邪竜は悪夢で何を見みる
う、うぅん……ここは何処?こんな所見たことない。
私の眼前には今まで見たことの無い街並みが映っていた。
その街は決して高くはないがゴブリン程度なら防げる程度の壁が周りにそびえ立っており、そこではワイワイとお祭り騒ぎをしていた。
うん?何で私ドラゴンの状態なんだろう、それに…………ルアン?
ふと、ファルは自分の姿と隣に立つ青年を見てそう思った。
しかし、その青年はファルの知っているルアンでは無いことに気づいた。
「ファフニール、次はこの街にいる悪を潰せばいいんだよね?」
その声色にファルはいとも容易く恐怖に駆られた、だがその恐怖の中身体は全く動じていなかった。
「そうだ、この街には悪人が蔓延っている。一々探して殺していては逃げられてしまうからな、この祭りで集まっている所を一斉に焼き尽くしてしまえ」
私、何を言ってるの?!
無意識の内にファルの口から恐ろしい言葉が発せられた。
「ああ、この世の悪は潰す。このルアンの名にかけて!!」
そこで一旦ファルの意識は途切れた。
〜〜〜
「ファル大丈夫か?!」
先程からファルが何かにうなされ始めた。
ファルは頭を押さえ違う、違う!!やめて!!と何かを否定するような事を口にする。
そして、俺の目にはファルでは無い何かが一瞬出てきたことを見逃さなかった。
それは、あの時の邪悪な笑顔と同じだった。
〜〜〜
次にファルが見たものは真っ赤に燃え上がった先程の街だった。
辺りを見回すと瓦礫に埋もれた親子、焼け焦げた体のようなものを抱いてなく女性、こちらへ恨みの視線を送る子供などそれはまるで悪夢の様だった。
「あぁ、ファフニール。やった、やったよ!!これで僕の理想の世界に近づいた!!悪のいない平和な世界に!!ふふふ、あははははははははは!!」
それを見たファルはその狂気に震えたが一つだけ理解できたことがあった。
それは正義という物の恐ろしさだ。
正義という物は聞こえも印象も誰が聞いても良いだろう、しかし、その正義とは人によって違う。
故に国、種族、宗教それぞれの違いで争いが怒るのだ。
そんな事を考えているとファルの足元で一人の子供がファルの足を泣きじゃくりながら「妹を!!お父さんを!!お母さんを返せ!!」と殴っていた。
それを見たファルは罪悪感にかられ何も出来ないでいた、だがまた身体が無意識に右の前足を振り上げその子供目掛けて振り下ろされた。
━━グバギャッ
肉が押し潰される音と骨が折れる音が混じり合い恐ろしく不快な音が耳に届き、人の血の匂いが鼻を突き抜ける。
前足を上げると先程まで人の形をしていた肉と骨の塊が地面に潰れて転がっていた。
その退けた前足には先程の子供の血も肉片とそれらを潰した時の感覚がこびり付いていた。
い、嫌だ!!!こんな事したくない、助けて……助けて……ルアン
〜〜〜
「ファル、ファル!起きろ!!」
俺はファルを揺さぶり必死に起こそうとする、しかしまだファルはうなされたまま目を開けない。
どうしよう、何か起こす方法は…………シファーなら何か知っているかもしれない!!
取り敢えず安静にできるような場所に横にしないと。
そうだ、市長に貰ったスクロールを使えば安静にさせられるだろう。
一先ずスクロールを使い建物を出すと、そこには馬車の様なものが出てきた。
…………まぁいい、しょうがない中で安静にさせるしかない。
俺はファルを抱きかかえると馬車の中に入っていった。




