雷[イカズチ]
風邪を切り、音を置き去りにし、まるで閃光のよな速さで入り組んだ建物内をイカズチは進む。
ターゲットは何処だ。
船の周りには来ているはずだ。
その時後ろから何かもの音がした。
「何奴」
しかし、イカズチが振り向くとそこには何も無かった。
〜〜〜
ふぅ、危ない危ない、もう少しで見つかるところだった。
アスは心の中で安堵しながら呟く。
私のかくれんぼスキルはA+です!!ってね。
…………でもこれマスターが言ってたけどどういう意味だろう?
アスは天井に張り付きイカズチが去るのを待ちながらそんな事を考えていた。
あーあ、早く終わらせてマスターにベタベタくっつきたい。
私もあっちが良かったなーまぁ帰ったらその分甘えれば良いし~マスターはなんだんだで許してくれるしマスターはいいマスターだよね。
━━ストッ
突然自分の真横に刃物が突き立てられる。
アスは危機を感じ飛び降りると先程までアスのいた所には無数の刃物が突き立てられた。
この投擲、見た事あるかも。
「避けたか、中々やるな」
「それはどうも」
「だがそれだけだ」
「ッ?!」
男は一瞬にしてアスの前に立ち鳩尾に向けて拳を振るう。
「ガハッ!?」
それを避けることの出来なかったアスはその一撃をもろに食らうことになり、口からは擬似的な血が吐き出された。
「ぐっ、うぅぅ」
殴られた勢いのまま後ろに飛び距離を取ろうと測るが閃光のように動くイカズチ相手には距離を取るなど意味の無いものだった。
アスが飛び退き着地した瞬間には既にイカズチは目の前で拳を振るっているのだ。
「っうぅぅう!!」
咄嗟に腕を出してガードをするが凄まじい速度の乗った拳はその腕に甚大なダメージを与える。
どうしよう、このままだと機能停止する。
考えないと、生きてマスターのところに変える方法を。
アスはイカズチの拳に耐えながら思考を巡らせる。
何か弱点はないのか、何か抜け道はないのか。
━━━━これだ。これなら抜け出せるかもしれない
希望の光が見えたアスの顔には自然と笑みが浮かんでいた。
「待ってて、マスター」




