射することの無い圧倒的な黒、そして、俺の好きなあの瞳が映った。
嘘だろ?ファル……なのか?
それらを見た俺は容易にその答えへと至る。
そしてあの時の邪悪な部分を思い出した。
あれは邪竜としてのファルなのか?それともこれが本当のファルなのか?
そんな事を考えているとファルの傍らに見覚えのある人物が立っているのが見えた。
その姿はあの夢で見た彼の姿そっくりだった。
「待ってろよファル!!そしてルアン!!」
〜〜〜
悪夢はまだ続く、体の制御は効かず破壊と殺戮を繰り返す。
小さくなった街を見下しながら逃げ遅れた人達を探し出し一人一人殺していく。
人を潰し、爪で切り裂き、四肢を噛み砕き、炎で炙り、数え切れないほどの人達を殺した。
嫌だ、嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
人と関わって来てしまったファルは次第に壊れて思考能力を捨て、何も考えずにただ身体の思うがままなされるがままに行動を起こす。
「ふふ、ファフニール、楽しいよ。これが正義なんだね、悪をこんなにも成敗して、僕は今最高の気分だよ!!」
ルアンはファルにそう言いながら罪の無い市民の首を飛ばし手足をちぎる。
その姿は正しく狂った戦士であった。
「まだまだ残ってる、全部ゼンブゼンブゼンブ!!セイギノタメニ!!コロス!!!!」




